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第192話

さくらは歯を食いしばり、梅田ばあやに言った。「今夜から、女性の手仕事を教えて。完璧なハンカチを刺繍したいの」

若い頃に掘った穴は、いつかは埋めなければならない。

自分が完璧でないことは受け入れられても、不良品を大勢の人に配ったことは受け入れられなかった。

ただ、疑問が残った。母が自分のハンカチを隠したのは理解できる。でも、なぜ北冥親王は隠していたのだろう?しかも、身につけていたとは。

何かが頭をよぎったが、つかめなかった。考えた末、親王は醜いものが好きなのかもしれないと思った。

なんとも変わった趣味だ。

二人のばあやが蔵の整理をしている間、福田がさくらに陸羽先生が帳簿を整理したので確認してほしいと伝えた。

「わかったわ。書斎に置いて。今夜見るから」とさくらは答えた。

福田は頷いた。「田舎の店舗の方も整理されています。陸羽先生が総額と内訳を纏めました。ちらっと見ましたが、よくできています。世平様が雇った人は本当に信頼できますね」

会計係は上原世平の紹介だった。上原一族はビジネスでそこそこの成功を収めており、彼の紹介する人物は間違いないはずだった。

お珠は明子たちと共に、お嬢様の衣装を選びに行った。明日の出席者は多いはずだから、お嬢様は必ず群を抜いて美しくなければならない。

ちょうどその時、親王家の道枝執事がやって来て、お嬢様が明日の大長公主の宴会に出席するかどうか尋ねた。さくらは直接出て行って答えた。「親王家にお伝えして。明日は参加するわ」

道枝執事は手を合わせて言った。「かしこまりました」

さくらは影森玄武がなぜこのことを尋ねたのか理解し、言った。「親王様にお伝えして。もし行きたくないなら行かなくても大丈夫よ。私一人で対処できるから」

道枝執事は笑いながら言った。「お嬢様、誤解なさっています。親王様が私をわざわざ遣わしたのは、もしお嬢様がお出かけになるなら、どんな贈り物をお持ちになるかをお尋ねするためです」

さくらはこの太っちょで優しそうな執事を見て言った。「一枚の絵よ。私の大師兄が描いた絵」

「おや!」道枝執事の声には複雑な感情が込められていた。「もったいない、もったいない…まあ、いいでしょう…」

深水青葉先生の絵は一枚手に入れるのも難しいのに、それを風雅を装うだけの大長公主に贈るなんて。なんて無駄な、なんてもったいない話だろう。
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