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4.全てを消し去る漆黒の力

last update Last Updated: 2025-02-15 08:57:08

 翌日の昼、ここは俺の部屋。

 接客用のフカフカの赤いソファーに腰かけ俺と学は談話の真っ最中だったりする。

「……守ここは慣れたか?」

「まあ、なんとかね」

 正直、魔王としての立場とかまだ色々違和感はあるが仕方がない。

「そうか。ところで守は転生した時に『特殊能力が使える事』に気づいているか?」

「え? 空飛べる以外にまだなにか出来るの?」

 実際俺は昨日、シツジイに直接指導を受け、嬉しくって大空をガンガン飛びまくったからな。

(へへっ、だからもう鷹とかツバメとかより早く飛べるぜ!) 

 なんとといっても機動力は早めに確保した方がファンタジー世界では色々便利だしね。

 俺のやれることから直実に詰めていった方がいい。

「えーと、言葉で説明するより実際見せたほうが早いか……。てことで外に出ようか」

「おう!」 

 俺達は漆黒の翼を大きく広げ、近くのただっ広い平地まで飛んでいくことにした。

 澄んだ青空を気持ちよく飛びながら俺はふと後ろを振り返り、今出ていったザイアード城を眺める。

(うん! 壮観、壮観!) 

 城はごつごつとした岩場の高き山をくり抜いて作られた、ゴシック様式の白亜の天然要塞といったところか?

 その城の周りだけ漆黒の瘴気にうっすらと覆われているところがもうね……。

「なんかこの城ってさ、ドラキュラが住んでそうな雰囲気出てるよな」

「ははっ、そうだな。てか俺達今、魔族だからな?」

「でしたね……」 

 俺は自身の頭から生えているねじくれた固い角に触れ、しみじみとそのことを実感してしまう。

「……よし、ここでいいか」

 俺達はほどなくし、平地に着陸する。

 周囲は靴くらいの高さに伸びた草と、程よく育った木々がまばらに生え、大きな岩が適度に散在している場所だった。

(なるほど周囲には建造物もないし、魔王として強大な力を振るう訓練にはうってつけってわけか) 

 よく見を凝らすと、粉々になった岩々が多数見られるため、学がここで色々修行したのが分った。

「よし、じゃ見てろよ守?」

「お、おう!」

 学はよどみなく空手の構えをとる。

「せいいっ!」

 学は気合と共に、近くにあった大人程あろう大岩に向かって素早く正拳中段突きを放つ!

(え、マジ? おまっ、拳壊れちゃうよ?) 

 俺の心配とは裏腹に、鈍い音を上げ大岩は粉々に消し飛んだ!

「す、スゲー⁉」

 俺は感嘆の声を上げ、思わず拍手する。

「魔族に転移し、身体能力が軒並み向上しているからこれは普通にお前も出来る。……というかこれからが本番なので、よく見とけ⁉」

「えっ?」

(ま、まだこれ以上にスゲー事が出来るって? マ?) 

「はあああっ!」

 何と驚いた事に、大声を上げ大きく拳を振りかぶった学の右手を見ると、何やらドス黒い握りこぶし大の球体見える⁈

(な、なんだあれ? スッゲー禍々しいものを感じるんですけど? ……えっと、どんどん大きくなってきてますけど? なんか大気が震えて、ゴゴゴゴゴゴゴって擬音が聞こえそうな感じなんですけどっ!)

「うおおおおおおおおおっ!」

 学の凄まじく気合の入った声と共に、その漆黒のエネルギー体は猛スピードで数キロ先まで勢いよく飛んでいく!

 しばらくし、爆弾が落ちたんじゃないかってくらいの激しい爆音と共に大気は振動し、砂煙が舞い、その周囲の草木や岩が粉々に消し飛んでいくのが見えた!

「う、うっっっっそ⁉」

 俺はその信じられない光景に思わず絶叫し、ぼーぜんとしてしまう。

 そして砂塵が晴れ、見えたその先は何も無い平らな土地に変化していたのだ……。

 驚いた事に先程の余波で、数キロ先にあった山々も粉々に消し飛んでしまったのである。

 地面が割れるレベルじゃなかったわ。

(ん? てことはもしかして?)

