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第487話

この言葉を聞くと、永名も雅彦もすぐに口論をやめ、急いで駆けつけた。

扉の前に到着すると、部屋の中から物が壊れた音が時折聞こえ、その音に胸がざわついた。

永名は翔吾に一度しか会ったことがないが、すでにかなり気に入っており、この状況を見て急いでドアを叩き、優しく声をかけた。

「翔吾、ドアを開けてくれ。何か言いたいことがあれば、おじいちゃんに話してごらん」

しかし、翔吾は永名の言葉に耳を貸さなかった。部屋の中からさらに大きな物音が響き、続いて子供の怒りに満ちた叫び声が聞こえた。

「あんたなんかと話すことなんかない!ママと僕を引き離した悪者だ!見たくもない!」

永名はその言葉に眉をひそめ、小さな子供がここまで根に持つとは思っていなかった。

このままでは、親子の絆を築くのは難しいかもしれない。

何か言おうとしたが、雅彦に制止された。

翔吾の声は長い間泣き続けてかすれていた。雅彦はそれを聞いて胸を痛め、静かにドアをノックして呼びかけた。

「翔吾、僕だよ。ドアを開けてくれ、話したいことがあるんだ。少しでいいから話を聞いてくれないか?」

部屋の中は一瞬静かになり、雅彦は自分の言葉が届いたのだと思ったが、その直後、小さなうめき声が聞こえた。何かにぶつかったか、倒れたのかもしれなかった。

雅彦は心配でたまらなくなり、これ以上翔吾を放っておけないと判断し、思い切ってドアを蹴破った。

扉が開いた瞬間、翔吾が床に倒れ込んでいたのが見えた。白い腕には床に散らばった花瓶の破片が刺さり、血が流れていた。

翔吾の肌はもともと白かったため、怪我の様子が余計に目立ち、痛々しかった。

永名はそれを見てすぐに心配し、

「早く薬箱を持ってきて、傷の手当てをしろ!」

と叫んだ。

「お前たちなんかに世話になりたくない!」

翔吾は彼らの助けを受け入れず、ふらつきながらも再び立ち上がろうとした。

雅彦はそんな翔吾の様子にひどく胸を痛め、これ以上放っておくわけにはいかないと考え、一歩前に踏み出し、散らばった破片を気にせず翔吾を抱き上げた。

しかし、翔吾は大人しく抱かれることなく、必死に抵抗して暴れた。雅彦は翔吾の腕から血が流れ続けていたのを見て、心が痛んで、仕方なく空いていた片手で彼の腕をしっかりと押さえた。

「やめろ、そんなに暴れたら傷がひどくなる。もしママがこの怪我を知っ
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