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第351話

皇后は、まったく困り果てていた。恵子皇太妃が榎井親王の齋藤家との縁組を知り、寧姫を齋藤家に嫁がせようとしているのだ。

皇太后も暗黙の了解を与えており、孝行な天皇も太后の意向を尊重するだろう。

しかし、齋藤家の男子たちは、齋藤六郎を除いて、みな学問に励み、朝廷での地位を確立しようと必死だった。六郎だけは詩書を好まず、犬や猫と戯れて人生を楽しんでいた。

特に五男は皇后の実家筋。幼い頃から寝食を惜しんで勉強し、科挙第一位を目指していた。姫君と結婚すれば、ただの閑散な姫の夫君になってしまう。これまでの努力が水の泡になってしまうではないか。

皇后は寧姫の縁談に口出しできないと分かっていたので、上原さくらに助けを求めるしかなかった。

さくらが協力してくれないだろうと思っていたが、最後の一言で本心を明かした。

当然、皇后はさくらに一層の感謝の念を抱いた。

「もし寧姫と私の六弟が結ばれたら、必ず王妃に大きな贈り物をお送りします。そして、私から王妃に一つ恩義を負うことになりますわ」

さくらは微笑んだだけで、何も言わなかった。

贈り物も皇后の恩義も必要ないが、敵を作るより友を作る方が良いという原則に従い、さくらは何をすべきか分かっていた。

もちろん、齋藤六郎のことも、寧姫の気持ちも理解していた。ただ、反対しているのは姑の恵子皇太妃だった。

さくらが二人の縁を後押ししたいのは、寧姫を妹のように思っているからだ。

話が終わると、宮殿を後にした。

影森玄武は先に親王家へ戻り、さくらは恵子皇太妃と一緒に馬車で大長公主邸へ向かった。恵子皇太妃はさくらと二人きりでいるのが気まずく感じ、高松ばあやを呼んで馬車に同乗させた。

なぜか、さくらの顔を見ると説教されそうな気がして、恵子皇太妃は不快だった。特に年下から説教されるのが大嫌いだった。

しかし、道中は平穏だった。

大長公主邸にほぼ到着したところで、さくらがようやく口を開いた。「母上、大長公主が伊勢の真珠や三千両をお返しにならないかもしれないとは、お考えになりませんでしたか?」

恵子皇太妃はさくらを横目で睨みつけた。「何を考えているの?どうして大長公主様をそんな風に疑うの?賭けに負けたのだから、当然支払うわ。あの方は面子を何より大切にする人よ。私を騙すはずがないわ」

天真爛漫な考えだ。どんな良家が姑に嫁の嫁入り道具
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