「なあ? 俺もなんか強力な能力持っていたりする?」

「勿論、ちょっといいか?」

「あ、うん?」

 学は俺に近づき、俺の額に軽く手を添える。

「……えっ、何?」

「ふむ、お前は『魔王の漆黒の魔力を溜めて放出する能力』だな。ちなみに俺の能力は『魔王の漆黒の魔力を物理攻撃に上乗せする能力』だ」

「な、成程。って、お前何でそんなことが出来るの?」

「え……? そ、そりゃ、お前より先に転生して色々知っているんだよ……」

 学は小声でボソリと呟き、何故か明後日の方を向き、腕組みする。

「あ、まあ、ゲームあるあるだよな!」

「そ、そうそう! ただ、強力な技ってのはそれなりにリスクと何かしろの条件があるから覚えとけよ?」

 学は人差し指を立て、色々と説明を続けていく。

「へっ? 例えば?」

「俺の技の場合、魔力を限界まで溜めるとさっきの技は一回しか使えない」 

「あー強力な技だしな。あ、ちな、使った後はどうなんの?」

「ペナルティとして魔力が枯渇し、この世界の人間並みの身体スペックになる。つまり、先ほど俺が軽々と壊した大岩も当然破壊できなくなる」

「あーじゃ、使いこなして自分の魔力の限界値を知っとかないとだなあ」

(成程、強力な技として使用制限とそれなりのリスクが当然あるわけか……。まるでゲームみたいだよなホント) 

「ふふ、流石賢いな?」

「へへっ、まあ、伊達に賢者の異名はとってないぜ! でさ、それはいいとして魔力ってどうやって放出すんの?」

(まあ、俺の賢者の場合、賢者タイムからきてたりするんですけどね(照)……)

「それはな……」

 そんなこんなで、しばらく学から手ほどきを受けた俺は、ある程度の魔力放出コントロールが出来るようになっていた。

「おおおおっ!」

 俺の気合と共に具現化された漆黒の魔力が頭上に現れる。

 東京ドームくらいの大きさの赤黒い球体、それはゆっくりと近場の山に飛んでいき全てを闇に葬り去っていく。

 それが通った後は何も残らない……無、ただの無のみ。

 その証拠に、山だった場所は巨大な球体に飲み込まれた凄惨なクレーターの跡が残されていたのだ!

「や、やべーなコレ……」

「ああ。強力すぎる。しかも、見ていた感じコントロールが難しそうだな」

 俺達はその凄惨さにドン引きし、青ざめていたりする。

「な、何だよこの超巨大ブラッホールみたいな殺人兵器。こんなの使いたくねーよ!」

「そうか……。あ、そうだ! そんなお前の能力にピッタリな制御マジックアイテムがある。城に帰ったらヒツジイから貰っておけ」

(よ、良かったあ。俺、こんな全てを無にする魔王みたいな能力なんか使いたくねーしな! あ、魔王デシタネ! サーセン)

 制御アイテムの存在にほっと胸をなでおろす俺でした。 

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     そんなこんなで数時間後、俺達は前に来たことある例の『秘湯の温泉宿』に来ていた。 「あー、久々の温泉は気持ちいいな……」 俺はお湯をゆるりと手ですくい、ゆっくりと顔を洗う。 リラックス出来た関係か、嗅覚が鋭くなり硫黄臭を強く感じる。(逆にそんなところが温泉地に来た雰囲気が味わえていいんだけどね……)  まだお昼であるし、太陽が昇っている関係で当然周囲は明るく少し離れた山々の深緑がくっきりと見え、空気が余計美味しく感じられる。 太陽の反射光を浴びたお湯は輝いておりとても眩しい。(こんな時間にゆっくり浸かれるのはホント贅沢極まりないよな……)  「失礼しまーす!」「し、失礼します……」 複数の声の主が俺が浸っている湯舟に近づいて来るのが分る。 (きたきた学と雫さん達だ……!)  今回は二人ともタオルを羽織っている状態ではあるが?「こっ、こら押すな雫!」「え? だってこうでもしないと学は照れちゃって先に進めないでしょ?」 お2人がきゃいきゃい言いながら少しずつ近づいて来る。 顔を真っ赤にし、もじもじと照れながら、雫さんに背中をグイ押しされながら近づいて来る学。 太陽の逆光で眩く輝く、もち肌のうら若き女性達……。(こいつぁー、たまりましぇん……)  タオルに半分ほど隠された白桃のような艶やかな胸は、そのボリュームの余り窮屈なタオルに逆らうかの如く食い込みが発生している状態だ。(……こ、今年の果物は豊作かな……?)  何故かそんな言葉が脳裏をよぎる。 不思議、止まらない……⁉ そして、そのサイズの大きい白桃は学が歩く振

