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2. 「最強になるために」⑪~⑮

作者: 佐行 院
last update 最終更新日: 2025-01-21 11:31:01

-⑪謝罪と協力-

 以前結愛が改造した校舎各所に元から設置された監視カメラのハッキングに光明が成功したとの連絡が入ったので海斗と結愛は深夜光明の元へ向かった、兄妹も光明も同様の可能性を示唆していたのだ。念のため、結愛が光明に持ち掛けていた。

-数時間前-

結愛「光明、ちょっといいか?」

光明「ん?」

結愛「俺も兄貴も考えてたんだけどな。」

光明「うん。」

結愛「理事長室や出入口付近以外から親父が出入りしている可能性ってないのかなってよ。」

海斗「壁に隠し扉・・・的な。」

光明「それは俺も考えてた。」

 その時、用を済ませ化粧室から出てきた琢磨が教室に入ってきた。

琢磨「何の話だよ。」

光明「ん?光明か・・・、実はな・・・。」

 光明が琢磨に先程までの会話の内容を伝えた。

琢磨「確か監視カメラって結愛が改造してたよな。」

光明「実はそのカメラの解析と改造に成功したんだよ、ちょっと見てくれるか?」

 光明はパソコンに映っている監視カメラの映像を見せた。

光明「これは以前結愛が以前改造した監視カメラの映像だ。念のため、監視側には以前と同様に同じ映像がずっと流れる様にいじくってある、証拠を見せないとな・・・。」

琢磨「なぁ、俺も協力できねぇか?」

光明「いいけど、お前がいいなら。」

琢磨「前に結愛の事を疑っちまったから、なんつぅか・・・、謝りたいというか・・・。」

結愛「それは仕方ねぇよ、必ずしも起こりうる事だと俺も海斗も思ってたからな。俺たちは嬉しくねぇが『貝塚』だからな。」

琢磨「お前ら『坊ちゃま』と『お嬢様』だもんな。」

結愛「やめろよ、そう呼ばれる度に吐き気がするんだ。」

海斗「俺も。」

守「演技が上手いんだな。」

圭「それ褒めてんの?」

守「少なくとも俺はそのつもりさ。それにこれは使えるかもしれないだろ。」

結愛「『演技』か・・・。」

海斗「確か『あいつら』って・・・、だよな?」

全員「確かに・・・。」

 そこにいた全員が共感していた、ただ今は作戦会議が優先だ。

琢磨「一先ず俺がどれかの監視カメラの前に行くわ、そこでだが無線機を通して誰か何かを俺に指示してくれるか?」

光明「あいよ。」

 琢磨は光明からスコープや無線機を受け取ると一番近くの監視カメラへと向かった、最寄りのカメラまではさほど時間がかかることなく到着した。海斗がカメラの方へ向く。

結愛「少し遊ぶか?俺達だってまだ高校生だぞ、いいだろ?」

 満場一致だ、無線機を通してまずは結愛が普通の指示を出す。

結愛「琢磨、聞こえるか?聞こえたら右手を挙げてくれ。」

 琢磨は抵抗することなく右手を挙げた。

結愛「左手で鼻をつまめ。」

守「股を開いてO脚に。」

圭「白目向いて。」

光明「口を全開に。」

海斗「舌を出して。」

 教室に笑い声が轟く、すると顔を赤らめた琢磨がダッシュで帰って来た。

琢磨「アホか、お前ら!!」

-⑫偽装作戦-

 光明は疑問に抱いていた事を海斗にぶつけた、必ずと言っていいほど作戦実行に必要だからだ。

光明「なぁ、理事長室に潜入したときに罠だったけどボタンを見つけたって言ってたよな。」

海斗「確か・・・、義弘が使ってるデスクの裏のやつだよな。」

光明「うん、そのボタンの周辺にスペースって無かったか?機械でボタンを押してわざと侵入者が出たようにしたいんだ。」

海斗「どれぐらいのスペースが必要なんだ?」

光明「2cm四方あれば大丈夫だ。」

海斗「よし、おれに任せてくれ。」

光明「いや、それには及ばない。今回の為に開発したんだ。」

 すると光明はとても小さなドローンを取り出した、内視鏡カメラが付いている。そのカメラの先端にはスマートスイッチが付いていた、これを理事長室のボタンに取り付けて誰かが押したかのようにするのだという。いつの間にか開発していたので海斗は驚いていた。2人は作戦実行の日にちを決め、結愛や守、琢磨、圭、橘にも協力を要請して全校生徒に伝えた。その時、作戦時に使用するイヤホンを全校生徒に配っていた。作戦実行の瞬間に生徒が廊下に出ていたら速攻で疑われ、作戦が台無しになってしまう。教室にとどまるように連絡を行った。

 次の日の深夜、全員が教室にとどまった事を確認すると、作戦実行の連絡をした海斗の案内で光明がドローンを飛ばし理事長室を目指した。因みにドローンには潜水艦のようなステルス機能があるので誰からも見えないし監視カメラにも映っていない。それが故に理事長室には簡単に到着した、超小型のパスワード解析装置も仕掛けられているので入り口はすぐに開く。ドローンから送られる映像が光明のパソコンに表示され海斗がそれを見ながらデスクへと導く。勿論赤外線スコープ機能もあるのでセンサーもするすると抜けていった。問題のボタンがある引出しを動かして両面テープでスマートスイッチをくっつけた、急ぎながらも冷静にゆっくりとドローンを教室まで飛ばして回収を行った。海斗が全校生徒に改めて確認の連絡をする。

海斗「あー、あー、皆さんイヤホンから俺の声は聞こえていますか?改めまして貝塚海斗です。ただいまスマートスイッチの装着とドローンの回収に成功しました。これからわざと罠を起動させて黒服が何処から出てきているのかを監視カメラを通して見ていきたいと思いますのでご協力お願いします。ただ念の為、今から10分間のトイレタイムを取ります。くれぐれも黒服に怪しまれないように用を済ませて教室に戻ってください。10分後にまたこのイヤホンから連絡します。では、トイレタイム開始です、どうぞ。」

 全員静かにトイレに向かい用を済ませていく。黒服は全く出てこない。思ったより多い人数がぞろぞろとトイレに向かっているというのに全く怪しまない。それなりにトイレは広く作られているし一般的な学校の休み時間では普通の事だからだろうか。もしくは・・・、

海斗「よっぽど黒服が馬鹿なんだな。」

 ・・・とクスリと笑っていた。

光明「おいおい、これからだっての。」

海斗「悪い悪い(わりいわりい)。」

10分が経過して作戦実行の時が来た。海斗が全校生徒に連絡を入れる。

海斗「皆さん、教室に戻って下さい。各クラスの代表者は点呼と確認を済ませて連絡をお願いします。」

 全クラスの代表者から確認完了の連絡が入ったので海斗は深呼吸した。

海斗「では、作戦開始します。」

 そして、光明が操作してスマートスイッチがボタンを押した。そして2人は監視カメラの映像を食い入るように直視した。理事長室前を含めあらゆる場所の壁がパカッっと開きそこからピストルを持った黒服が一斉に飛び出した。校舎中が黒服だらけとなった。その時、海斗が異変に気付いた。

