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月神守は転生の輪舞を三度舞う
月神守は転生の輪舞を三度舞う
Penulis: 菅原みやび

1.深夜のカーデートはスリリング

Penulis: 菅原みやび
last update Terakhir Diperbarui: 2025-02-15 08:47:25

 闇夜に走るは1台の漆黒のスポーツカー。

 そう、俺【月神 守】は大学の親友達と車で深夜の山中をドライブの真っ最中だったりする。

「わあ、夜風がひんやりとして、とても気持ちいいですね……」

 俺の隣の助手席に座っているのは【風見 スイ】さん。

 彼女は夜風に静かになびくセミロングの銀色の髪に手をそっと当て、サファイアのように澄んだ青い瞳でこちらを見つめ、ほがらかに笑っていた。

 よく見ると童顔を感じさせる二重の大きな瞳に細長い眉、彼女の小柄な体形と血色の良いもち肌、そしてふっくらとした丸みを帯びた顔と胸に合ったは小動物的な癒しを感じさせる。

 「今日着ている紺色のギャザーワンピがまた彼女にはとっても似合っている」と俺は「ですよねー!」と力強く返事しながら、ウンウンと頷き自身で納得していた。

 あ、でさ! 実はこのドライブには目的があるんだよね!

 結論から言わせて頂くと、「スイさんへの告白をかねて」のドライブデート中なんだ!

 まー情けない話だけど、親友にお膳立てしてもらったんだよね。

(いやーホント持つべきものは良い友……) 

「風も気持ちいいけど、俺ともっと気持ちいいことしませんか? なーんつって!」

「……」

 後部座席から訳の分からない言葉が聞こえ、その後静かなエンジン音が車内に響き渡るのが分る。

(こ、こいつっ! まじかっ⁈) 

 色々と、台無しである……。

 だからか、俺の額にじんわりと変な汗が滲み出てくるのが分る。

 あ……、で今、後部座席から訳の分からない人語を発したのが、色々お膳立てしてくれた悪友の【星流 学】。

 学は御覧の通り剛速球な会話を得意とし、パーソナルスペースというものは一切なく、両手を広げ土足で人の心の領域に踏み込んでくる。

 体の線は細いが馬鹿力を持っており、かつ武道の実力は相当なもので空手の師範代持ちだったりする。

(他人を思いやる優しい一面もあるんだけどね……) 

 性格に反して顔と雰囲気は整った中性的であり、髪は薄い茶髪のオールバック、目は二重のアーモンド形の薄い茶色の瞳が特徴的だ。

 こいつの今日の服装は紺色のジーパンに灰色の長袖ポロシャツで、脳みそと同じで非常にシンプルだ。

「ごめんねスイ、こいつアホだから今の会話は軽いジョークと思って、軽く聞き流して?」

「ひ、ひどっ⁈」

 その馬鹿とは対照的に、今度は後部座席から透き通った心地よい声色が聞こえてくる。

 あ、今ナイスフォローをしてくれたのは【音風 雫】さんでスイさんの親友なんだよね。

 雫さんは有名な音風財閥の一人娘で、いわゆるお嬢様だ。

 なんでも有名な音大に通えるほどの音感を持っており、ピアノが得意らしい。

 お嬢様であることを鼻にかけず人柄が良くて、今の会話で分かる通り頭の回転も速く機転が利くめっちゃいい人さ。

 俺はそんな事を考えながら、ミラー越しにその雫さんの姿をチラ見する。

(すらっとした細身の長身に、同じくすらっとしたまな板のように整った胸……か。天は流石に完璧は与えなかった模様)

 その時、俺の座っている座席の背中に軽い衝撃が走り、運転座席が少し揺れた。

「い、イタッ!」

 俺はたまらず反射的に呻き声を上げてしまう。

「あら、ごめんなさい⁈ ちょっと足が滑っちゃって。前座席を蹴っちゃった(笑)」

「おいおい、ホントか? 今、意図的に雫が蹴ったように俺は見えたぞ?」

(……な、何やら後部座席組が騒がしいが……? てか、雫さん今のワザとじゃないよね?) 

 ワザとだったら、俺色々とめっちゃ怖いっす……。

 あ、そうそう! 紹介の続きなんだけど、雫様はきりっとした細長い眉毛に二重の大きな茶色の瞳、整った端正な可愛らしい小顔に茶髪のロングヘアーをしている。

 んで、現在あの学と付き合っていたりするし、その関係か今日の服装は学とペアルックだったりする。

 雫さんが学に惚れたのは、感性が高く学の魂の強さと優しさを感じ取れたからじゃないのかなと俺は思っている。

「ふふっ、二人とも仲がいいんですね? 羨ましい……」

 スイさんは後部座席を覗き見て、自身の手を口元にあて上品な笑みを浮かべている。

(おお、笑っているスイさんも可愛らしいな! 結果オーライだがナイスだ、悪友!) 

