第173話

日向家の人々は皆、あの日のビデオを見ていた。桃は皆の前で恥をさらされたのだから、雅彦がもう彼女を必要としないと自然に思っていた。

しかし、雅彦はそれでも桃を連れ去った。

明は雅彦の顔を見ると、歩美母娘の挑発のせいでこの男に三度鞭打たれた痛ましい記憶が蘇った。

その痛みは一生忘れられないものだった。

彼は歌を睨みつけた。「どういうことだ。雅彦が桃を捨てたと言ったじゃないか。今の様子を見れば、そんなことはなさそうだ！」

歌は悔しそうに言った。「お父さん、それはどういう意味？桃の母親を連れて行って隠すように言ったのはお父さんでしょう。彼女を家族のために使うって」

歌は、明が状況が不利になると彼女に責任を押し付ける態度に不満だった。

明はその言葉を聞くと怒りが込み上げ、手を伸ばして歌を叩こうとしたが、一方で考え込んでいた歩美が急いで彼を止めた。「明、何をそんなに感情的になっているの？それに、歌、どうしてお父さんにそんな言い方をするの？私は何を教えた？」

歩美が割って入ると、明はようやく手を下ろした。

歩美はすぐに慰めるように言った。「これは歌のせいじゃないわ。あんなスキャンダルがあった後で、雅彦が桃とまだ関係を持っているなんて誰が予想できた？でも、考えてみて、菊池家の家風を考えれば、彼女がもう雅彦の妻として戻れるはずがない。唯一の可能性は、雅彦がまだ彼女と遊び足りないだけ。情婦として扱われているに違いないわ。そうでなければ、あの短気な雅彦が私たちを呼び出して怒鳴りつけないはずよ」

歩美の言葉に一理あると感じた明は、表情が少し和らいだ。

歩美はさらに続けた。「桃が今、雅彦の情婦なら、それは私たちにとって有利だよ。彼女の立場は公にはできないし、菊池家で何か問題を起こす力もない。彼女の母親は私たちの手の中にいるのだから、雅彦にプロジェクトの再開を頼むように彼女を説得するのは難しくない」

「その通りだ」歩美の言葉に明は納得し、心の中のしこりが解けた。

歩美は彼を二階に連れて行きながら、歌に冷静になるように目配せし、余計なことを言って明を怒らせないように促した。

しかし、歌の心は別のところにあった。監視カメラの映像で、雅彦がまるでヒーローのように家の使用人を倒して桃を連れ去る姿を見て、彼女は嫉妬でスクリーンを壊したい気持ちだった。

今回こそは自分が見返す