第111話

伊吹嵐は驚愕した。相手のハイヒールが振り上げられてきたのだ。

「ああ！東田社長、言うことを聞いてください」

しかしながら、自分は今裸の上半身で、行動能力が著しく制限されている。

さらに、東田智子の身長も自分とそれほど変わらない、ほぼ半額頭差で、約178cmと見積もられる！

戦闘力は超強烈だ！

やはり、老虎のお尻を触るのはよくない。なおさら、東田智子のお尻を触った。

「小室泰の件、どういうことか言ってみろ」

と東田智子は激しい声で言った。

伊吹嵐はごまかし、「これは、彼と理論を話したら、彼は突然悟りを開いたという話を信じますか？」と答えた。

東田智子は眉を動かして言った。

「もしこれが以前なら絶対信じない！でも今、小室泰の手から無傷で逃れたから、明らかに衝突は起きていない」

東田智子の考えでは、小室泰が古武家族の若旦那様であれば、本当に伊吹嵐を死なせたいと思っていたら。

伊吹嵐はとっくに死んでいただろう。

そのため、唯一の合理的な説明は、伊吹嵐が本当に小室泰を説得したということだ。

それは突飛だが、最近突飛な出来事が少なかったか？

「今回は本当に幸運だった。何と小室泰が性格を変え、クラブで小室家の人を殺したことを追及せず、自ら金を返しに来て謝罪するとは」

東田智子は顎を上げ、冷たい表情で言った。

「でも、運がいつも良いわけではない！分かるか？

「法を無視する大物たちが性格を変えることを期待するのは、数億の大当たりの宝くじを当てるよりも難しいことだ」

伊吹嵐は笑って「はい、東田社長、ご教示ありがとうございます。ただ、風呂場では少し場違いですね」と答えた。

「頭が固いよ。これはお前に行儀良くして、これからトラブルを起こすなと警告するものだ。さもないと次はお前を会社から追い出す」

東田智子は白目を向けて、ひそかに中指を立て、言葉もなくハイヒールを履き直して去った。

「あと、風呂から出たらすぐに部屋から出て、私のバスタオルやボディソープ、シャンプーも全部捨ててくれ。私は潔癖症なので」

相手が去る背中を見つめ、伊吹嵐は心の中で感嘆した、この女性の性格は六月の天気のようだ、急に変わる。

明らかに一秒前までは服を脱ぎかけたのに、次の瞬間にはまた高冷たるボスに戻っている。

伊吹嵐はシャワーを浴びた後、自分の部屋に戻って瞑想に入った。