「え? そう見える?」

 雫さんは若干顔を赤くし、まんざらでもないって顔をしている。

「え? 俺らそんなんじゃねーから。……って、痛っ……⁈」

 カーミラー越しで分かったが、学は雫さんから足を踏みつけられ悶絶している模様。

(……いい気味だ。リア従はそのまま爆死してはぜろや(怒)……) 

 と、その時、後ろから急接近してきた車が何故かパッシングしてくる⁈

「うわ、眩しいっ」

 カーミラー越しに光が反射し、俺は思わず目を細めてしまう。

「……あの車、黒のクラウンだし、なんかやばそうなんで先に行かせたほうが良くないです?」

「あ、そうだよね!」

 スイさんの言葉に超同意だった俺は、急いで運転していた車を道路の端に寄せる。

「あ、それはそうと知人とライムのやり取りするんで、しばらく無言になるね?」

「あ、どうぞ」

 スマホを忙しく触りだすスイさんに俺はコクコクと頷いた。

(く、くそっ! 折角のスイさんとの楽しい時間を邪魔しやがって、あの野郎……っ!)

 俺は漆黒のクラウンを睨みつけ、そいつが遠くにいったことを確認し、車の運転を再開させた。

 ぼっちで暇になった俺はカーミラー越しに後部座席に目を移す。

(て、おい⁈ 学と雫さんは缶ビールを飲んで楽しそうに騒いでいるじゃん!)

 よく見ると、雫さんは学に体をそっと預け学の耳元で何やら呟いているご様子。

 しばらくすると、今度は学が雫さんの耳元で何やら呟いている姿が見えた。

(こ……こいつら! 人が真面目に運転している時に何イチャついてるんですかね?) 

「……え、ウソ?」

 と、その直後、雫さんの大声が車内に静かに響き渡る⁈

(えっ、一体どうしたんだ⁈ もしや、いきなりの痴話喧嘩か?) 

 その声の大きさに、俺はまるで雷に打たれたようにビックリしたし、隣のスイさんも驚いて後部座席に目をやるほどだ。

 ……。

 暫く車内は静寂に包まれる。

 そんなわけのわからない最中、何かが俺の顔横をかすめ飛んでいく⁈

「あ、あぶなっ?」

 たまらず軽く悲鳴を上げてしまう俺。

 カンっと軽い音をたて、それは俺の握っていたハンドルにぶつかったのが理解できた。

(あ、これさっきあいつらが飲んでいたビールの缶……⁈)

 しかも、その缶はバウンドし、結果不幸にもブレーキペダルの真下にスッポリはまってしまった模様……⁈

(まっ、まじか―――お、おおおイイイイイイイイい――――――――――――!) 

 当然ブレーキが使えないので、俺はなんとかハンドルだけで必死こいて車を操作していく!

(うおおおっ! ハリオカートで毎日鍛えているゲーマーの腕なめんなよっ!)  

「う、うわー⁈」

「キャー⁈」

 そんなこんなで当然、阿鼻叫喚の車内一同。

「えっ、ああっ⁈ さ、さっきのクラウンがま、前にっ! ぶ、ぶつか……」

 甲高い声で訴えかけるように絶叫するスイさん。

 しかも、不幸は重なって起きる始末!

「ええい! こなくそっ!」

 俺は咄嗟にハンドルを切ってしまう! が、慣性の法則が働き、俺達の乗った車はそのまま勢いよくスピンしてしまう!

(良い子の皆! 今のが悪い運転の例だ! 皆は絶対真似しないようにな!) 

「う、うおおおおおおおおおっ⁈」

「キャ―――――⁈」

 その恐怖で思わず絶叫する俺達。

 しかし、不幸はそれだけに留まらず、俺達の車はそのまま道路から放り出され、真っ黒な闇夜を勢いよくダイブしていた……。

「ひ、ひえええええ――――――⁈」

「い、いや――――――⁈」

 直後、超高層ビルのエレベーターに乗った時に感じられる真下に落ちていく気味の悪い感覚に包まれ、体中がぞわぞわする。

 多分、本能的に体が危険信号を出しているんだろう。

 だからか、俺の脳裏に過去の出来事が走馬灯のように蘇ってきた。

(ああ、俺と学は捨て子として孤児院に拾われ、兄弟のように育ったんだったな) 

 その孤児院も幼少期に謎の火事にあい、実の兄弟のように育った学とは離れ離れで引き取られることになって……。

(くそっ、両親の愛情を知らない不幸の連続だった俺達にもこうして青春を謳歌する時が来たってのに……) 

 何よりもスイさんに告白もしてないのに……。

(こ、こうなったらこのさい……) 

 俺は急いでスイさんを真剣な目で見つめる。

「す、スイさんっ聞いてくださいっ!」

「はわわっ? はいっ」 

「俺っスイさんのことっ……」

「ば、馬鹿野郎っ、今そんなことしている場合じゃねーだろ?」

 続きの言葉を遮るように、学から叱咤される。

(あ、スマン、確かにそうだよな。冷静さをに欠けてたわ……) 

 が、一体どうすればいい? 正直空中に放り出されているし万事休すだぞ?