海斗「光明、今の所、もう一回見てもいいか。」

光明「うん。」

 光明は指示通り映像を巻き戻して再生した。海斗は1番3番4番6番カメラの映像を凝視している。

海斗「なぁ、ちょっと見てくれるか。」

光明「どうした?」

-⑬不審な点、重要な戦力-

 光明は海斗が指したカメラの映像を見た。1番3番4番6番カメラだけ黒服が映っていない。同様に壁が開いているのだがその4か所だけ黒服が出てこなかったのだ。

光明「ここって確か・・・。」

海斗「そうだよな、元々、食堂だったり家から遠い入口だったりする場所だよな。余りにも不自然すぎる。この前のドローンって何台か予備はないか?」

光明「大丈夫だ、任せろ。」

 他のクラスの生徒からイヤホンを通して連絡がやって来た。

生徒「もう大丈夫?そろそろトイレに行きたいんだけど。」

海斗「すまない。だいぶ黒服も退いて来たからそろそろ問題ないと思うぞ、ありがとう。」

生徒「了解、その言葉を待ってた。」

海斗「あと、お礼と言っては何だがある程度の食料を2年1組の教室に用意してあるから皆で食べてくれ。」

各クラスの代表者「分かった。」

 結愛は光明の技術を以前から賞賛していたし光明の事を信頼していた、ただ結愛の場合は信頼以上の感情を抱いている可能性が高いのだが。どうしても協力したくなる感情を抱き始めている様な気もしていた、光明にとっては心強い味方となっていたので助かっていた。

結愛「み、光明・・・、あのさ・・・、何か協力できないか?」

光明「そうだな・・・、今度結愛の家を案内してもらえるか?勿論、カメラの映像を通してだが。」

結愛「うん、任せろ。」

 結愛はどこか嬉しそうにしていた。

 しばらくの間、物事を起こさないようにしていた。義弘や黒服に感づかれないために。しかし何もしていなかった訳ではない、密かに集まって作戦を立てていたのだ。理事長室の罠をわざと起動させてからどうしようか、と。

 一先ずは黒服が出てこなかった各箇所の隠し扉が何処に繋がっているのかを探ろうということで満場一致した。しかしそのためには前回の様な騒ぎをまた起こさなければならない、その上でカメラを数台用意するか騒ぎを数回起こすか選択することになる。皆は迷わず前者を選んだ。度々騒ぎを起こすと流石に義弘に怪しまれる。2回も起こしてしまっているのだ、流石に次は起こしづらい。そこで守が別案を出した。

守「なぁ、黒服が出てこなかった4か所の隠し扉をこっそり開ける事って出来ないかな。誰からもバレずにというのが前提だが。」

光明「最初に壁を解析して場所を探らないとだな。しかし視覚では分からないようにぴっちり閉まってるはずだから・・・。」

圭「視覚がだめなら聴覚・・・?」

橘「音ってことか。」

結愛「壁をコンコンしてって事?」

海斗「でもそんな絶妙な違いを分かる奴・・・。」

圭「確か別のクラスだけど・・・。」

琢磨「いた!!ちょっと呼んでくるから待ってろ!」

-しばらくして-

伊津見「急に呼び出して何?」

光明「お前・・・、もしかしていっつん?」

伊津見「そういうお前はみつもん?」

結愛「知り合いだったん?」

光明「幼稚園からずっと一緒よ。」

海斗「じゃあ・・・、守や琢磨ともか?」

守「いや、俺はあんまり。」

光明「じゃあ俺から。こいつは伊津見、さっきも言った通り幼稚園から一緒の幼馴染だ。いっつんって呼んでやってくれ。こいつの自慢の聴力は並外れてて下手したら数メートル先でのひそひそ話まで聞こえるレベルなんだよ、それとこいつを利用する。」

 すると光明は懐から先日の様な小型ドローンを取り出した。ただ、前回の物と違って高性能な小型マイク付きとなっている。これ以上性能を追加していくと小型の意味がなくなっていく様な気がするが。

光明「この内視鏡スコープの先っちょで壁の怪しいところを小さくコンコン叩いてそれをヘッドフォンを通していっつんに聞いてもらうんだ。」

守「それで隠し通路を見つける、と?」

橘「やってみよう、よろしくいっつん。俺は橘だ。」

守「歓迎するよ、いっつん。」

-⑭音で見る-

 伊津見が合流して一緒に調査を始める事になり数日の間、一先ず怪しい出入口を見つけようとドローンで様子を伺う事にしていた。そしてついに伊津見の能力を利用しようとこっそりと行動を始めていく。ゆっくりと静かに飛んでいくドローン、通り過ぎる黒服や他の生徒は全く持ってドローンに気付かない。そんなこんなで以前、黒服が出てこなかった出入口付近の壁まではいつもの事なので容易に辿り着いたが何故か今日は黒服がずっと直立不動での監視を行っていた。ただ、光明の小型ドローンは全然見えてはいない、小さい上に深夜なので余計なのだ。蚊程の大きさしかないので全然気にならない、なので黒服に動きが見えるまで観察することにした。

 数分後、罠を発動させてないのに壁がパカっと開いた。中から汗まみれの義弘が出てきた。

光明「おい、見ろよ。あれ義弘だぞ。」

結愛「ここって俺らの家から一番遠い出入口だよな。」

海斗「『敢えて』って可能性もあ・・・。」

伊津見「シッ!お二人ともお静かに、親父さん何か話してます。」

結愛「兄貴にもタメ口でいいぞ。」

海斗「それに海斗って呼んでくれ。」

伊津見「分かった、取り敢えず親父さんが何言ってるか聞いてみるわ。」

海斗「意外とあっさ・・・。」

伊津見「待って。」

 何か意味ありげな表情だなと光明はスピーカーの音量を上げた。

黒服「ご主人様、ご足労お疲れ様でございます。」

義弘「いつもの事ながらだが、家からここまでハイハイで動かないといけないのは大変だな。それに苦手なジャージまで着て、毎度毎度ため息が出る。それと君、ここでは理事長と呼べと何度言ったら分かるのかね。」

