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第519話

彼女が出て行った後、瞳は気まずそうに言った。「私、何か余計なことを言っちゃったのかな?」

一郎は重々しく言った。「奏がはるかに400億円を渡したことは知ってるだろう。奏がとわこにも400億円を渡すことはできるけど、意味が違うんだ」

「はるかなんて、もうすっかり忘れてたわ」

「今回彼らが喧嘩してるのも、はるかが原因だよ」一郎は言った。「元彼女の影響力を軽く見ないほうがいい」

「それもそうね!しかもとわこは今妊娠中だから、感情が不安定になりやすい……でも、彼女が奏に料理を作らせるなんて、彼女もまた彼を受け入れようとしているのかしら?」瞳は彼女の心を掴みきれない様子だった。

「二人がまた一緒になるかどうかは、二人だけが知ってることだ」一郎は気だるそうに言った。「僕たちは友達として、静かに見守るだけでいいんだ」

……

二階。

とわこは寝室のドアを押し開け、窓から差し込む日差しに迎えられ、静かにベッドの上に視線を落とした。

奏はすでに眠っていた。

階下の騒がしさにも関わらず、まったく気にならなかったようで、本当に疲れていたのだろう。

彼女は部屋に入り、そっとドアを閉めた。

彼を家に招いて、子どもの日を補うディナーを作らせたのは、彼が大金を投じて自分に会いに来たからでも、足を洗ってくれたからでもない。ただ、彼が何の躊躇もなく危険な場所に飛び込んできたからだ。

命を懸けてまで尽くしてくれる男に対して、どうして無視することができるだろうか?

彼女の気持ちは複雑で、揺れていた。

彼女と奏の関係には、あまりにも多くの要素が絡んでいた。

彼女はベッドの脇に腰を下ろしたが、眠る気にはなれなかった。

スマホを開き、無意識に数回タップしてしまい、ふと写真が表示された。

写真には男女二人、男性は上半身裸で、女性は水着を着て親密そうに抱き合っている写真だった。

その二人は、彼女が知っている人物だった!

男は弥!

女は……はるか!

二人がこんなに親密な写真を撮るなんて?

とわこは目を疑い、写真を拡大して確認しようとした……その瞬間、写真は突然消え、システムから「写真が削除されました」というメッセージが表示された。

彼女は戻るボタンを押してみると、さっき無意識に弥のInstagramに入っていたことに気づいた。

その親密な写真は、弥がInstagram
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