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第4話

誘拐されたとき、私は妹を守るため、常に彼女の前に立ちはだかった。けれども、彼女は私の死の知らせすら両親に伝えようとしなかったのだ。

「もちろん!それも私たちの子供だし、身代金で救い出したら藤原家に送り返すから、玲奈には迷惑かけないよ」

母が彼女を抱きしめてなだめるように言った。

この言葉を聞くと、悦子の顔に一瞬の動揺が浮かんだが、すぐに表情を隠した。

悦子は病院で検査を受け、折れた小指一本以外、特に大きな怪我はなかった。

母はほっとして、「よかった、悦子は無事だったんだ」と安心してつぶやいた。

私は羨ましげに母が悦子を抱き締まる光景を見ていた。母は最初こそ私に優しかったが、だんだんと無関心になっていった。

母はもう一人の娘がいたことをすっかり忘れたかのようだった。その娘はすでに死んでいて、死ぬ前にはひどく痛めつけられたというのに。

もし母が私の死を知ったとしても、やっと重荷が消えたと喜ぶかもしれない。

誘拐犯は私の死を隠し、さらなる金を得ようと画策していたが、警察からの電話でその計画は台無しにされた。

「こんにちは。以前に子供が誘拐されたと通報されましたが、現在の状況はいかがですか?」警察から電話がかかってきた。

母はすぐに否定した。「そんなことありません。うちの子が誘拐なんてされてないんですよ」

「川辺で女性の遺体が見つかりました。その誘拐事件に関係がないかを確認したくて……」

「何言ってるの?うちの子は元気に生きてるのよ、あんた、縁起でもないこと言わないで!」母は感情を爆発させ、怒鳴った。

警察は仕方なく電話を切った。

私は複雑な気持ちで、赤くなった母の顔を見つめていた。母は妹を見て言った。「今の警察、どうかしてるわ。遺体が見つかったって、うちの子と関係あるわけないでしょ。だって、悦子はここにいるんだもの」

「それに、玲奈はまだ犯人の元にいるはずよ。今日も金を要求する電話が来たばかりだわ」

母は自分の話に夢中で、悦子の顔に一瞬浮かんだ動揺には気づかなかった。

ふと、嫌な予感が胸をよぎった。警察が言っていたのは、もしかして私の遺体ではないかと。

父は急いでお金を用意して犯人に渡したものの、待てど暮らせど私は家に戻らなかった。

そのうち、両親は少しずつ不安になってきた。

「どういうこと?玲奈、まだ帰ってこないの?」と母は不安
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