  • 月神守は転生の輪舞を三度舞う   43.バカ試合

     今回、ドラゴン化した学の背に俺、雫さん、ウィンディーニが乗り込む。 ちなみにノジャの背には『封魔の炎龍石』を積み込むための大袋等が載せてある。「……じ、じゃあいくぞ……?」「は、はい……」 ウィンディーニは鞍に跨りプルプルと振えているが……。 なんというかその色々面白い。 そして、エンシェントフレイム化した学が力強く大空に舞い上がり、ノジャもその後を追う。「ひ、ひえええ……」 ウィンデーニは情けなく悲鳴を上げていたが……。「ぷふっ……」 その様子を後方で見ていた雫さんが思わず吹き出している。(こ、コラコラ、笑っちゃ失礼だろ? ほ、本人は真剣なんだから……!)  とか思いながら、申し訳ないが俺も爆笑していたりする。 俺は雫さんや学が余計な事を言う前に、適当な話題を振る事にする。「あ、そういえばウィンディーニって、その名前の由来、もしかして水の精霊に関係してたりする?」  とか考えていたら、雫さんは機転をきかし話題を振ってくれた。「そうですね……。うちの家系は代々、水の精霊と仲が良いので何かしら水属性の名前を付けるしきたりがありまして。ちなみにうちの父はアイスバードといいます」「へーそうなんだ! じゃあ……」 そんな雑談を続けてから数時間後……。 例の温泉宿から少し離れた僻地に、ウィンデーニの知人が住んでいるというので寄ることになった。「へー、こんなとこに小屋があるなんて知らなかったなあ……」(ファイラスの地理に詳しい雫さんでも知らない場所か、正にだな) 「ええ、自分とギール様しか知らない秘密の

  • 月神守は転生の輪舞を三度舞う   42.ウィンディーニ?

     俺はそんな事を考えながらそっとため息を吐き、会議室から1人席を外し、そのまま自室に直行する。 俺は注意深く周囲を見て誰もいない事を確認し、机に腰かけゆっくりと背伸びをし、足腰を伸ばす。 俺が一人でここに来たのには深い理由があった。 それは休憩もだけど、ガウスから手渡された封書の内容を誰にも見せられないためだったりする。(ガウスは剣の腕と仕事の内容に関しては嘘をつかないからね……)  俺は中身が傷つかないようにペーパーナイフで丁寧に封書の封を切り、その内容に目を通していく。(ん? 誰からだと思えばウィンディーニから? あの場で伝えたいことを言えばとは思ったけど、あの天才児のことだから何か理由があるだろう。どれどれ……?) 「……え、これマジなん? じ、じゃあ学達のあの行動は……?」  ……俺は書かれていた内容に驚愕し、思わず独り言を呟いてしまった。(しっかし、ウィンデーニ、本物の天才なのかも)  ……それから俺は色々な用事を済ませ、再び会議室にこっそり戻る。 部屋に入るなり、雫さん達が俺の周りに集まってくる。「あっ、守君! 今、学達と話してね、急遽アグール火山に行くことになったから!」 雫さん達は嬉しそうにきゃいきゃいとはしゃいでいますが?(こ、この感じ、帰りはまた温泉宿泊コースかもしれんな。嫌いじゃないけどねっ!)  俺は温泉内のピンクイベントを思い出し、もっこ……もといにっこりと微笑む。「守様! あのっ! 自分も火山に同行することになりましたので、よろしくお願いいたします!」 ウィンディーニは元気よく俺にペコリとお辞儀をする。「彼には私の代理で現場視察に行ってもらうことになりましたので、守様よろしくお願いいたしますね」 ギールは俺にそう述べ、軽く一礼する。

  • 月神守は転生の輪舞を三度舞う   41.ノジャお手柄なのじゃっ!

