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第517話

「どうしてあなたたち、同じ部屋で寝たの?」瞳はすぐに核心を突いた。

「その時、大雨が降っていたのよ。彼を追い出すわけにはいかなかったし」とわこは答えた。

「へえ、じゃあ同じベッドで寝たの?どうして彼にベッドを使わせたの?彼は何も犠牲を払ってないのに、大雨で思い通りにさせちゃったの?」

とわこは一瞬戸惑った。「私たち、何もしてないわよ……あ、いや、彼も何もしてないわけじゃない……」

「ほら、やっぱり何かされたんでしょう?」

話が妙な方向に進んでいると感じたとわこは、すぐに遮った。「瞳、あなたの思っているようなことじゃないわ!彼が私に……私に足を……洗ってくれたの……」

言いたくなかったが、瞳の鋭い視線に負けてしまった。

とわこが言い終わると、瞳は得意げに笑い出した。

「さすがは奏ね!あの手でお金を稼ぐだけじゃなく、女性の足も洗えるなんて!こんな屈辱を耐え忍ぶ姿勢が、彼の成功の秘訣なのかしら?成功者は何をしても成功するんだなぁ!もしも誰かが千里の道を追いかけて来て私の足を洗ってくれたら、私も降参するしかないわ!」

その瞬間、周りは笑いの渦に包まれた。

とわこの顔は真っ赤になり、両手で水の入ったカップを握りしめ、心の中は奏のことでいっぱいだった。

ついうっかりこのことを口にしてしまったけど、彼は怒るかもしれない。

その後、この話が他人に彼をからかうネタになったら、どうしよう……

前庭では、真が外に出て風に当たっていたが、結菜が一緒に出てきた。

「真お兄ちゃん」とわこが彼をこう呼んでいたので、結菜もそう呼んだ。

「真でいいよ」真は微笑んだ。

「真、あなたもお医者さんなの?」結菜は尊敬の眼差しで彼を見つめた。

「そうだよ!でも、僕は大した腕じゃない、ただの普通の医者さ」真は少し顔を赤らめた。

結菜は彼に微笑みかけた。「もし真が私を治してくれたらよかったのに。私ははるか先生が好きじゃないし、はるか先生が紹介してくれるお医者さんも嫌いだもん」

真の笑顔は引きつった。「もし僕に君を治す力があれば、もちろん助けてあげるよ」

「真、私はあなたを信じてるわ」結菜は感動して彼の大きな手を握りしめた。「とわこと仲がいいあなたは、きっといい人だわ」

真は本能的に手を離そうとし
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