第5話

「釘は打たないで！」と、突然の叫び声に、周りの人々は驚きの表情を浮かべて彼女を見つめた。私もわざと驚いたふりで彼女に視線を向けた。

「どうしたの？何か問題でも？」

「いや......ただ、その......蓋を釘で留めたら、空気が通らなくなるんじゃないかって......」

思わず口元が緩みそうになるのを必死で抑え、何人かの親戚がいる中で彼女を見つめた。

私は賭けていた。由佳が彼の偽装死を守るために自分の職を失うリスクを取ることはないと。死亡診断書はすでに発行済みで、ここで騒ぎを起こせば彼女の立場は危うくなる。

「空気は通らないほうがいいよ。ここは病院とは違って遺体を冷やすこともできないし、数日もしたら腐敗が進むからね。葬儀には三日間の通夜が必要だから」

由佳はもうほとんど立っていられなくなり、倒れそうになっていた。彼女は私の顔をじっと見つめ、私が彼女たちの計略を見抜いているのではないかと疑い始めたようだった。

隣のおじさんも、うなずきながら賛同した。

「確かにな、蓋を打たないなんて道理に合わん」

おじさんが職人たちに指示を出すと、彼らはすぐに蓋を釘でしっかりと打ち付け始めた。

由佳の顔は青ざめ、ついには地面にへたりこんでしまい、おろおろした。

それを見た節子が異常に気づき、彼女を椅子に座らせた。

「葵、あなたも疲れているでしょう。ここは私が見守るから、早く休みに帰ったほうがいいわ」

私は首を横に振って答えた。

「今日は一日中忙しかったし、みなさんも休んで。私は三日間守り抜くつもりだから」

節子も穏やかではない様子だった。もしこのまま三日も棺の中に閉じ込めたままにしておけば、彼らは絶対死んでしまう。

彼女は焦りを隠しきれず、私を説得しようとした。「お通夜は大事だけど、あなたは体を大切にしないといけないわ。ここは私が代わりに守るから、帰って休んだほうがいい」

私がさらに首を振って守りを続けると言うと、由佳の様子が不安定になり始めた。「葵、あなたは私たちの言うことを聞かないの？母もあなたのためを思っているんだから。この蓋だって、剛とおばさんはあなたに親切にしてくれたんじゃないの」

「私のため？私が見守りたいと言っているのに、あなたの母がそれを邪魔するのが親切だと？みんなにも聞いてもらいたいわね」

「それに、夫が本当に親