「みんなっ、俺の手に掴まれっ」

 俺の心配をよそに力強く叫ぶ学だったが、何故かその姿はほんやりと不思議な光に包まれていた。

「わ、分った!」

「う、うんっ!」

 何故そうしたか自分でも分からない……。

 けど、そんな学に惹かれるように俺はあいつの手を掴んだ。

 他の皆もだ。

 その手を繋いだ瞬間、俺らは真っ白い不思議な光に包まれ意識を失ったんだ……。

 うっすらと温かい光に包まれる中、俺は昔の孤児院時代を思い出していた……。

   ♢

「……なあ、お前なんて言うの?」

「うっ、学。ぐすっ」

「お前、女みたいな容姿してるし、めそめそしてるからいじめられてるんじゃねーか」

「うっ、うっ……」

 これは幼少時の俺達の記憶……?

(俺の隣のブランコに座っているのは小さい時の学だなこりゃ。ちっこいし、赤い半袖Tシャツに半パンとおこちゃま仕様だしな) 

 この当時の学は見た目が本当に女性みたいに華奢で、喧嘩が弱く、毎日めそめそ泣いていたっけ。

 対して俺は孤児院の中でも当時はガタイが良くて、要領も良かったからイジメにあうことはなかった。

 というのも暗記は得意だったので動画とか見て、空手の技も学んで強くなっていたからだ。

「なあ、お前。良かったら俺が喧嘩の仕方教えてやるよ」

 俺はブランコを静かに立ちこぎしながら、隣の学を見つめる。

「えっ? 守君が、その……俺を守ってくれれば……」

 もしもじしている学に俺は心底呆れた。

「あのな……? 例え俺がお前を守ったとする。でもさ俺がいないところだとお前はもっといじめられるだろ? それじゃ何の解決にもならない。だからさ、その名の通り俺から喧嘩の技を学べっていってんの!」

「あ……。そっか、そうだね! へへ、守君は本当は優しいんだね……」

 学のまるで女の子の様な泣き顔に少しドキリとし、俺は少し顔を赤らめてしまう。

「ば、ばーか、そんなんじゃねーよ……」

 こうして学は俺から喧嘩の技を教わり、次第に強くなっていく。

(名前の通り学習能力が高く、色んな技を一瞬で覚えていく様に俺は旋律を覚えたんだっけ) 

「よーし、今日はこれまで! 空手の型をちゃんと覚えておけよ。型を覚えて置けば、一人でも練習はできるし対人のイメージトレーニングも出来るからな!」

「うん、ありがとう守君!」

 そうそう、当時学は素直な可愛らしい子だったんだよな。

 それから学はどんどん強くなっていき、結果、孤児院でいじめられることはなくなった。

 というか、孤児院での喧嘩は負け知らずになっていた。

 そして月日が流れ、おれらが高校生の時くらいかな? 寒い雪が降る日に孤児院が謎の火事に合い、俺達はバラバラに引き取られることになってしまったんだっけ。

 ま、いわゆる別れの時ってやつだな。

「守またな」

「ああ」

「お前に鍛えられた恩、俺はその、一生忘れねえ……」

 学はこの時、白いセーターの上からでも分る引き締まった体つきになっていた。

 そうそう! 学の奴は何故かこの時から青いジーパンを愛用しだしたんだよな。

「うん、お前逞しくなったもんな」

 実際もう俺は高校生の時に学に喧嘩で勝てなくなったしね。

 正直俺は、最低限の護身術として覚えてたまでであって、喧嘩よりも頭を使って何かを得る方が好きだった。

(決して、負け惜しみではない、多分……) 

「守……。その、俺お前に言わなきゃいけないことがあって……さ」

 学は何故か顔を真っ赤にし、何やらもじもじしている?

(あ? トイレか? ん、違うこの感じ、漫画でよくある、も、もしや?) 

 が、俺は男であるし、コイツも当然それである。

(この感じ、危険だ。つーことで先手必勝だな……) 

「スマン俺は、大のおっぱい星人であるし、そっちの毛はない!」

「成程そ、そうか……お前巨乳が好みなんだな……」

 学は何故か自身の胸元を見てますが?

 うん、引き締まった腹筋が凄いな! て、自慢かよっ!

