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第326話

翌朝。

奏は病院の集中治療室に現れた。

昨晩、千代が煮込んだスープを飲んだ結菜は、すぐに意識がぼんやりし、体が無力になり、眠りに落ちた。

一晩休んで目が覚めた後も、彼女はずっと目を開けたままで、目は虚ろだった。

その状態が続いたが、奏が来ると変わった。

「結菜、今日はどう?頭まだ痛い?」彼の低く、馴染みのある声が結菜の顔に表情をもたらした。

「お兄ちゃん、とわこはどうして私を見に来ないの?」結菜は少し悲しそうに言った。

彼の眉がわずかにしかめられ、目の中の優しさが消えた。「彼女はあなたに会いに来ないよ。結菜、彼女と彼女の子どものことを考えないで」

結菜はさらに悲しそうに見えた。「でも、あなたたちは私を信じてくれない……とわこが私に話しかけてきて、たくさん質問したのに……」

彼は妹の青白い顔を見て、心が痛んだ。「俺は君を信じていないわけではない。もしかしたら、彼女は本当に君に話しかけたのかもしれない。ただ、それが君の夢の中での出来事だっただけかもしれない」

「そうなの?」結菜は彼を見つめ、少しぼんやりとしていた。

本当に夢の中の出来事だったのだろうか?

「俺はよく子供のころの夢を見たりするけれど、目が覚めれば現実に戻るんだ。夢の中の映像や声はとてもリアルだけど、それは夢であって現実ではないんだよ」彼は辛抱強く説明した。

結菜はまつげをわずかに下げ、その説明を受け入れようとしている様子だった。

午前10時、奏は病院を出て会社に向かった。

結菜は千代とボディーガードが見守っているので、彼は安心していた。

今日の彼女の気分は少し沈んでいるが、昨日のような激しい感情に比べれば、今のほうが病気の回復には適している。

千代によると、はるかが処方した安定薬のスープを飲んでいるせいか、もしかしたら薬の効果かもしれない?

はるか……

昨晩、とわこが彼にはるかと仲良く過ごすようにと言ったことで、彼は一晩中眠れなかった。

しかし、冷静になってみると、彼の考え方は変わっていた。

常盤グループの社長室。

奏はオフィスに入ると、子遠が後ろについてきた。

「社長、三千院グループが問題を起こしました。ニュースをご覧になりましたか?」

奏は冷淡な表情で答えた。「関心がない」

子遠は、以前からマイクにより社長ととわこが激しく言い争ったこと
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