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第507話

突然、遠くから光が差し込んできた。

光を見つけた瞬間、彼女の緊張した心が一気に解けた。

「とわこ!」彼はさらに大きな声で彼女の名前を叫んだ。

彼の馴染みのある声を聞いて、とわこは鼻がつまって目頭が熱くなった。

「とわこ、動くな!対人障害システムがあるから!」奏は彼女のいる方からの光を確認し、厳しく警告した。

とわこの目から涙がさっと流れ落ちた。

もしここに本当に対人障害システムがあるなら、大野が彼にこんな危険を冒させるだろうか?

今日彼は頭を置いてきたのか?

それに、彼女だって入ることができなかったはずだ。

彼女の記憶の中で、彼は並外れて賢い男だったのに、今はどうしてこんなに愚かになったのか?

「対人障害システムがない!」彼女は泣きながら叫んだ。「早く戻ってきて!」

彼女の言葉を聞くと、彼はすぐに彼女の方へ走り出した。

涙で視界がぼやけたまま、遠くの光が自分に向かって急速に近づいてくるのを感じた。

彼の熱い息遣いが感じられるようだった。

彼女は手を挙げ、素早く涙を拭った。

やがて、彼は彼女の前にやって来た。

「とわこ、みんなは君が迷子になったって言っていたけど、君は迷子じゃないよね?」彼は息を切らしながら、彼女の両腕を強く握った。

「私は三歳の子供じゃないんだから、どうして迷子になるわけ?」彼女は彼の手を振り払って、怒った目で彼を見た。「いつからそんなに騙されやすくなったの?」

「君に謝りに来たんだ」彼は騙されても構わなかった。ただ、彼女に会えればそれでよかった。「とわこ、君は俺から逃げるためにここに来たんじゃないのか?」

彼の熱い視線は彼女の小さな顔をじっと見つめていた。

薄暗い光の中でも、彼女の顔に浮かんだ悲しみと涙をはっきりと見て取ることができた。

「それを知っているなら、どうして来たの?」彼女は目を伏せ、彼と視線を合わせることができなかった。

彼の顔を見た瞬間、自分の全ての理性が消えてしまうのが怖かったからだ。

「マイクが君が一人で来たって言ったから、心配で」彼の大きな手は彼女の腕をゆっくりと滑り降り、やがて彼女の小さな手をしっかりと握りしめた。「まずここから出よう」

そう言い終えると、彼は彼女を横抱きにした。

彼女は
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