「いやいや、おめーにおっぱいはねーし、そもそもタケノコじゃねんだから生えてこねーよ! 孤児院内で『おっぱいの知識にかけて右に出るものはいない』と言われた大賢者守様の知識をなめんなよ!」

「そ、そうなんだ。て、ん? 事務員が『俺のPCで【おっぱいはバレーボール並み】というサイトを見た奴出て来い』って、昔探し回ってたのってまさか……?」

「さ、さあ?」

 俺は学が俺から少し距離を置いたのをしっかりと目視した。

(よ、よしよし、これで適度な心の距離間が保てたはず) 

「ま、まあ、細かいことは置いといてだな。とりあえず、親友としてまた会おうな! それと海外エロサイトを検索する時は仕込みウィルスに気を付けるんだぞ!」

 俺はいちお保険を掛けて友達認定した。

 そして何故か俺の珠玉のコレクションが海外サイトでコンピューターウィルス『トロイの木馬』に感染し、その半分をクラッシュされて辛い思いでを思い出し、目頭が熱くなっていた……。

(まあ、俺のPCじゃなくて、例の事務員のおっさんの物だから傷は浅かったんだけどね……) 

「じゃ、またな守!」

 で、俺達はがっちりと深い握手を交わし、別々の家に引き取られることになったが……。

 驚いたことに、転向し通う高校が一緒だったしクラスも一緒だった。

 しかも、今の大学すらも……。

 腐れ縁にも程がある。

(学とはほぼ、兄弟みたいなもんだったな、ホント……) 

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  • 月神守は転生の輪舞を三度舞う   8.代償の血潮

     それから数時間後、学は腕を組み1人静かに佇んでいた。 晴天の最中、まっ平の草原にまばらに散見される木々や岩々……。 ザイアードとファイラスの国境近くのこの場所は、戦闘するにはもってこいの場所であった。 学が佇むその場所に向け、砂埃を上げながらこちらに進んで来る馬上に跨った大軍が見えてくる。(……ざっと見ただけでも万はいるな)  学は仁王立ちしながら静かにその様子を見守る。 その学の右手には金属製の赤黒い小手が装着されており、それは鈍く怪しい輝きを放っていた。(予想より早い! 軍馬の移動だと数日はかかる計算。ということはこの尋常じゃない移動スピードは『集団の空間転移魔法』。となると今回の件、裏にエルシードが絡んでると予想されるな) そんな事を考えている学の前に、砂塵を上げて進む大軍の中から一人軍馬にまたがり颯爽と学の目の前に姿を現す者がいた。「俺はファイラスの第一王子レッツである! 貴様が魔族の王か?」 輝く黄金の鎧に身に纏った屈強な男……。 それはファイラスの第一王子レッツだった。 学はレッツのその話を聞き、魔族を見下している感が理解出来た。(そもそも、あいつの同盟の文書の返答がこれだしな……)「……レッツよ確認するが、ザイアードとの同盟は考えてないのだな?」 学は無駄とは分かっていても、守との約束を考え律儀に確認することにした。「はっ、断る! 確かに同盟の文書が届いていたが、どうせ姦計を計って我らを皆殺しにする予定だったのだろう?」 レッツのその失言に対し、ファイラスの私兵は呼応するように魔族達に対する侮蔑の言葉を吐き嘲笑していく。「な、なんだとっ!」 学はファイラス軍のその態度に激昂し、自身の髪が逆立つのが理解出来た。 幼き頃から兄弟同然に育った守に対し、侮蔑としか思えない言葉を述べたのだから当然と言えば当然だろう。「あいつがどんな気持ちで文書を書いたか知らないくせに、よくもぬけぬけと! あいつがその気になればお前達なんぞ、正攻法で数回は皆殺しに出来る魔力を持っているというのに、お前達と来たら。まあいい、死んであいつに詫びろっ!」 学は瞬時に話の通じない相手と見切りをつけ、戦闘態勢を取っていく。 学は全身の闇の魔力を徐々に右手に全集中させていく。 魔王であり、転生者である学が使える『闇の魔力を物理攻撃に上乗せする