黒服「はっ、理事長、大変失礼致しました。申し訳ございません。」

義弘「まぁいい、怪しまれないように敢えて一番遠い出入口にしたのは私自身だしな。さぁ、急いで閉めるんだ。」

 黒服が別の壁を開けボタンを押すと、自動で隠し扉が閉まり壁と同化していった。隠し扉がロックされLEDが緑から赤へと変色した、そして義弘たちは理事長室へと向かった。

結愛「どうやらここが家に繋がっているらしいな。」

海斗「でも完全に壁に同化して塞がっているぞ、ここは光明といっつんの出番だな。」

光明「任せろ。」

 光明は伊津見にヘッドフォンを渡すとドローンを動かし始めた、先程黒服が扉を閉めた時に使ったスイッチ付近をコンコンしていく。

伊津見「ん?」

光明「どうした?」

伊津見「少しだけ右に戻ってくれ。」

光明「うん。」

 伊津見はヘッドフォンに集中する。

伊津見「ここだ、ここを開けてくれ。」

 伊津見が言った通り壁を開いていく、すると小さな画面にテンキーが現れた。しかし先程赤く光っていたLEDが完全に消えてしまっている、作戦はコンコンからやり直しとなってしまった。

結愛「親父め・・・、周辺にスイッチを複数個作っているって事か。」

海斗「相変わらず下衆だぜ。」

伊津見「いいよ、俺探すから。」

光明「俺も。」

 光明が周辺の壁をコンコンして伊津見が音を聞き取っていく。

伊津見「ここだ。」

光明「開けるぞ。」

伊津見「光っていないな、次だ。」

 このやり取りを十数回繰り返しやっと・・・。

光明「ビンゴ、ここみたいだな。」

伊津見「耳が痛くなってきたぜ。」

-⑮隠し扉-

 早速2人は見つけたスイッチを使って隠し扉を開ける事にした。パスワード解析装置を使ってパスワードを解析し、テンキーを動かしていく。

「ガチャッ・・・。」

 隠し扉の鍵が開いたようだ、光明の操作でドローンを動かし扉の中へ入っていく。中は暗いので暗視カメラを使用しないと進んでいけなかった。ゆっくりと慎重に前へと進んでいく。光明の隣で画面を凝視する結愛。しばらくすると円状で広々とした空間に出た。

光明「どうだ、見覚えあるか?」

結愛「全くだな。全体がコンクリの壁。こんな空間家では全く見たことねぇ。」

海斗「向こう側にも通路があるらしいな、ここが家に通じているのか?」

光明「とにかく行ってみよう。」

 光明はドローンを慎重に進ませていった、念の為に赤外線スコープを常に作動させていた。奥に奥にどんどん進んでいく、すると一番奥に木製の扉を発見した。周囲には怪しいものは何もないようだった、慎重に扉を開けていく。そっと・・・、そっと・・・。

 中に入ると全体的に洋風の壁の部屋があった。

光明「もしかして・・・。」

結愛「俺たちの家っぽいけどこんな部屋あったか?」

 取り敢えず光明は部屋の天井にドローンをくっつけ隠しカメラの様に部屋を監視していく事にした、愛と海斗は何かを思い出したような表情をしていた。

海斗「そう言えば俺らは立ち入り禁止の部屋がいくつかなかったか?」

結愛「確か1階と2階、4階に1部屋ずつあったな。」

琢磨「お前らん家何階建てだよ。」

海斗「地上5階建てに地下・・・。」

守「地下?!」

結愛「あったか?」

琢磨「知らねーのかよ!」

海斗「地下は無かった。」

橘「無いんかい!何で言ったんだ!」

海斗「いや、たまにはボケとかないと。」

守「空気読め!」

 海斗はそこにいた全員にビンタされた。

海斗「痛(いて)ぇよ、場を和ませてもいいだろ。」

結愛「はいはい、ありがとねー。(棒)」

 全員、ため息をつき呆れ顔をしていた。

 それを横目に光明はドローンを左右に動かしていく、しかし先程開けた木製の扉以外には出入口らしいものは見つからず、ほぼ一面壁のみの部屋となっていた。

光明「しばらく様子を見て義弘が出入りするのを待つしかなさそうだな。」

結愛「娘の俺が言うのもなんだが、親父も手の込んだことするな。」

海斗「多分校舎と同じようにここの出入口も隠し扉じゃねぇのか?」

全員「有り得る・・・。」

 呆れたようなため息が全員からまた出た、もう慣れっこと言うわけだろうか。特に貝塚兄妹は日常茶飯事過ぎてつまらなさそうにしている。

光明「って事は必要なのはあいつの力だな。いっつんには頼ってばっかでもうしわけねぇや、アイツ良い所いっぱいあるから今度ジュースでも奢ってやるかな。」

 光明は鼻息を立てながら伊津見の事を話していた、すると・・・。

伊津見「俺の良い所ってなんだー??」

光明「いっつん?!いたのかよ?!」

伊津見「それよりみつもん、俺の良い所ってなんだよー、教えろよー。」

 伊津見が光明に肘を押し当てながらやたらと聞こうとするので光明は必死に話を逸らそうとしたが結愛や海斗、そして圭が参戦し始めた。

結愛「お前らずっと一緒なんだろ?お互いの良い所全部言ってみなよ。」

海斗「ほらほら。」

圭「皆待ってるよ、えへへへへへへへへへへへへへへへへへ・・・。」

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    -⑯立入禁止部屋- 先程の様なやり取りがあった後、伊津見はしゅんとしながらまたヘッドフォンを付け捜索をし始めた。どうやら光明はあまり良い所を言わなかったようだ、煽った3人も申し訳なさそうな顔をしていた。まさに『気まずい』という言葉がぴったりだった。 トイレから戻って来た光明の表情も同じようなものだった。伊津見「何か・・・、悪かったな。」光明「俺も・・・、すまん。」結愛「というか悪いのは煽った俺達だよな、悪い。」光明「取り敢えず作戦再開だな。」伊津見「うん、また今度飯でも行こう。」光明「そうだ・・・。」伊津見「みつもん、待ってくれ!」光明「ん?」伊津見「微かだがここだけ空気の流れが違う音がしたんだよ。」琢磨「そんなのも聞こえるのか?」光明「コンコンしてみるか。」 光明はドローンで以前の様に壁をコンコンした、すると一部の壁が一瞬だが横に動いた。光明「ん?引き戸か?結愛、開けるぞ。」結愛「うん、頼む。」 光明は隠れていた引き戸を開け部屋から出るようにドローンを動かした、その先には廊下の様なものが広がっている。洋風の壁紙に赤い絨毯が敷かれた床。左右に長いものが目前に広がっていた。海斗「どっちでもいい、ゆっくりと前進してみてくれ。」 ドローンを進めていく光明、深夜だから基本真っ暗なのだが偶に電気が点灯している所を見つけたので中の様子をある程度伺えた。そして大広間っぽい場所にある階段を見つけた瞬間・・・、結愛「すまん光明、ここからさっきの場所に戻れるか?」光明は電灯を頼りに先程の場所に戻ると、結愛「やはりか・・・、ここは1階の『立入禁止部屋』だ。そこに実は扉があるんだが全く動かなかったんだよ、そういう事か・・・。」海斗「畜生・・・、親父にやられたぜ。」橘「じゃあやはり家と学校が繋がっていてここが隠し通路って訳だったんだな。」琢磨「大きく一歩前進したな。」守「でも大切なのはここからだ」圭「進もう。」 光明は慎重にドローンを動かして行った、怪しそうな場所を知るため兄妹に案内をお願いすることにした。明らかに怪しいのは他の階にある立入禁止部屋なのでそれらを捜索していく事にした。まずは2階にある部屋を探すことに。大広間にある大きな階段を上るとまた廊下が広がっていた。そこをゆっくりと進む。奥の一角に階段を見つけた。守「この階段は

