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由衣ちゃんしか愛せない
由衣ちゃんしか愛せない
著者: あさづき/朝月

第1話

夜中に起きて娘に粉ミルクを与えて寝かしつけたところ、突然、夫の携帯電話が鳴った。

メッセージの音で娘が起きてしまうのではないかと心配になり、ミュートにしようと電話を取ったが、思いがけず携帯電話に終了していないページが表示された。

フォーラムには「愛していない人と結婚するのはどんな気持ちですか?」という投稿があった。

夫の答えは以下の通り:「彼女とセックスするのは日課のようなもので、私は毎日離婚したいです」

コメントではやじる人もいた。

「お兄さん、すごい回答ですね。匿名でもありませんし、奥さんに見られるのは怖くないのですか?」

夫はこう答えた。「怖くありません。彼女は子供の世話をしているから、これを見る暇はないですよ」

その後、またコメントが「すごいね」と盛り上がっていた。

ベッドで寝ている彼を見て、私はちょっと疑問を感じた。

ネット上では妻に冷たい男は、実生活では本当に優しくて思いやりのある夫なのだろうか?

しかし、私はそれが彼であることを確信していた。

なぜなら、翔太のアイコンはいつも月明かりの下で凛とした少女の姿だからだ。

以前、冗談で彼に私とペアのアイコンに変えるように頼んだことがあるが、そのとき彼は珍しく怒った。

その後、翔太が私のところに説明に来て、これは自分がとても気に入っていた絵で、他に意味はないので、あまり考えないでほしいと言った。

しかし、アイコンを変えることについては彼は何も言わず、相変わらずそのアイコンを使って各種ソーシャルメディアで積極的に発言していた。

ピンポン。

再びメッセージが届いた。

クリックして見てみると、翔太の同級生のグループがあり、誰かが彼の回答を転送して、グループは盛り上がっていた。

「木村君はまだ由衣ちゃんのことを忘れていないの?」

「ハハ、木村君、君は運がいいね。由衣ちゃんが明日帰国するんだ。私たち数人の同級生が彼女を迎えに行くつもりだけど、君は来る?」

 …

由衣ちゃん?

両手で携帯を強く握りしめ、私はその名前をじっと見つめ、頭が爆発しそうになった。

娘に名前をつけるとき、夫はどうしても「由衣ちゃん」と呼びたいと言い、「由衣ちゃんしか愛せない人生だった」とみんなの前で何度も言った。

まさか、娘の名前の由来があの「由衣」だなんて…?

まるで鋭いナイフで私の心臓を少しずつつついているようだった。

私はとても苦しいが、泣き叫ぶ場所もなかった。

寝ている男を見て、私はようやく何事もなかったかのように携帯電話を戻すことにした。

結局、翔太は私が5年間愛してきた人であり、娘の父親である。彼に一度チャンスを与えて、しっかり説明してもらおうと思った。

複雑な気持ちでベッドに横たわり、窓の外の明るい月明かりを眺めていたが、温もりを感じることができなかった。

由衣という言葉はまるで冷たい牢獄のようで、私を少しずつ飲み込んでいく感じがした。

翌朝、目を覚ますと、翔太はすでに起きて会社に行っていた。テーブルには彼が用意してくれた朝食が置いてあった。

ちょうど良い温度で、冷たくも熱くもなかった。

私はほっと笑った。

やっぱり、翔太はそんな人じゃないってわかっていた。

昨夜のことは夢だったと自分を慰めていると、テーブルの上に置かれたプレゼント用の箱が目に留まった。

夫ったら、今日は特別な日でもないのに、どうしてこんなにロマンチックなの?

期待を胸に、その箱を開けた。

中には高価なダイヤモンドの指輪が入っており、一人の人への一生ものの贈り物というスローガンが書かれ、その横にカードが添えられていた。

私はさらに嬉しそうに微笑んだが、カードの内容をはっきりと読むと、その微笑みは一瞬にしてこわばった。

親愛なる由衣ちゃんへ。

由衣、また由衣!

私の心は徐々に沈んでいった。

娘はまだ生まれたばかりで、指輪をつけられるわけがない。しかも、私の指は太めだから、このサイズも私のものではない。

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