    Terakhir Diperbarui : 2025-02-18
  • 月神守は転生の輪舞を三度舞う   9.血の涙と共に

    「え? 貴方もしかして、スイ……?」 「ええっ?」(ま、まじ? このエ〇フもとい、エルフの女王らしき人ってあのスイさんなのか……? それにそうだとしたら何故彼女が此処に……?)  煌びやかな青のドレスを身に纏ったエルフの統治者らしき人物。 よく見ると確かにスイさんに瓜二つだった。 当然再び会えた嬉しさもあった。 が、何故スイさんがファイラス残党兵と共闘しているのかなどの疑問もあった。「……スイさんは何故此処に? そ、それにさっきの話は……?」 「ごめんなさい、挨拶がまだだったわ、お久しぶりね? そして時間が勿体ないから担当直入に聞くわね。貴方達『Fプロジェクト』って知ってる?」「……知らないな?」 俺はあまりにも自分勝手すぎるスイさんの物言いに警戒し、言葉を慎重に選ぶ。(時間が無いからだって? ふ、ふざけるなよ! 学や沢山の人が目の前で死んでるんだぞ! それに『Fプロジェクト』? なんだそれ?)「やっぱ知らないか。……じゃ、別の質問。学さんが人造人間だということは?」 「……は?」(スイさんはさっきからなにを言っているんだ?)  正直俺にはさっきから彼女が言っている意味が全く分からなかった。 分かっている事は逆にスイさんは俺達の様子を見て、何やら色々確認作業している事。「はあ、ホントに何も知らなかったみたいね……。学さんは貴方を護衛するために『Fプロジェクト』で作られた人造人間なのよ?」 「え、仮にそれが本当だとしたら女性型のってこと?」 雫さんはスイさんによくわからない質問をするっ……て⁉「えっ、え? さっきからホント何の話?」 俺は訳が分からなくなり、思わずそれが言葉に出てしまう。 色々確認したいことが多いが、何事にも優先順序ってものがある。 と、とりあえず学がおっぱ……じゃなくて女性かどうか確認したい。「あ、あの、も、もしかして、あの時に雫さんが学と車で喧嘩した理由って……」 「そ、俺は女性って言われ触って確認したのよね……。見事に胸にサラシを巻いていたわ」(な、成程……。あの時、後部座席で雫さん達がボディタッチしてイチャこらしていたように見えたのは……その確認作業ってことか) 「いやいや、喉と声で普通一発でわかるでしょ」 スイさんからとっても鋭い突込みが入る。(た、確かに……でも)「いや、

    Terakhir Diperbarui : 2025-02-23

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  • 月神守は転生の輪舞を三度舞う   46.良き臣下とその助言

     数十分ほど走り終えた後、今度は腰に下げている剣を抜き、俺の目線程の高さ以上ある枯れた大木目掛けて突きの練習をしていく。「ふっ!」 呼吸とも気合とも取れる声と共に、右手をピンと真っすぐに伸ばす俺。 一回一回丁寧にしかも鋭く早い突きを繰り出し、大木を突いていく。「朝から精が出ますな守様……?」「ッ!」 背後から聞こえる声に俺は驚き、振り向く。 するとなんと、ガウスがそこに立っていた。「な、なんだ、ガ、ガウスかビックリさせるなよ……」「はっはっはっ、申し訳ございません守様……。相手が雫様と学様ならもっと驚きましたか……?」(うっ! こ、コイツ、まさか……?)  「……な、何の話?」 俺は内心では思いっきり動揺していたが、冷静を装い一心不乱に大木を突いていく。「守様……。どうでもいいですが剣筋が乱れておりますぞ?」「なっ?」 よく見ると、確かに俺の剣は大木の真ん中から極端に離れた場所を突いていた。「何やら注意力散漫ですが、ナニがあったんでしょうなあ?」(こ、コイツ……? 昨日の事を知っているのか? それとも……?)  俺は訓練を中断し、ガウスと向き合う事にする。「……なあガウス、せっかくだし、ちょっと剣の相手をしてくれよ?」「ほお? やる気があるのは良いことですし、いいでしょう……」 ガウスは腰に下げている練習用の模擬剣を構え、更にはもう一本の模擬剣を俺に投げる。 軽くキャッチし、模擬剣を胸元に構える俺。 よく見るとガウスも同じように模擬剣構え、その丸くなった切っ先がこちらに見える。「では、行きますぞ?

  • 月神守は転生の輪舞を三度舞う   45.2人の思いと誓い

    「あ゛――――――――――――――――――⁈」 と、同時に湯船の中で学の絶叫が静かにこだまする……。 そ、そのお陰で俺は現状を視認出来た。 夢見心地の中、そっと雫さんの唇は離れていく。 更には再び俺の肩に自身の頭をそっと置く雫さん。 だからか、否応が無く先程の唇の感覚が俺の脳裏に鮮明に蘇って来る! 「あ、あの……? 雫さん?」「えへへ、その言葉ずっと待ってたんだ……」 雫さんは顔を真っ赤にしながら、少し照れくさそうはにかむ……。 俺もそれにつられて顔が真っ赤になるんですが?「あ……」(よく考えたら、今さっきの俺の言葉、ほとんど告白じゃねーか……!) 「えっ、え゛っぐ……う、うっうっ……」(ううっ、い、嫌な予感がする……)  当然、嗚咽を漏らしていたのは学だったが……。「ま、ま、学さん……?」 俺はもう訳が分からず思わずさん付けをしてしまうくらい狼狽えてしまっていた。「雫が雫が、守のファーストキスを取った―――! 俺なんか幼いころから好きだったのに、告白しようとして断られたのに―――!」 学は俺の肩に突っ伏し、号泣しだす始末! その俺の肩には涙やら、鼻水やら、何やら生暖かい液体がポタポタと流れ落ちてますが? うん、その一滴一滴が何やら重い、いや思い? 俺は孤児院時代の幼い頃の記憶を思い出し、友達認定して別れた頃を思い出していた……。(あ、ああ、あれはそう言う事だったのか……! いや、だってねえ? ホラ? 昔は男みたいだったじゃん? あ、でも、今

  • 月神守は転生の輪舞を三度舞う   44.裸の付き合い?