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    -⑥心配する必要なかったじゃん- ドーラがどうしてびっくりしているのかを光は理解出来なかった。光「どうしたんですか?」ドーラ「すみません。あの・・・、恐れ入りますが、もう働く必要無いんじゃないですか?」 どうやら身分証を提示した時に銀行残高も見えるらしく、その金額を見て驚いた様だ。ただ、光はそんなに驚くほど持ってないんだけどと思いながらドーラに登録を進める様にお願いした。思ったよりあっさりと終わってしまった。ドーラ「はい、登録が完了しました。こちらがギルドカードです。こちらには魔力により光さんの職歴やお持ちの資格などの情報が登録されています、これを職場での面接時に持っていけば大丈夫ですのでね。」光「ありがとうございます。」 光はギルドを出てゲオルの店のATMにカードを差し込んだ、「残高照会」のボタンを押すとそこには「1京円」の文字がありまた神様の仕業だなと愕然とした。しかし、働かずに過ごしていたら周りの住民に怪しまれる。街中にあるパン屋が従業員を募集していたので一先ずそこで働くことにした。 次は住む家だ、広めの土地を買える財産があるみたいだがやはり怪しまれたくないので一般家庭レベルの土地と一軒家を購入した。その事をネスタに話し、建設が終わり次第引っ越すつもりだという事も伝えた。 数日後、建設が終わったという連絡を受け、引っ越すことにした。この世界に来て間もないから特に大それた荷物がある訳ではないので荷造りにはさほど時間はかからなかった。 出発の時、玄関でネスタが光を待ち構えていた。ネスタ「寂しくなるね、ずっとここにいてくれて良かったのに。」光「いえいえ、そう言う訳にもいきませんので。」ネスタ「また遊びにおいでね。」光「お世話になりました。」 そういうと2人は抱き合い、光は新居へと向かった。 光の家はネスタの家から街を挟んで反対側にあった、特に急ぎの用事もないしパン屋での仕事も明後日からなのでゆっくりできる。なので光はのんびり歩いて行く事にした。空は青く澄んで空気が美味い。 1度ゲオルの店に寄り周りの目を気にしながらATMで支払いの金を下ろした。下ろした金を封筒に入れ、新居へと向かう。 街を抜けて数分歩いたところに新居があり、不動産屋の店主が待ち構えていた。店主「おはようございます、光さんですね?この度はこちらの物件のご購入あり

    最終更新日 : 2025-01-21
  • (改訂版)夜勤族の妄想物語   3. 「異世界ほのぼの日記」⑪~⑮

    -⑪大食いが役に立つ- 店長のラリーは聞き返した、身近に自分の事を大食いと自信満々に言う人がいる訳がないとずっと思っていたからだ。確かに大食いの番組はこの世界にあったりはするがそれもやらせやはったりの塊なのだろう、1人の人間が本当にあれだけの量を食べてしまう事を信じる事が出来なかった。 しかし、目の前の新人従業員は出来ると言い張っているのだ、よしそう言うなら試してやろう。丁度売れ残りのパンがかき集めたものがあったはずだ。ラリー「光・・・、そんなに言うなら俺が作った大食いメニュー、やってみるかい?」ローレン「店長、ウチそんなの無かっただろう、あたしゃここ長いけど見たことないよ。」ウェイン「まさかあの堅くなりかけてるパンを出すのか?」ラリー「ああ・・・、ただそのままでは出さない。これも以前から考えてた新作だ。無駄になりそうな食い物を可能な限り減らす方法を探してたんだ。折角だ、試しにやってみるさ。ウェイン、すまんが手伝ってくれ。光、食えなくても別に罰はない。こっちは一応売れ残りを出すんだからな、逆にもしも食えたら給料2倍だ。約束しよう。」ウェイン「ああ・・・、やってやるさ・・・。」 給料2倍・・・、別に金に困っている訳ではないけど(光の口座には1京円入っているため)、良い響きだ、心がうずうずしてくる。それに失敗しても何も問題なし、そんなの断る理由がどこにあるのだろうか!!!光「店長・・・、今すぐ持ってきて下さい!!!」 ラリーはその声を皮切りに厨房へと駆け込んで行き調理を始めていった、売れ残ったパンを細かく刻んでいく。その作業をウェインに任せると自分は大量のホワイトソースを作って行った。 刻んだパンをバターを塗った大きなグラタン皿に盛り、鶏もも肉の切り身やベーコンをラリー特製のホワイトソースやチーズをこれでもかと言わんばかりにかける。 最後にオーブンで焼いて大きなグラタンが完成した。ラリー・ウェイン「出来たぞ!!!食えるもんなら食ってみろ!!!」 直前まで通常通り接客の仕事を行っていた光を呼び出し光の前に出来立て熱々を提供した、店も丁度午前中の営業時間を終えたところだったので店にいた全員が光を見守った。光「いっただっきまーす!!!」 光は嬉しそうな顔で食べ始めた、熱々のグラタンが口の中に運ばれていく。光「おーいしいー!!!あっ、鶏肉とベ

