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第250話

しかし、どうして本当であり得るだろうか?

きっと失望に終わるに違いない。

皆は心を痛めながらも、上原さくらに同情した。もし彼女が希望に満ちて出かけたのなら、現地で必ず失望するだろう。

いや、違う。吉田内侍は彼らがまもなく京に到着すると言った。まさか、彼女は本当にその小さな乞食を潤くんだと信じて連れ帰ろうとしているのだろうか?

それはいったいどういうことだ?たった今、彼女が慎重だと言ったばかりなのに、こんな無謀なことをするなんて。

さくらが京を離れたのは十五夜の頃で、戻ってきたのは9月7日だった。

秋晴れの爽やかな良い天気だった。

城門の兵士たちは、馬車を操る人物が北冥親王だと知って大いに驚いた。親王様が御者を務めるとは、馬車の中の人物は一体誰なのだろう?

親王の馬車が京に入るのは当然検査なしで即座に通されるため、馬車はまっすぐ太政大臣家へと向かった。

太政大臣家に到着すると、玄武はさくらと潤に言った。「私はここで失礼する。まずは潤くんと落ち着いてください。二日後にまた来よう」

きっと明日は沖田家に行くだろうから、明日は来ないつもりだった。

さくらが感謝の言葉を口にしかけたが、彼が聞き飽きたと言っていたのを思い出し、「親王様、お疲れ様でした。どうぞお休みください」と言った。

「ああ、行くよ」玄武は潤を見て、笑いながら手を振った。「明日、美味しいものを送らせよう」

潤は緊張しながらも嬉しそうに、彼に向かって笑顔を見せた。

玄武はその笑顔を見て、本当に大変だったんだなと思った。

彼が去った後、さくらは潤の手を引いて太政大臣家の門をくぐった。

梅田ばあやと黄瀬ばあやは潤を一目見るなり、涙があふれ出した。福田も涙を拭いながら走り寄り、声を詰まらせて言った。「帰ってきたんですね。帰ってきてくれて本当によかったです」

福田は潤を見て、拭ったばかりの涙がまた流れ落ちた。この子はなんてひどく痩せてしまったのだろう。ああ、どれほどの苦労を味わったのだろうか。

彼は振り返って、厨房に食事と茶、お湯の準備を指示した。

梅田ばあやと黄瀬ばあやは以前は上原邸内で仕えていたが、後に上原さくらが将軍家に嫁いだ時に一緒について行った。そのため、潤は彼女たち二人とお珠のことをよく覚えていた。

「潤お坊ちゃま」

みんなの呼びかける声は、喉を詰まらせたものだった。
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