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第 0321 話

薄野荊州は電話を切って、瀬川秋辞を見返すこともなく車に乗り込んだ。

瀬川秋辞は一歩遅れて、男性は嫌そうに「なに、ドアを開けてほしいの?」と言った。

怒っているような口調だったが、怒りというより、むしろどこか悔しいものが感じられた。

瀬川秋辞は力強く自分の額をパシッと叩いた。「パシッ」という音が響いた瞬間、肌は忽ち赤くなってしまった。どれだけ力を入れたかが分かる。

やはり寒すぎて、彼女の感情を感じ取る能力まで凍らせてしまったのか、薄野荊州が悔しく思えるなんて、まるで世の中に幽霊がいると信じるよりも不気味だ。

彼女は車に乗り込み、運転席と助手席の間にあるコンソールに目をやると、つい痛んだ首を揉んだ
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