    最終更新日 : 2025-01-21
  • (改訂版)夜勤族の妄想物語   3. 「異世界ほのぼの日記」⑯~⑳

    -⑯林田と光の記憶- 林田は深くため息を吐き語りだした。林田「私が新人警官の頃です、その頃警察署長をしていた先輩と暴走族の摘発を行ったんです。日本のとある山で警察に協力的な2台の走り屋と共に暴走族を追い込んで逮捕した事があったんです、その2台のうち1台が赤いスポーツカーに乗った当時・・・。」光「『赤鬼』って呼ばれていたんですよね。」 林田は驚いていた、まさかと思っていた事が事実だと発覚し始めたので驚愕していた。ネスタは3人分の皿を洗っていたが手を止めて聞いていた。光「今は事情があって別姓を名乗っていますが、私は『赤鬼』と呼ばれていた走り屋、赤江 渚(あかえ なぎさ)の娘です。生まれる前に父を亡くし女手一つで育てられた私は母とよく夜の峠を攻めていました。ただ、本能のままにではなく警察署長に依頼されてでした。当時、様々な峠で違法な暴走族や走り屋の摘発に協力していた母は私を連れ2台で警官のいる場所まで犯人たちを追い込んで逮捕するまでを見届けていました。ある日、いつも通り警察署長の依頼で走っていたら車の整備不良が原因でコーナーを曲がり切れず峠から車ごと落ちて亡くなりました。母の車は無残に潰れ、母は即死だったそうです、あの車は決して裕福とは言えなかったのに必死にお金を貯めてくれた母からの最初で最後の贈り物で形見なんです。 あの日も私は母の遺志を継ぎ警察署長の依頼を受け夜の峠を攻める予定でしたが昼間に熱中症で倒れそのまま亡くなり、この世界に転生してきたんです。その時にあの車を持ってきて地下に格納しました。」(※『赤江 渚』については私の「私の秘密」をご参照ください、作者より。) 人の死に直面した時の話は涙なしに聞けないと言わんばかりに林田は涙を流しながら光の過去の話に聞き入り流れる涙を右手で拭い重い口を開いた。林田「そんな事があったんですね・・・、後ほどお母様の御仏壇に手を合わせてもよろしいでしょうか。」光「勿論、ありがとうございます。それと・・・。」林田「捜査へのご協力感謝します、ただ無理はなさらないでください。明日日時が決まればまたご連絡いたします。」 林田夫婦は渚の仏壇に手を合わせた。その後ネスタと光は家庭菜園で水やりをし、林田は携帯で先程の話をこの国の警察署長に話していた、そして光が操作に協力してくれるという事も。 電話の向こうで警察署長は涙を

    最終更新日 : 2025-01-21
  • (改訂版)夜勤族の妄想物語   3. 「異世界ほのぼの日記」㉑~㉕

    -㉑苦労はしているのだろうか- 光がサンプルを見て選んでいる間に一瞬でゲオルが髪型を変えてしまったので、光は開いた口が塞がらなかった。流石リッチと言うべきなのだろうか。しかし、光には疑問が浮上した。光「リッチという事は・・・、アンデッド・・・、死んでるんですか?」 何処からどう見ても人間と変わりなく見えるので違和感を感じていた、これは光の勝手なイメージなのだがアンデッド(死者)なのでリッチも全体的に骸骨っぽい見た目と思っていたのだ。しかし、ゲオルは生きている普通の人間と変わらない見た目をしている。ゲオル「やっぱりそう思います?そうですよね、よく言われます。」 ゲオルは笑顔で答えていた、でも生きるため(?)に苦労をしていそうな感じもした。ゲオルは人気のない裏道に光を連れて行った、何をされるのだろうか。ゲオル「引かないで・・・、下さいね。」 ゲオルが魔術を解くとイメージ通りの姿をしたリッチが現れた、そして次の瞬間には元のゲオルの姿に戻っていた。ゲオル「特に満月の日苦労するんです、人間の姿を維持するの。一応魔法で膜張ってガードしているんですが満月の光を浴びるとどうしても元の姿に戻ってしまうんですよね。」光「アンデッドの方々がそうなるんですか?」 他にも身近に苦労している人もいるのだろうかと心配になってしまった。 満月と言えば狼男だろうか、これも光のイメージだが月夜の晩や丸い物を見てしまった時に凶暴な狼に変貌してしまう。 そして逆に夜の世界にしか生きることが出来ない者もいるはずだ、吸血鬼とか。その質問をゲオルにぶつけてみた。ゲオル「そうですね・・・、まあ取り敢えずお茶でも飲みながら話しますか。」 2人はカフェに移動して話すことにした、確かに男女が人気のない暗がりで話していたら怪しまれてもおかしくない。ゲオル「まずはヴァンパイア、吸血鬼ですね。最近の彼らは昼間でも普通に動けるみたいです、しかも人間の生き血を欲しがりません。オレンジやトマトを使ったジュースやチューハイが好きらしいです。確か・・・、新聞屋のナル君がそうだったかと。」光「適応しすぎでしょ・・・。今度呑みにでも誘ってみよう。」ゲオル「そして人狼・・・、ウェアウルフですね。最近は凶暴化の力が弱まっていると聞きます。それに最近は純粋な者はあまりおらず、人間とのハーフが殆どだそうですよ。

    最終更新日 : 2025-01-21

最新チャプター

  • (改訂版)夜勤族の妄想物語   3. 「異世界ほのぼの日記」96~100 番外編

    -96 ご飯のお供②- 温かな朴葉味噌を熱々の白米に少しずつ乗せご飯を楽しむ一同、そんな中林田が懐で何かをごそごそと探し始めた。林田「次は私がご紹介させて頂いて宜しいでしょうか、ゲオルさんのお店でこれを売ってたので助かりました。」 林田は懐から小瓶を取り出すと嬉しそうに中身を自ら用意した小皿に出した、誰もが食べた事があるであろうメンマの「やわらぎ」だ。林田「そのまま食べても美味しいのですが、これを胡瓜キムチと混ぜても食感が良くてご飯にピッタリなんです。」 小皿とは別に少し大きめの器を用意し、胡瓜キムチとやわらぎを混ぜて振舞った。シャキシャキの胡瓜と柔らかなメンマがバランスよく混ざっている。メンマに和えられた辣油が味のアクセントになってご飯を誘い、それにより光と結愛はずっと箸が止まらなかった。結愛「アクセントの辣油がキムチの味を引き立てていますね、今日ご飯足りますか?」光「一応2升は用意しているんですが追加注文しないとダメかもしれませんね。」 光と結愛、そして羽田や林田のご飯のお供の時点で用意をしていた半分の1升が無くなろうとしていたので実は焦っていた。念の為、今現在もう半分の1升をお釜で炊いている状況だが無くなるのも時間の問題だろうか。林田のやわらぎ入り胡瓜キムチの出現は一同にとって大きかった、光は『瞬間移動』を利用して地下の貯蔵庫から追加の米を持って来る事にした。念の為に2升程追加を用意し、食事に戻った。 すると、家の入口の辺りから聞き覚えのある男性の声がした。男性「林田さん、林田さん?いらっしゃいますか?来ましたよー。」 その声に返事をする林田、ただ口の中には米が残っている。林田「ああ・・・、待って・・・、ましたよ・・・。裏・・・、庭に・・・、どうぞ・・・。」光「あれ?どなたか呼んだんですか?」林田「ごくん・・・、失礼しました。光さんもお会いした方ですよ。」男性「こんにちは、お久しぶりです。」 優しい笑顔で見覚えのある男性が裏庭に入って来た、この異世界で車を購入したお店の店主・珠洲田だ。珠洲田「光さん、お久しぶりですね。林田さんにご招待を頂きまして来させていただきました。私も皆さんと一緒でご飯が大好きなんです。」光「お久しぶりです、レースの映像でお見かけしましたよ。」珠洲田「これはこれはお恥ずかしい、まさか見られていたとは

