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第79話

紗希は頷いた。「分かったわ。約束する」

離婚手続きを済ませるだけで、大したことはない。

どうせ離婚協議書にはもうサインをしている。

詩織はスタジオを出た後、携帯を取り出して北兄さんに電話をかけたが、電源が切れていた。

どうしたんだろう?

彼女は昨晩も北兄さんに電話したけど出なかったし、メッセージも返信しなかった。今彼の携帯の電源まで切っていた。

詩織はすぐに自分のアシスタントに電話した。「北兄さんの最近のスケジュールを調べ、また海外の赤十字社でボランティアしているの?」

彼女は北兄さんを説得して早く戻って手術をしてもらわなければならない。そうしないと、紗希は渡辺おばあさんの健康を理由に、拓海の側ににいるかもしれない。

——

一方、紗希は一人で席に座り、さっきの詩織の言葉を思い出してぼんやりしていた。

拓海にぶりっ子の本性の姿を見ることができるように、彼女は本当に今それを録音するべきだった。

残念ながらチャンスを逃した。今から彼女が何を言っても、詩織はきっと認めないだろう。

紗希は頭を抱え、詩織が確かに渡辺おばあさんへの感情をを掴んでいた。彼女はおばあさんを病気の苦しみから解放したい。

でも拓海は彼女に仲の良い夫婦を演じ続けてほしがっている。もし彼女は離婚を切り出したら、あの男はどんな誤解をするか分からない。

詩織のぶりっ子、本当に難しい問題を出してきた。

紗希は一日中考えた末、拓海にメッセージを送った。「来週の月曜日、時間ある?」

今日は金曜日だから、月曜日に区役所に行こう。

紗希はしばらく待ったが、返事はなく、携帯をそばに置いて、仕事の図面作成に集中しようとした。

しばらくすると、携帯電話が震えた。彼女はすぐに手に取ったが、北兄さんからのメッセージだった。「紗希、私は出張で来た。夜一緒に食事しよう」

紗希は拓海からの返事だと思っていた。

彼女は会話ボックスをもう一度見たが、やはり返事はなかった。

彼女は思い切って早めに仕事を切り上げ、約束の場所に向かった。

途中で、直樹も撮影で来ることになり、3人で同じレストランで会うことになった。

紗希はレストランに入ったとたん、後ろから名前を呼ばれた。「紗希さん?」

彼女は振り返って詩織を見て、その後ろには拓海も入ってきた。明らかに二人は一緒に来たようだった。

やっぱり、縁なん
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