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第7話

「記録装置だ!操縦席の記録装置!」江口丞は声を張り上げ、まるで救いの糸を掴むかのように、一筋の希望がその瞳に灯った。

それは彼と私だけが知っていた小さな秘密だった。

航海の始まりの頃、私はいつも江口丞に海上の不思議な話を聞きたくて彼に纏わりついていた。

けれど、航海は危険を伴い、彼は常に私に返事をできるわけではなかった。そこで、彼は操縦席に小さな記録装置を設置し、航海中の様子を録画してくれることになった。

「朝陽ちゃん、これで君はいつも俺のそばにいて、俺と一緒に沿道の風景を見ていられる」

こうして、私たちは遠く離れながらも、一緒に日の出や日の入りを見て、星を数え、未来の生活を語り合ったのだ......

江口丞はその悲痛を抑えきれず、乱れた髪を掻き、震える手で記録画面を開いた。

画面には、最初は静かな操縦室が映し出されていた。青い海の上を海鳥が飛び交う光景も見えた。

突然、光が遮られ、何か怪しい人影が入り込んできた。

江口丞の視線は瞬時にその人影の頭に巻かれたピンクの髪留めに留まり、今まさに自分の手首に同じものがあることに気が付いた。

彼の体が凍り付き、木彫りの像のように動けなくなり、目の前の影がパネルを適当に押し乱す様子をただ見つめていた。

間もなく、画面が激しく揺れ、警報が耳をつんざくように響き渡った。

その影は事態がこれほど早く変わるとは思わなかったらしく、慌ててドアを開けようとしたが、船体が傾き、体がバランスを崩してまっすぐ外へと落ちていった。

江口丞は無言でパソコンを閉じ、机に爪を立てて白くなるほど拳を握りしめた。

彼は立ち上がるとパソコンを掴み、病院へと駆け戻った。

病室のドアを勢いよく開け放つと、高柳瑠衣はその音に驚いて振り向き、江口丞が入ってきたのを見るや、少し口を尖らせて「江口兄ちゃん、どうしてそんなに怒ってるの?また朝陽お姉さんが何かしたの?」と甘えた声を出した。

「黙れ!」江口丞は怒鳴りつけた。「お前に彼女の名前を口にする資格なんかない!」

高柳瑠衣は涙ぐみながら、無垢な顔で見つめ返した。

「もうごまかすな!」江口丞はパソコンを高柳の前に叩きつけた。

高柳瑠衣の顔色は青ざめたが、すぐに冷静を取り戻し、気丈に「江口兄ちゃん、私はただ好奇心で操縦室を見に行っただけよ......」と釈明し始めた。

「今になってま
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