  • (改訂版)夜勤族の妄想物語   3. 「異世界ほのぼの日記」91~95

    -91 空からの来客- 宴が続く中、月の輝く星空から大声が響き一同を騒然とさせた。声「この私を差し置いて、皆さんだけでお楽しみとは何事ですか?」光「な・・・、何?!」 全員が飲食をやめ空を見上げた、見覚えのある1頭のコッカトリスが3人のホークマンを連れて地上へとゆっくりと舞い降りた。背には軽装の男性が2人乗っている、林田が逃げる様にして家の中へと駆けこむ。林田「ま・・・、まずい・・・。誘うの忘れていた。」 舞い降りたコッカトリスが背に乗っていた2人を降ろし人の姿へと変わる、ダンラルタ国王であるデカルトだ。横にはホークマンである甥っ子と姪っ子が3人共揃ってお出まししている。姪っ子が背から降りた男性と軽くキスを交わす。甥っ子達はウェアウルフと取り皿を持ち、焼肉を取りに行こうとしていた。デカルト「2人も乗せていたから疲れましたよ、と言うかのっちはどこですか?」ネスタ「のっち・・・?ああ、ウチの旦那ですね。さっき家の方に走って行きましたよ。」デカルト「奥さん、かしこまらないで下さい。我々はもう友達ではないですか。」林田「そう仰って下さると助かります!!」デカルト「またそうやってかしこまる、やめろと言っただろのっちー。」林田「人前だから、それにのっちはダメだって。」 2人のやり取りを数人の女性がヒヤヒヤしながら聞いていた、1国の王に何たる態度を取っているのだと言わんばかりに。その内の1人であるドーラが質問した。ドーラ「お義父さんと国王様、いつの間にそんな関係に?」デカルト「これはこれはいつぞやの受付嬢さんではありませんか?まさかのっちの娘さんだったとはね。」林田「たった今俺の息子と結婚したんだよ、だから義理の娘ね。」 横から聞き覚えのある女性が口の中で黒毛和牛をモグモグさせながら声を挟んだ、その声には光も懐かしさを感じている。女性「じゃあ私達と一緒で新婚さんって訳だ。」 声の正体は先程キスを交わした女性ホークマン・キェルダだ。光「キェルダ!!久しぶりじゃない!!」キェルダ「ついさっき新婚旅行から帰って来たのよ。」光「えらく長めの新婚旅行だったのね。」キェルダ「あんたは暫く仕事を休める位稼いだみたいじゃない。」光「流石、言ってくれるじゃん。」2人「あはは・・・。」 2人が談笑している中、バルタンの兄・ウェインとホークマンの弟

  • (改訂版)夜勤族の妄想物語   3. 「異世界ほのぼの日記」86~90

    -86 超新鮮で大胆なBBQ- ガイの軽トラで1頭買いした黒毛和牛を林田家の裏庭へと運ぶと、今か今かと待つ人々が歓声を上げていた。その中には光が招待した結愛社長もいる、現場には大きなまな板と綺麗な包丁などが並べられ解体の準備がされていた。 丁度その頃、焼き肉屋の御厨板長と板前をしているウェアタイガーのヤンチが到着した。御厨「今夜はご招待頂きありがとうございます、ただ私達も召し上がって宜しいのでしょうか。」光「勿論です、お2人も楽しんで行って下さいね。」ヤンチ「さてと・・・、早速解体していきますか。」女性達「私達も是非手伝わせて貰おうかね。」 声の方向に振り向くとエプロン姿をしたネスタ林田、そしてまさかの貝塚結愛がいた。ヤンチ「お2人さん・・・、本気ですか?」ネスタ「あら、私はドワーフだよ。舐めて貰っては困るね。」 昔からドワーフの一族は身のために色々な技術を何でも習得するという伝統があった、牛肉の解体技術もその1つだ。ヤンチ「でも何で社長さんまで?」結愛「実は私も見分を広げる為にドワーフの方々から勉強させて頂いているんです、牛肉の解体もその1つです。」ネスタ「では早速やりますかね。」 鮮やかな手つきで3人が解体を進めていく。骨と骨の間に包丁を入れていき、スルッと肉が剥がされていった。結愛「さてと・・・、最初から贅沢に行きましょうか。鞍下、肩ロースです。丸々1本だからとても大きいでしょう。」光「涎が出てきちゃってるよ、早く食べたいな。」御厨「さぁ、焼肉にしていきましょうか。」 結愛から受け取った大きな塊を御厨が丁寧に肉磨きと整形をして焼肉の形へと切っていく。20kgもの塊が沢山の焼肉へと変身した。御厨「では、焼いていきましょう。ヤンチ、すまんが整形を頼む。」ヤンチ「あいよ、プロが2人もいるから解体は大丈夫そうですもん。」 御厨が炭火の網の上に肉を乗せ焼いていった、そこら中にいい香りが広がる。光「この匂いだけでビールが行けちゃいそう。」御厨「さぁ、焼けましたよ。塩と山葵でお召し上がり下さい。購入されたご本人からどうぞ。」光「塩と山葵がお肉の甘みを引き立てて美味しい!!」 光がビールを一気に煽る、何とも幸せそうだ。作業中の結愛やネスタ、そして焼き肉屋の2人にも振舞う。結愛「たまりませんね、ビールが美味しい。」光「今日

  • (改訂版)夜勤族の妄想物語   3. 「異世界ほのぼの日記」81~85

    -81 集合- 魔学校長のマイヤは林田を許し、早速持ち帰った映像やマイヤの発言が証拠として使えるかを皆で確認しようと提案した。光明「まずはこちらをご覧ください。」 マイヤが義弘と思われる覆面男に催眠術を掛けられた場面だ、催眠術を掛けられマイヤが自らの手で書類を書き換えたあの場面。マイヤ「ノームを含む私達アーク・エルフの一族は催眠術に強い特殊スキルを祖先からの遺伝で持っているのですが、まさかその長たる私が・・・。」ドーラ「じいちゃん・・・、思い出したくないなら無理に思い出さなくていいよ。」マイヤ「いや、良いんだ。捜査に・・・、いやノームの仕事に協力出来るなら喜んでやるよ。」 映像内で書類を書き換えた後、マイヤがぐっすりと眠っているのが何よりの証拠だ。 次に鏡台にあったもう一つのカメラで撮影した映像を再生した。光明「これはマイヤさんが鏡台に仕掛けてあるもう一台の監視カメラの映像です、少し音が小さいので最初の映像から音声を抜粋してありますが勿論同時刻に同じ場所で撮影された物ですので問題は無いかと。」 暑さが故に義弘が覆面を取った場面を再生した。結愛「義弘が・・・、あれ程の魔力を・・・。」林田「しかし、いつの間に魔力を得て催眠術の修業を行ったのでしょうか。」マイヤ「原因はリンガルスにあると思われます、きっと短期間ではありますがリンガルスの下で修業したからだと思われます。また、無理矢理な方法で魔力を引き出したのかと。」結愛「しかし・・・、ただの魔学校の職員がどうして?」マイヤ「理事長、恐れながら申し上げます。リンガルスは大賢者なのです!!」林田・ドーラ・結愛「大賢者?!」結愛「・・・、って何ですか?」羽田「これがデジャヴってやつですか?」光明「以前にもあったんですね・・・。」 確かに以前にもあった会話だ、ただ重要なのはそこだけではない。義弘が大賢者の力を得たのはマイヤに催眠術を掛ける為だけなのだろうか。光明「そう言えば、レースの方は?」林田「テレビをつけますね。ただ・・・、爆弾処理の方が心配ですね。」男性「それなら安心して下せぇ。」林田「その声は・・・。」 林田が聞き覚えがある声に振り向くとそこには結愛や利通と共に競馬場に仕掛けられた爆弾の処理に向かったダンラルタ王国警察の爆弾処理班がいた。プニ「おやっさん、安心して下さい