     そんなこんなで数時間後、俺達は前に来たことある例の『秘湯の温泉宿』に来ていた。 「あー、久々の温泉は気持ちいいな……」 俺はお湯をゆるりと手ですくい、ゆっくりと顔を洗う。 リラックス出来た関係か、嗅覚が鋭くなり硫黄臭を強く感じる。(逆にそんなところが温泉地に来た雰囲気が味わえていいんだけどね……)  まだお昼であるし、太陽が昇っている関係で当然周囲は明るく少し離れた山々の深緑がくっきりと見え、空気が余計美味しく感じられる。 太陽の反射光を浴びたお湯は輝いておりとても眩しい。(こんな時間にゆっくり浸かれるのはホント贅沢極まりないよな……)  「失礼しまーす!」「し、失礼します……」 複数の声の主が俺が浸っている湯舟に近づいて来るのが分る。 (きたきた学と雫さん達だ……!)  今回は二人ともタオルを羽織っている状態ではあるが?「こっ、こら押すな雫!」「え? だってこうでもしないと学は照れちゃって先に進めないでしょ?」 お2人がきゃいきゃい言いながら少しずつ近づいて来る。 顔を真っ赤にし、もじもじと照れながら、雫さんに背中をグイ押しされながら近づいて来る学。 太陽の逆光で眩く輝く、もち肌のうら若き女性達……。(こいつぁー、たまりましぇん……)  タオルに半分ほど隠された白桃のような艶やかな胸は、そのボリュームの余り窮屈なタオルに逆らうかの如く食い込みが発生している状態だ。(……こ、今年の果物は豊作かな……?)  何故かそんな言葉が脳裏をよぎる。 不思議、止まらない……⁉ そして、そのサイズの大きい白桃は学が歩く振

  • 月神守は転生の輪舞を三度舞う   43.バカ試合

     今回、ドラゴン化した学の背に俺、雫さん、ウィンディーニが乗り込む。 ちなみにノジャの背には『封魔の炎龍石』を積み込むための大袋等が載せてある。「……じ、じゃあいくぞ……?」「は、はい……」 ウィンディーニは鞍に跨りプルプルと振えているが……。 なんというかその色々面白い。 そして、エンシェントフレイム化した学が力強く大空に舞い上がり、ノジャもその後を追う。「ひ、ひえええ……」 ウィンデーニは情けなく悲鳴を上げていたが……。「ぷふっ……」 その様子を後方で見ていた雫さんが思わず吹き出している。(こ、コラコラ、笑っちゃ失礼だろ? ほ、本人は真剣なんだから……!)  とか思いながら、申し訳ないが俺も爆笑していたりする。 俺は雫さんや学が余計な事を言う前に、適当な話題を振る事にする。「あ、そういえばウィンディーニって、その名前の由来、もしかして水の精霊に関係してたりする?」  とか考えていたら、雫さんは機転をきかし話題を振ってくれた。「そうですね……。うちの家系は代々、水の精霊と仲が良いので何かしら水属性の名前を付けるしきたりがありまして。ちなみにうちの父はアイスバードといいます」「へーそうなんだ! じゃあ……」 そんな雑談を続けてから数時間後……。 例の温泉宿から少し離れた僻地に、ウィンデーニの知人が住んでいるというので寄ることになった。「へー、こんなとこに小屋があるなんて知らなかったなあ……」(ファイラスの地理に詳しい雫さんでも知らない場所か、正にだな) 「ええ、自分とギール様しか知らない秘密の

  • 月神守は転生の輪舞を三度舞う   42.ウィンディーニ?

