第 0321 話

「ついてくるな」と輝明は美香に言い聞かせ、言い終わるとすぐに綿を連れて外へ出た。

美香は訳もわからずその場に立ち止まった。

彼女は、輝明が綿に危害を加えるはずがないと思った。きっと二人には話したいことがあるのだろう。

美香はそっと窓に寄りかかり外を覗くと、輝明が綿を玄関の柱に押し付けているのが見えた。

美香の目は輝き、思わず笑みがこぼれた。そして、ソファに戻り結果を静かに待つことにした。

綿は眉をひそめ、警戒心を持って輝明を見つめ、その目には敵意が浮かんでいた。

輝明の感情は揺れ動いていた。彼は頭を垂れ、片手を柱に置いて何か言おうとしていた。

しかし、綿と対峙した瞬間、言葉が喉につかえてしまい、何を言うべきか分からなくなった。

「綿、さっきの話をもう一度言うよ」輝明は唇をかみしめ、綿の目を真剣に見つめながら言った。「昨夜、俺は嬌のプロポーズを受けなかった」

綿の表情は冷たく、彼女はすでに知っていた。何度も繰り返す意味があるのだろうか？

「今から僕は嬌に会いに行くよ。聞こえたか？」と彼は綿に尋ねた。

「　聞こえた」綿は相変わらず無関心で、特に冷静で無情な様子だった。

「それだけ？」と彼は聞いた。

綿は両手を広げ、「じゃあ、何を言ってほしいの？」と答えた。

彼は今日、どうしてこんなに奇妙なんだ？

「君は——」と言いかけたが、綿は突然姿勢を正し、彼に近づいた。

彼女の香水の香りが輝明の鼻を刺激し、彼は無意識に喉を鳴らしてから目を上げた。

「止めてほしいの？」綿は彼の黒い瞳を見つめ、誘惑するように笑みを浮かべた。「以前のように、プライドもなくあなたを引き留めろと？」

輝明は詰まり、彼女を見つめるその目にはわずかな無力感が浮かんでいた。

「輝明、私は人間よ、血の通った人間。私の心は石でできていないわ」綿は真剣に彼と向き合った。

彼は一体何を根拠に、綿がずっと彼のそばで哀願し続けると思っていたのだろう？

彼は一体何を根拠に、彼女がずっと彼を愛し続けると思っていたのだろう？

「　私たちはもう終わったのよ」綿は彼にそう告げた。

これ以上、彼に高慢な態度で接してもらいたくはなかった。

彼女が彼を愛していないとき、この高慢な態度は彼女をさらに彼から遠ざけるだけだった。

輝明は右手を握りしめ、明らかに怒りを感じていた。

綿の無反応が彼を