  • (改訂版)夜勤族の妄想物語   3. 「異世界ほのぼの日記」76~80

    -76 リンガルス- パルライは羽田からSDカードを受け取るとカメラに挿入しより強力な魔力を込め始めた。羽田「あの・・・、パルライさん?」デカルト「パルライはネクロマンサー、リッチの下で修業した魔法使いなんです。ネフェテルサ王国の警察署には今彼の師匠も来ているのですよ。」 そうこうしているうちにパルライが作業を終え、一息ついた。パルライ「よしっ・・・、終わりました。見てみましょう。」 カメラの小さい映像を3人の大人が凝視する。3人「こ・・・、これは・・・。」 映像では黒い覆面をしたリンガルスと思われる人物がパソコンで何かを編集している。デカルト「拡大出来たらな・・・。」パルライ「やってみますか。」 パルライが魔力を込め、パソコンの映像がくっきりと見えるまで拡大した。「首席入学者」の文字の下にある「梶岡浩章」の文字を消して「リラン・クァーデン」に変更していた。パルライ「確定ですね。」デカルト「待て、どこかへ向かうぞ。」 覆面男は書類を印刷してそそくさとパソコンの電源を切ると部屋を出た。羽田「この建物には魔学校長の部屋があったはずです、それと主要警備室。」パルライ「そこに行きましょう。」 3人はパルライの魔法で主要警備室に『瞬間移動』するとそこには警備員が3名いたのだが全員眠ってしまっていたので羽田が慌ててたたき起こした。羽田「しっかりしろ、警備はどうしたんだ!!」警備員「えっ・・・?痛た・・・、羽田さんじゃないですか。どうしてここに?」羽田「首席入学者が何者かによって改ざんされてんだよ、しかもただ事じゃない!!首謀者の1人が義弘なんだよ!!」警備員「何ですって?!大変じゃないですか!!ただ俺達は覆面をしていた奴が後ろから近づいてきてからどうやらずっと眠ってしまっていたらしく、記憶が無いのです。」 こっそりと『審議判定』の魔法を使用していたパルライが首を縦に振る。パルライ「本当の事を言っている様です。警備員さん、恐れ入りますが少し場所を開けて頂けませんでしょうか。」警備員「あの・・・、失礼ですがどちら様ですか?」羽田「バルファイ王国とダンラルタ王国の国王様方だ。」警備員「申し訳ございません!!どうぞ!!」パルライ「そ・・・、そんな身構えないで下さい。堅苦しいの苦手ですので。では、やりますよ。」 パルライが魔力を流

  • (改訂版)夜勤族の妄想物語   3. 「異世界ほのぼの日記」71~75

    -71 捜査が続く中- 林田の『連絡』による電話に驚きを隠せない刑務所長に林田が質問した。刑務所長(電話)「都市伝説の通り・・・。」林田「今はそんな事言っている場合じゃない、お前の所に貝塚義弘がいただろ。パワハラ等で捕まった貝塚だ。」刑務所長「あいつなら逮捕された次の日に重岡とかいう投資家が保釈金を払って速攻出て行ったじゃないか、全国でニュースになっていたぜ。」 林田がただ度忘れしていたのだが、刑務所長が改めて言うには義弘の指示で保釈金を支払った重岡が車で義弘を県外の山奥に連れて行くとそこからは2人とも音信不通となったとの事で、新たな悪だくみを行っていた可能性があった。そこで結愛と光明、そして羽田を含む多くの黒服達が突然消えたと聞き、何らかの方法で追って来たかもしれない。林田「因みに結愛さんはどうやってこの世界に?それとここに来てからはどうやって?」結愛(無線)「これも数年前の話です、日本で忙しくしていた私が久々のゆったりとした休日を光明と楽しんでいた時、突然私たちの目の前に幻覚の様な竜巻が現れてそこにいた全員が吹き飛ばされたんです。そのあと目が覚めたらこの世界に。『作成』のスキルもその時知りました、それから少しの間バルファイ王国にある魔学校に通いながらこの世界の事を少しずつ調べて行ったんです。それから貝塚財閥の教育支援の一環として『転送』で持って来た財産の1部を寄付してネフェテルサ王国の孤児院を貝塚学園の小分校に、またバルファイ王国の魔学校を高等魔学校と貝塚財閥の支社にさせて頂いているのです。因みにレースの収益でダンラルタ王国に分校を建設する予定でした。」林田「なるほど、それは我々にも学園を守る義務がありますね。」 その守るべき学園に義弘の魔の手が触れようとしているかもしれない、それは流石に防がなければならない。 その頃、未だトップが⑨番車のまま遂に100周目を迎えようとしているレース場の脇にあるとある施設でバルファイ王国軍の将軍達がひっそりと1人過ごしていた国王を説得していた。バルファイ王国にあるホームストレート横には国王本人が自らの分身を忍ばせていた、分身と言えど思考等が本人とそのまま繋がっているので各々の場所に国王のオリジナルが存在している様な状態となっている。ただ分身は空の鎧に魂を魔力でくっつけているだけのもので、それが仮の姿として一