     それから数分後……。 俺達はギールの資料とウィンディーニの魔導知識を元に話しを詰めていく事になった。  「なるほど、ルモール森林全土には『封魔の炎龍石』を使った魔法陣をしかけられそうですが……」 「え? 何か問題があるの?」「森林の地下トンネルに配置する分が全く足りません……」「仕方ない、ではこれで足りるのでは?」 ギールは一番下に置いていた、とっておきと思われる資料をウィンディーニに手渡す。「ああ、これなら地下トンネル分も余裕で足りますね! 余った分で数十人の鎧加工分も作れるでしょう。あの、それはさておき、この資料は私は見たことが無かったのですが?」「最近、ようやく火山上部で発掘出来る環境になり、未開拓であった関係で大量に発掘出来たものだからですな」 ギールは咳払いしながら、俺をチラリ見している。(ああ、例のやつね……。まあ、役に立って何よりだったよ) 俺はそんな事を考えながら思わず苦笑する。「んんっ! ……守様はこのピンポン玉くらいの大きさの『封魔の炎龍石』の価値を知っておいでですか?」 ギールはそんな俺の態度を見て、俺を厳しい目つきで睨む。(う、うわあ? や、やっべ、俺、地雷踏んだかも……?) 「い、いや?」 「分かりやすくこの『封魔の炎龍石』の価値を説明させていただますね。これ一つでだいたい人家10件分の価値があります……。何故そんなに高値で売れるかと言うと、『エルシード』の連中が価値を見出し、大人買いしていくのですよ……」「お、おう……」(そ、それはギールが出し渋るのもシカタナイデスヨネ……?)  俺はギールの言葉の重みを感じ、額に変な汗が流れて来るのを自身で感じ取る。「この

  • 月神守は転生の輪舞を三度舞う   40.会議は踊りまくる

     それから数時間後、此処はファイラス城内会議室。「イエーイ!」「やりましたな!」 心地よいハイタッチの音がファイラス城会議室に響きわたる。 ファイラス城に帰還した守達は宰相ガウスら重臣達と、ザイアード軍掃討作戦の成功の喜びを分かち合っていた。「いやー、あんなに上手くいくとは思いませんでしたな!」「流石ガウス! 地の利を生かしてあんなエグイ作戦を思いつくなんて……」 俺は作戦を考えた功労者であるガウスを労って、ワインをガウスのグラスになみなみと注ぐ。「はっはっは、そんなに褒められても困りますなあ? この作戦は鉱山などの労働者や魔法兵団の方々にも協力してもらったからこそ出来た作戦ですしね」 ガウスは自分で言った言葉を嚙みしめるようにワインを飲み干していく。 ガウスは終始笑顔ではいるものの、顔や手などはすり傷だらけではあった。「そうだよね……。この作戦は兵だけでなく、ファイラスの住人みんなにも協力してもらったからこその成果ですものね」「だね」 俺もガウスや雫さんと同じ考えだ。「ぷはー上手い……! 口の中の傷にしみますが、勝利の美酒ということで今日だけは許してもらいましょうか……」「そうだね……。これからしばらくは飲むことは出来なそうだしね」「では、勝利とこれからの戦に向けて乾杯!」 ファイラス会議室内には複数のグラスが打ち鳴らす軽快な音と賑やかな談笑が響き渡る……。 そう、今だけは……。 俺達は勝利の美酒を飲みながら今までの苦労を思い出していた。    ♢ 時は遡り、20日前のファイラス城作戦会議室……。 会議室の10人ほどが囲える木製の広いテーブルがある。 その周りに俺達いつものメンツ、それに宰相ガウスら重臣達、ゴリさん、城下町の町長など、これからの作戦に欠かせないメンツが揃い論議中であった。「……では2人の魔王の能力の分析が少し進んだので、要警戒の能力だけ情報共有させてもらうね?」 雫さんの言葉に一同は静かに頷き耳を傾ける。「2人に共通しているのは『色んな探知魔法』を使えること」 「……して、具体的には?」 雫さんの話の重要性を感知し、ガウスは耳を傾けている。 「んー色々あるみたいだけど……。中でも罠感知・生体感知・魔法感知・音声感知が要注意かな?」 「それまた厄介な能力ですな……」  確かに、ガウスが

