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第0145話

みんな大人だったので、司礼は遠回しな話し方を避けた。

誰も理由もなく親切にすることはなく、すべてに目的があった。

彼は正直に、綿をとても気に入っていると告げた。

綿は少し驚き、硬直して言った。「まだ離婚していないのよ」

「知っているよ」

「韓井さん、愛のために不倫相手になるつもりなの?」綿は冗談交じりに言った。

雰囲気が少し和んだ。司礼は眉を上げて言った。「それも悪くないかもね」

綿は鼻で笑い、窓の外を見つめながら言った。「今は次の恋愛を始めるつもりはないわ」

司礼は即座に言った。「じゃあ、僕は番号札を持って待っているよ。君が次の恋愛を始める時まで」

その言葉に、綿の心が揺れた。

彼女は微笑んで頷き、それ以上は何も言わなかった。

夕食を終えた後、司礼は綿を家まで送った。

天河は盛晴と一緒にテレビを見ており、綿が帰ってくるとすぐに尋ねた。「司礼が送ってくれたのか?」

「ええ」綿は疲れた様子でソファに身を預けた。

天河は鼻で笑って言った。「今日、病院でおじいさんを見に行ったときに高杉輝明を見かけたよ」

綿は顔を支えた。第二病院は大きくも小さくもなく、入院部は同じ建物にあったので、会うのは普通だった。

「早く離婚しろ」天河はため息をついた。

綿は下を向き、「わかった」と答えた。

天河は話題を変えて言った。「あと一ヶ月で、横浜で毎年恒例のクルーズパーティが始まるよ」

「綿ちゃん、今年はお前が桜井家を代表してクルーズパーティに参加しろ!」天河は綿に命じた。

「嫌だ」綿はソファにうずくまった。

クルーズパーティとは言っても、ただの金持ちの集まりだった。お金持ちの娘たちが集まって、豪華な宴を楽しむだけだった。

パーティではいつも派手に遊び回り、振り返れば杯の中にはただの酒ではなく、何が入っているかわからないこともあった。

「嫌だと言ってもダメだ。君が行くんだ。話はこれで終わり!」天河は声を荒げた。

綿は言葉に詰まった。最近、父の感情がとても不安定だった。一言言っただけで怒鳴り始めるのだ。

「パパ~」綿は天河に抱きついて甘えた。

天河は冷たく突き放し、「甘えるな、無駄だ!」

「行って、新しい友達を作りなさい。色々なことを見聞きするのもいい経験だわ」盛晴も綿に参加するよう勧めた。

綿は唇を尖らせ、ため息をついた。「行くよ!」

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