  • (改訂版)夜勤族の妄想物語   3. 「異世界ほのぼの日記」66~70

    -66 一方で- 恋人たちが現場に戻って来たのはプニ達が爆弾を『処理』し終えてから十数分経過してからの事だった。2人は口の周りが不自然に明るく光り表情が少し赤くなっている、髪が少し乱れているのは言うまでもない。プニ「お前ら・・・、ううむ・・・。」 プニは仕事を再開すべきだと気持ちを押し殺した、何をしていたかだなんて正直想像もしたくない。 ただ林田警部が無線の向こうで呆れ顔になってしまっているのは確かだ、幸いケルベロスやレッドドラゴン達は気付いていないらしくその場を何としても納めなくてはと冷静に対処する事にした。 プニの無線機から林田警部の声が聞こえる、どうやら恋人たちは無線機の電源を切っていたらしい。林田(無線)「利通君・・・、そしてノーム君・・・、君らが無線機の電源を切ってまで2人きりになりたい気持ちは私も大人だから分からんでもないが・・・。」ドーラ「そんな・・・、照れるじゃないですか。」林田(無線)「ぶっ・・・。」 ドーラが林田に何をしたかはその場の全員が分からなかったが何かしらの攻撃がなされたらしい、多分ビンタに近い物だろう。取り敢えず林田は偶然を装う事にした、どう頑張ってもドーラが何かをした証拠が見つからないのだ。林田(無線)「失礼・・・。さてと、爆弾の方はどうなっているかね?」ドーラ「お父さ・・・、いや警部、1つがコインロッカーの中に見つかりました。爆弾処理班の方々によるとまだ複数個隠されているかとの事です。」林田(無線)「ノーム君・・・、まさかこの言葉を言う事になるとは思わなかったが、君にお父さんと呼ばれる筋合いは無いよ。取り敢えず見つかった爆弾はどうしたのかね?」利通「えっと・・・。」プニ「見つけた1個は俺達で処理したっす。」ケルベロス①「ただ競馬場内から爆弾の匂いがプンプンしますぜ、林田の旦那。」 相変わらずのキャラを保っているが仕事はしっかりと行っているので文句は言わないでおくことにした、別の者達には日を改めて。 一方、銃刀法違反の現行犯で逮捕した犯人をネフェテルサ王国の警察署に巡査が輸送し、それに合わせ警備本部にいた林田警部が一時的に署に戻り取り調べを行った。犯人によると自分は金で雇われただけだと言う、真犯人からは電話での指示を受けていたが非通知での着信だった為番号は知らないそうだ。そして分かった事がもう1つ、

  • (改訂版)夜勤族の妄想物語   3.「異世界ほのぼの日記」61~65

    -61 昨日の敵は今日の友と言うが- 3位グループの3台は今までずっと共に走っていた為か、いつの間にか絆が生まれていた。④ドライバー「お前ら、大丈夫か?!悪かった!怪我してないか?!」⑫ドライバー「こちらこそ悪い・・・、あそこで俺が無理に妨害していなかったら・・・。⑧番車の野郎は・・・、無・・・。」⑧ドライバー「野郎じゃないわよ、失礼ね。」⑫ドライバー「そうか・・・、悪かった。怪我は無いか?」⑧ドライバー「私は大丈夫、とりあえずレースの邪魔にならない様に端に避けていましょう、奇跡的にも1台が通れる位の空間は空いてるみたいだからレースに問題は無いと思うわ。」⑫ドライバー「とにかく怪我が無かったらそれでいい、レースはまたの機会に参加すればいいさ。とりあえず端に・・・。」 どこかで会話を聞いていたのか実況のカバーサが一言。カバーサ「お2人さん、良い雰囲気ですがレース自体は一時的に予備のルートを使って続行していますのでご心配なく。」⑧ドライバー「そうなの?・・・って、アンタどこで聞いてんのよ!!」 ⑧番車のドライバーに追及されるとカバーサは慌てて胡麻化した。カバーサ「おや、1匹のコッカトリスが車番プレートを両手に持って自らコース飛んでますよ。えっと・・・、こちらは④番車のドライバーさんですか?」④ドライバー「俺は・・・、死んだ⑧番と俺を気遣ってくれた⑫番の為に・・・、それと自分達の為に完走だけでもするんだ・・・!!」⑧ドライバー「失礼ね、私まだ死んでないわよ!!」 ⑧番車のドライバーによる適格なツッコミにより一瞬会場は湧いたがレースの主催者から通達が出たのでカバーサが伝えた。カバーサ「えっと・・・、④番さん・・・、気合には皆が感動していますがお車で走っていませんので事故での失格は取り消されませんよ」④ドライバー「えっ・・・。」カバーサ「だから言ってるでしょ、あなた失格。今すぐコースから立ち退かないと私が自らピー(自粛)しますよ。」④ドライバー「は・・・、はいー・・・。」 ④番車のドライバーは諦めて地上に降り立つと人間の姿に戻ってから徒歩で戻って行った、背中にはとても哀愁を感じるが少し震えてもいた。カバーサ「まぁどう考えても距離的に無理なんですけどね、本人自ら立ち退いて下さったので良しとしましょう。あ、くれぐれも私は脅してませんので

  • (改訂版)夜勤族の妄想物語   3.「異世界ほのぼの日記」56~60

    -56 レース開始直前だが- 光は出走表の場所をナルリスに聞き車券を購入しに向かっていた、まるで国民の祝日の様に老若男女が右往左往していて大混雑している。 先程1杯呑んだビールの影響か光はトイレに行きたくなったので車券売り場への道中で探すことにした。 トイレは意外過ぎるほど早く見つかり全く混雑していなかったので光はすぐに駆け込み用を済ませた。 トイレを出て車券売り場を目指す、ぷらぷらと歩いているとふんわりと優しい香りがして来たので近くを通った時少し寄ってみるかと意気込んだ。 何軒か日本に似た食べ物屋の屋台が出ている様でその内の1軒を覗いてみる事にした。光「『龍(たつ)の鱗(うろこ)』ね・・・、こんな名前の店あったかな。」 ただ一際行列が目立っており、その上光を誘った香りがその屋台からだったので光は一切迷う事無く飛び込んだ。 店の中では皆が一心不乱に丼に入った麺を啜っている。店主「いらっしゃいませ、お一人様ですか?お好きなお席へどうぞ。」 どうやらここはラーメン屋さんの屋台のようだ。他のお客さんが食べているラーメンはスープが綺麗に透き通った金色のもので、細麺。トッピングはカイワレ大根と何かを揚げているチップスらしい。(※作者が大好きなラーメンの1つです、店名は変えてますが。) カウンターにお品書きがあったのでチラリと見てみると「鯛塩ラーメン」の文字がある。光「『魚介ベースのスープで鯛の皮のチップスをトッピングした美味しいラーメンです』・・・か。」店主「お決まりですか?」光「あっ、鯛塩ラーメンをお願いします。」店主「少々お待ちください。」 屋台の隅に探していた出走表をみつけた。光「出走表頂いてもいいですか?」店主「勿論どうぞ、ラーメンが出来るまでゆっくり予想していて下さいね。」光「助かります。」 光は店の隅に行き出走表を1枚取って席に戻った、①~㉑までの車番の横にチーム名やホームストレートで行われた予選の計測タイム、スタートポジション等が書かれていた。光「確かポールポジション取った⑰ブルーボアが1番人気で、18kmのホームストレートはダントツ、ただガソリンの積載量が比較的少ない気がするな・・・。」 ピットでの給油は認められているがピットストップの回数が多いとその分逆転を許してしまう可能性が大きくなる。光「コーナリングの図を

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