     俺はそんな事を考えながらそっとため息を吐き、会議室から1人席を外し、そのまま自室に直行する。 俺は注意深く周囲を見て誰もいない事を確認し、机に腰かけゆっくりと背伸びをし、足腰を伸ばす。 俺が一人でここに来たのには深い理由があった。 それは休憩もだけど、ガウスから手渡された封書の内容を誰にも見せられないためだったりする。(ガウスは剣の腕と仕事の内容に関しては嘘をつかないからね……)  俺は中身が傷つかないようにペーパーナイフで丁寧に封書の封を切り、その内容に目を通していく。(ん? 誰からだと思えばウィンディーニから? あの場で伝えたいことを言えばとは思ったけど、あの天才児のことだから何か理由があるだろう。どれどれ……?) 「……え、これマジなん? じ、じゃあ学達のあの行動は……?」  ……俺は書かれていた内容に驚愕し、思わず独り言を呟いてしまった。(しっかし、ウィンデーニ、本物の天才なのかも)  ……それから俺は色々な用事を済ませ、再び会議室にこっそり戻る。 部屋に入るなり、雫さん達が俺の周りに集まってくる。「あっ、守君! 今、学達と話してね、急遽アグール火山に行くことになったから!」 雫さん達は嬉しそうにきゃいきゃいとはしゃいでいますが?(こ、この感じ、帰りはまた温泉宿泊コースかもしれんな。嫌いじゃないけどねっ!)  俺は温泉内のピンクイベントを思い出し、もっこ……もといにっこりと微笑む。「守様! あのっ! 自分も火山に同行することになりましたので、よろしくお願いいたします!」 ウィンディーニは元気よく俺にペコリとお辞儀をする。「彼には私の代理で現場視察に行ってもらうことになりましたので、守様よろしくお願いいたしますね」 ギールは俺にそう述べ、軽く一礼する。

  • 月神守は転生の輪舞を三度舞う   41.ノジャお手柄なのじゃっ!

     それから数分後……。 俺達はギールの資料とウィンディーニの魔導知識を元に話しを詰めていく事になった。  「なるほど、ルモール森林全土には『封魔の炎龍石』を使った魔法陣をしかけられそうですが……」 「え? 何か問題があるの?」「森林の地下トンネルに配置する分が全く足りません……」「仕方ない、ではこれで足りるのでは?」 ギールは一番下に置いていた、とっておきと思われる資料をウィンディーニに手渡す。「ああ、これなら地下トンネル分も余裕で足りますね! 余った分で数十人の鎧加工分も作れるでしょう。あの、それはさておき、この資料は私は見たことが無かったのですが?」「最近、ようやく火山上部で発掘出来る環境になり、未開拓であった関係で大量に発掘出来たものだからですな」 ギールは咳払いしながら、俺をチラリ見している。(ああ、例のやつね……。まあ、役に立って何よりだったよ) 俺はそんな事を考えながら思わず苦笑する。「んんっ! ……守様はこのピンポン玉くらいの大きさの『封魔の炎龍石』の価値を知っておいでですか?」 ギールはそんな俺の態度を見て、俺を厳しい目つきで睨む。(う、うわあ? や、やっべ、俺、地雷踏んだかも……?) 「い、いや?」 「分かりやすくこの『封魔の炎龍石』の価値を説明させていただますね。これ一つでだいたい人家10件分の価値があります……。何故そんなに高値で売れるかと言うと、『エルシード』の連中が価値を見出し、大人買いしていくのですよ……」「お、おう……」(そ、それはギールが出し渋るのもシカタナイデスヨネ……?)  俺はギールの言葉の重みを感じ、額に変な汗が流れて来るのを自身で感じ取る。「この

  • 月神守は転生の輪舞を三度舞う   40.会議は踊りまくる

     それから数時間後、此処はファイラス城内会議室。「イエーイ!」「やりましたな!」 心地よいハイタッチの音がファイラス城会議室に響きわたる。 ファイラス城に帰還した守達は宰相ガウスら重臣達と、ザイアード軍掃討作戦の成功の喜びを分かち合っていた。「いやー、あんなに上手くいくとは思いませんでしたな!」「流石ガウス! 地の利を生かしてあんなエグイ作戦を思いつくなんて……」 俺は作戦を考えた功労者であるガウスを労って、ワインをガウスのグラスになみなみと注ぐ。「はっはっは、そんなに褒められても困りますなあ? この作戦は鉱山などの労働者や魔法兵団の方々にも協力してもらったからこそ出来た作戦ですしね」 ガウスは自分で言った言葉を嚙みしめるようにワインを飲み干していく。 ガウスは終始笑顔ではいるものの、顔や手などはすり傷だらけではあった。「そうだよね……。この作戦は兵だけでなく、ファイラスの住人みんなにも協力してもらったからこその成果ですものね」「だね」 俺もガウスや雫さんと同じ考えだ。「ぷはー上手い……! 口の中の傷にしみますが、勝利の美酒ということで今日だけは許してもらいましょうか……」「そうだね……。これからしばらくは飲むことは出来なそうだしね」「では、勝利とこれからの戦に向けて乾杯!」 ファイラス会議室内には複数のグラスが打ち鳴らす軽快な音と賑やかな談笑が響き渡る……。 そう、今だけは……。 俺達は勝利の美酒を飲みながら今までの苦労を思い出していた。    ♢ 時は遡り、20日前のファイラス城作戦会議室……。 会議室の10人ほどが囲える木製の広いテーブルがある。 その周りに俺達いつものメンツ、それに宰相ガウスら重臣達、ゴリさん、城下町の町長など、これからの作戦に欠かせないメンツが揃い論議中であった。「……では2人の魔王の能力の分析が少し進んだので、要警戒の能力だけ情報共有させてもらうね?」 雫さんの言葉に一同は静かに頷き耳を傾ける。「2人に共通しているのは『色んな探知魔法』を使えること」 「……して、具体的には?」 雫さんの話の重要性を感知し、ガウスは耳を傾けている。 「んー色々あるみたいだけど……。中でも罠感知・生体感知・魔法感知・音声感知が要注意かな?」 「それまた厄介な能力ですな……」  確かに、ガウスが