  • 月神守は転生の輪舞を三度舞う   39.シツジイの助言

    「ほう? シツジイよ詳しそうだな? 話せ……」「この魔法を遮断する結界には希少な魔石を使うのです。これ単品では効果は発揮出来ないので、効果を発揮させるために加工と魔法陣が必要にはなりますが……。そしてこれは音を遮断する静寂の風石よりも、もっと希少なものなのです」 シツジイは握りこぶしより2まわり程小さい真紅に輝く魔石を懐から取り出し、魔王スカードに手渡す。「ほう? つまり?」「ルモール森林すべてを遮断するのにファイラスでとれる魔石を全て使っていると逆算出来ます」「……シツジイがそのように考える根拠はなんだ? 述べて見よ」「ファイラスの宝石鉱山で稀にこの魔石が発掘されることはスカード様もご存じのはず」「……そうだな」 アグール火山に太古から住む龍がこの魔石を生み出すのに関係していると噂されていることを魔王スカードは確かに知っていた。「この森林だけでも数年前のファイラスの宝石生産量から取れる魔石の数年分ほどの量は使われていると思われます」 シツジイはその算出データが書かれた資料を黒カバンから取り出し、魔王スカードにそっと手渡す。 それからしばらくして……。「成程、見事な資料だ。お前を信じようシツジイ……。ところで、シツジイが算出基礎で用いているものは数年前のデータであろうし、近年生産量が増えている可能性は?」「……斥候情報によるとここ数年、年々宝石の生産量が少なくなっていると聞いております。メインで採掘している場所については、体積的に考えて枯渇することはあっても多くなることはないと思いますが」 シツジイは今度は魔王スカードにファイラスから極秘で入手した、アグール火山の見取り図とそこで発掘しているメインの発掘場のポイント図を提出する。「……成程、宝石自体いつか枯渇するものであるし、急に増える理由はないか…&hel

  • 月神守は転生の輪舞を三度舞う   38.気づいた異変

    「思い起こせば今まで、行軍中に何も無かったのがそもそもの罠の一つだったようです……」 「……ふむ、お前の言葉確かに間違いでないし、俺もそのように感じていたところだ。早い話がこの俺のミスであり、お前達を咎める事は一切ない。だから遠慮なく続きを語ると良い……」「そ、それは違います! 魔王スカード様が悪いのではなく、このサイファーめが至らなかったのがそもそものミスなのです! どうか、どうかこのサイファーめに罰をお与え下さいっ!」 サイファーは魔王スカードのその言葉に心を心底痛め、スカードを庇うように弁明していく。「ふふ、良い。確かにお前が進言した内容は事実。だがな、それを聞いたこのスカードが最終判断を下したのだ。だからお前は気にすることはない……」 「う、うう、す、すみませぬ……」 腹心サイファーはその大きな体で地面に土下座をし、魔王スカードにひたすら平謝りをする。 その様子を見ていたザイアードの伝令兵はなんとなく流れを理解し、サイファーの為にも話を続けることにした。「あれは、数時間前のこと……。俺達ザイアード兵は霧が深いルモール森林をひたすら前進していました。森林の中は更に霧が濃くなり隣の兵の存在くらいしか確認できない状態でした……」 「そうだな……。俺の魔力感知にひっかからないところを見るとこの霧は自然発生したものだろう……」「で、ですよね。俺も先ほど色んな感知魔法を使って、周囲探索をしていましたが何も怪しいところは発見出来ていません!」 ただひたすらに忠臣であるサイファーは慌てて立ち上がり、魔王スカードに歩み寄り、そのフォローする。「い、異変に気が付いたのは高樹齢の大木が見え始め道の分岐が激しくなり、各々がバラけ行軍していたころでした」 「ふむ、続けよ」 ザイアード兵は震えながら続きを語って行く。 恐らくその時の様子を思い出し、恐怖におののいているのだろう……。 魔王スカードはザイアード兵のその様子を見ながら現在の心理状態を冷静に分析していた。「しばらくして、再び合流した時に結構な数の兵がいなくなっていることに気がつき……」 「まるで神隠しだな……」「じ、情報を共有させるために他の兵と、か、会話しようとしたところ……」 「……ところ?」「こ、声が出なかったのです……。入り口からしばらくはいった場所までは声が出せて

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