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第146話

  佐和はすぐに桃を慰めた。「桃ちゃん、怖がらないで。この部屋を見て、以前住んでいたのと同じだよ。ほら、あれがお気に入りのテディベア、あれは私たちが一緒に選んだ中古の家具だ。覚えてる?」

 佐和の声はとても優しく、桃は彼の言葉を聞きながら周囲を見渡した。

 懐かしい気持ちがよみがえって来て、彼女の緊張も少し解けた。

 佐和はほっと一息つき、引き続き桃の気持ちを落ち着かせた。しばらくすると、老人が頷き、それでいいと言った後、銀製のペンダントを取り出し、桃の目の前で優しく揺らした。

 「今、あなたは一本の長い道を歩いている。その道をゆっくり歩いていると、一つのドアを見つける。そのドアを開ける……」

 心理医師の言葉に導かれると、桃の前に昨日の光景が現れた。

 彼女は自分が車に乗せられ、人ごみの中の広場へと連れて行かれたのを見た。そしてすぐに、麗子が現れ、彼女の言葉が人々の怒りを煽った。

 彼女はみんなの目には恥を知らない女となり、皆が彼女を唾棄し、罵った。まるで彼女がこの世界に存在してはならないゴミのようだ。

 「ああ!」

 桃は頭を強く抱え込んだ。「そんなはずがない」と自分自身に言い聞かせる。彼女はどうして事態がこのようになったのか、その理由がわからなかった。彼女は決してそのような下劣な考えを抱いたことがなかった。

 しかし、彼女が何を言っても、何をしても、誰も彼女を信じなかった。

 佐和は桃の苦しむ姿を見て、急いで駆け寄り、彼女を抱きしめ、自分の体温で少しでも温もりを与えた。

 それでも、桃はそれを感じることができず、必死にもがいた。

 心理医師は汗を滴らせながら、引き続き導いた。「でも、誰かが来た。誰かがあなたを救いに来た。怖がらないで、その人があなたをここから連れ出してくれる」

 桃は叫びやもがきを止め、その声の導きに従うと、本当に前に道が開け、大きく逞しい人影が光に逆らって歩いてきた。

 桃は一時的に彼の顔をはっきりと見ることができなかったが、その人の姿が現れたことで、彼女の不安定だった心が突然落ち着いた。

 彼女は呆然とその人が近づくのを見て、そして、彼が手を伸ばし、「桃ちゃん、大丈夫だよ、僕と一緒に帰ろう、僕があなたを家に連れて帰るから……」と言った。

 家に……

 その言葉を聞いて、桃は突然感じた。この男性から立ち昇る
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