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第6話

由佳の体は震えが止まらないまま、棺をじっと見つめていた。

夜が更けるまでに、棺の中の酸素は完全に無くなってしまった。

二つの棺が同時にかすかに音を立て始めた。それはまるで爪で木を引っ掻くような音だった。

ギシギシと音がする中、私は耳にイヤホンを差し、この音が眠りを妨げないようにしていた。

一方、由佳はその音が徐々に消えていくのをはっきりと聞いていた。

夜が明ける頃、私はそろそろ大丈夫だろうとイヤホンを外した。

由佳は無表情で、ぼんやりと私に言った。

「彼たちが私に助けを求めているのが聞こえた......」

ちょうどその時、親戚が二人来て手伝ってくれたので、私は由佳の背中を軽く叩きながら慰めるふりをして、親戚に説明した。

「多分、お通夜ってことで怖くなったんだろう。ほら、こんな変な事を言い出して......」

残りの二日間は、私一人で見張りを続けた。棺の周りには遺体の不快な臭いが漂っていた。

そして、あの日家に帰った由佳は高熱が続き、ぶつぶつと訳の分からないことを口走り始め、周りは「彼女に悪いものが憑いてしまったのでは」と言い出した。

節子に誰かに相談するよう勧めると、彼女だけが娘がどういう状態なのかを理解していた。

三日後、葬儀は無事に行われた。埋葬の日、由佳は節子に支えられ、現場に到着した。

二つの棺が土の中に埋められるのを、彼女は目を見開いて見届けていた。

彼女が涙に暮れている様子を見て、私は皆の前で冗談めかして言った。

「由佳、まるで自分の夫を亡くしたかのように悲しんでるじゃない。私よりも悲しんでるんだもん、なんだか私が恥ずかしいわ」

この言葉に皆が笑い、横にいた節子は険しい表情で由佳を引っ張ってその場を離れた。

身内の不幸の中こんなにも明るい態度を取る自分が噂されるかもしれないことは分かっていたが、構わなかった。彼らに涙を流す方が、自分に対して失礼だからだ。

剛と姑の墓地は、節子の家の隣にある土地に選ばれた。

お金をかけて専門家に見てもらい、私は何も異議はないと言わせた。

その家族に墓地を使わせてもらうお金も渡したので、これからの節子と由佳は、毎日畑に出て姑と剛の墓地を見ながら働くことになるだろう。

彼女たちがその土地を耕さなくならない限り。

姑と剛を片付けた次は節子と由佳母娘の番だ。

前世の私は彼女たちの計画
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