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第0349話

「さっき車の中で……! うわあああ——!」陸川夫人は恐怖に襲われ、下を見ることさえできず、目をしっかり閉じていた。

ほんの少し下を見るだけで、すぐに目を閉じてしまい、口だけが震えながら動いていた。

「無理はしないって言ってたじゃないか。どうしてこんな……ああ!

「ちょ! 私、心臓が弱いのよ! こんなこと、やめてよ!」

陸川夫人は次第に態度を軟化させ、明らかに助けを求めていた。

綿は静かに陸川夫人を見つめ、彼女の一挙一動を観察していた。まるで目の前にいるのが、目覚めたときの自分を見ているかのようだった。

彼女は、自分が目を覚まして拘束され、宙に吊られていると知ったときの気持ちを想像できるのだろうか?

陸川夫人の命は大事だとでも思っているのか?だが、他人の命も同じく尊いものではないのか?

彼女が恐怖に怯えている時、陸川夫人は一度でも綿も同じように恐怖を感じたことがあると考えただろうか?

綿は陸川夫人に対して何の同情も感じず、自分の行いが間違っているとも思わなかった。

彼女は、陸川夫人のような冷酷な人間になるべきだ。

自分を苦しめるくらいなら、他人を苦しめるほうがまし!

「お願い、本当に怖いの!」陸川夫人は涙を浮かべながら必死に哀願した。

しかし、綿は何の反応も示さず、むしろゆっくりと彼女に歩み寄った。

陸川夫人は綿が近づくのを見て、涙で視界がぼやけ、どんどん涙が溢れてきた。「綿ちゃん……」

彼女は綿が心を動かされて自分を許してくれると思い、呼び名まで親しげに変えた。

だが綿が雅彦に視線を送った瞬間、彼女の期待は裏切られた。

雅彦が近づき、綿は陸川夫人の口をガムテープで素早く封じた。

陸川夫人はその瞬間、すべてが終わったと感じた。

綿は、自分が受けた苦痛をすべて返すつもりだったのだ。

綿は冷たい笑みを浮かべ、陸川夫人の恐怖に満ちた顔を上から見下ろした。

「陸川さん、私はあなたのように冷酷ではありません。あなたのように、人を死に追いやろうとはしない。ただ、私はやられたことを返しているだけです」

そう言いながら、綿は腕時計を軽く見た。そして静かに言った。「明日の朝10時になったら、私の部下が家まで送りますよ」

その言葉を聞いた瞬間、陸川夫人は絶望の底に沈んだ。

明日の朝10時?!

この恐ろしい場所で、10時間も吊る
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