  • 月神守は転生の輪舞を三度舞う   39.シツジイの助言

    「ほう? シツジイよ詳しそうだな? 話せ……」「この魔法を遮断する結界には希少な魔石を使うのです。これ単品では効果は発揮出来ないので、効果を発揮させるために加工と魔法陣が必要にはなりますが……。そしてこれは音を遮断する静寂の風石よりも、もっと希少なものなのです」 シツジイは握りこぶしより2まわり程小さい真紅に輝く魔石を懐から取り出し、魔王スカードに手渡す。「ほう? つまり?」「ルモール森林すべてを遮断するのにファイラスでとれる魔石を全て使っていると逆算出来ます」「……シツジイがそのように考える根拠はなんだ? 述べて見よ」「ファイラスの宝石鉱山で稀にこの魔石が発掘されることはスカード様もご存じのはず」「……そうだな」 アグール火山に太古から住む龍がこの魔石を生み出すのに関係していると噂されていることを魔王スカードは確かに知っていた。「この森林だけでも数年前のファイラスの宝石生産量から取れる魔石の数年分ほどの量は使われていると思われます」 シツジイはその算出データが書かれた資料を黒カバンから取り出し、魔王スカードにそっと手渡す。 それからしばらくして……。「成程、見事な資料だ。お前を信じようシツジイ……。ところで、シツジイが算出基礎で用いているものは数年前のデータであろうし、近年生産量が増えている可能性は?」「……斥候情報によるとここ数年、年々宝石の生産量が少なくなっていると聞いております。メインで採掘している場所については、体積的に考えて枯渇することはあっても多くなることはないと思いますが」 シツジイは今度は魔王スカードにファイラスから極秘で入手した、アグール火山の見取り図とそこで発掘しているメインの発掘場のポイント図を提出する。「……成程、宝石自体いつか枯渇するものであるし、急に増える理由はないか…&hel

  • 月神守は転生の輪舞を三度舞う   38.気づいた異変

    「思い起こせば今まで、行軍中に何も無かったのがそもそもの罠の一つだったようです……」 「……ふむ、お前の言葉確かに間違いでないし、俺もそのように感じていたところだ。早い話がこの俺のミスであり、お前達を咎める事は一切ない。だから遠慮なく続きを語ると良い……」「そ、それは違います! 魔王スカード様が悪いのではなく、このサイファーめが至らなかったのがそもそものミスなのです! どうか、どうかこのサイファーめに罰をお与え下さいっ!」 サイファーは魔王スカードのその言葉に心を心底痛め、スカードを庇うように弁明していく。「ふふ、良い。確かにお前が進言した内容は事実。だがな、それを聞いたこのスカードが最終判断を下したのだ。だからお前は気にすることはない……」 「う、うう、す、すみませぬ……」 腹心サイファーはその大きな体で地面に土下座をし、魔王スカードにひたすら平謝りをする。 その様子を見ていたザイアードの伝令兵はなんとなく流れを理解し、サイファーの為にも話を続けることにした。「あれは、数時間前のこと……。俺達ザイアード兵は霧が深いルモール森林をひたすら前進していました。森林の中は更に霧が濃くなり隣の兵の存在くらいしか確認できない状態でした……」 「そうだな……。俺の魔力感知にひっかからないところを見るとこの霧は自然発生したものだろう……」「で、ですよね。俺も先ほど色んな感知魔法を使って、周囲探索をしていましたが何も怪しいところは発見出来ていません!」 ただひたすらに忠臣であるサイファーは慌てて立ち上がり、魔王スカードに歩み寄り、そのフォローする。「い、異変に気が付いたのは高樹齢の大木が見え始め道の分岐が激しくなり、各々がバラけ行軍していたころでした」 「ふむ、続けよ」 ザイアード兵は震えながら続きを語って行く。 恐らくその時の様子を思い出し、恐怖におののいているのだろう……。 魔王スカードはザイアード兵のその様子を見ながら現在の心理状態を冷静に分析していた。「しばらくして、再び合流した時に結構な数の兵がいなくなっていることに気がつき……」 「まるで神隠しだな……」「じ、情報を共有させるために他の兵と、か、会話しようとしたところ……」 「……ところ?」「こ、声が出なかったのです……。入り口からしばらくはいった場所までは声が出せて

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