-⑧常識とは- 銃弾による殺人事件が発生した当日も通常通り授業が行われ何もなかったかのような静寂に包まれていた。しかし、生徒は全員不信感を抱いている。圭「不自然じゃない??殺人事件まで起こりだしているのにPTAや教育委員会、下手したら報道陣まで動き出してもおかしくない状況で世間が全く動いてないなんてさ。」 守「携帯のニュースはどうなっているんだろう。」 皆おもむろに懐から携帯電話を取り出したが、全員のものに異変が起きていた。授業が始まる前までは普通に使えたのに全員の携帯が圏外の状態になっていた。その時1年4組の方向から伊津見の大声が響いた。伊津見「皆、大変だ!!出入口のドアが全く開かねえし、鍵が壊されて動かねえ!! 琢磨「嘘だろ!!」 橘「それどころじゃねぇよ、外見てみろって!!」 全員「なんだありゃ?!」 校庭全体が高い塀で囲まれていて学校ではなく刑務所の状態になってしまっている。生徒全員が絶望感を感じているとき校内放送が流れた、義弘だ。義弘「えー、皆さん、おはようございます。今日から皆さんのクラスは校内講師陣による摸試の結果で選考していきます。説明が遅れましたが、最下位のDクラスである4組は急遽たる学力の向上が必要とされる生徒の集まりですので早朝の補習に遅刻しますと先程の様に銃弾による制裁が加えられますので4組の生徒は学力を上げて他のクラスに這い上がって、逆に他のクラスは4組に落ちず今の状態を維持できるように勉強に励んで下さい。またより一層勉強に集中して頂くために皆さんの携帯電話は特殊な妨害電波にて一斉に圏外とさせて頂きました。また外部からの遮断を強めるべく校舎の出入口を完全に閉め切り、校庭全体を高い壁で囲わせて頂きました。先生方は特殊な鍵を渡していますので出入り自由となりますが、生徒の皆さんは出入りが出来なくなります。これからは大学に合格して卒業するまでこの校舎で寝泊まりして勉強に励んで頂きます。くれぐれもその覚悟の上でお願い申し上げます。」 琢磨「合格するまで一生この中かよ・・・、俺たちは受刑者じゃねぇんだぞ、この服装もそうだけどよ。」 守「結愛、お前はどうなんだ?鍵とか携帯電話はどうなってる??」 結愛「皆と一緒だ、携帯は圏外だし鍵も持ってねぇ、いよいよ親父の顔をまともに見えなくなってきたな・・・。」 橘「さすがにこのままだとま
-⑨隠密作戦- 守たちはまず必要となる情報を得るために隠密作戦を開始した、第一として先生達が使用する出入口を知らなければならない。その作戦を実行するのに3組の伊達光明(だて みつあき)が名乗り出た。光明「守、琢磨、久しぶりだな。今回の作戦俺に任せてくれ。」 守「久しぶり、でも良いのかよ、責任転嫁してるみたいで悪いよ。」 琢磨「一人に押し付けるのはな・・・。」 光明「大丈夫だって、俺を誰だと思ってんだよ・・・。」 守「確かに信用はしてるぜ。」 圭「ねぇ、伊達君ってもしかして・・・。」 琢磨「忍者の末裔か?って聞きたいんだろ、残念でした。光明はな小型の隠しカメラ作りとハッキングが得意なんだ。」(※ハッキングは犯罪です、駄目、ゼッタイ!!) 光明「ノートパソコンとカメラを隠し持っといて正解だったよ、役に立つ時がくるたぁな。」 守「とりあえずそれをどうするんだ?」 光明「各所各所に仕掛ける、それと校内の使用可能なカメラの映像がこのパソコンに映るようにする。」 結愛「あ・・・、確か・・・。」 光明「どうした??」 結愛「監視カメラは俺が先にいじって同じ映像がずっと映るように改造しちゃってよ・・・。」 光明「大丈夫だ、何とかしてみるよ。後何人か協力をお願いしたいんだが。」 琢磨「どうした。」 光明「俺の指先にあるこの超小型カメラを壁の境目とかに張り付けて欲しいんだ。」 守「分かった、俺たちに任せてくれ。」 光明「一応、パソコンからカメラを映像を見ながら指示を出す、念の為にこの無線機を身に着けて欲しい。」 守たちは光明からカメラと無線機を受け取ると1階にある出入口の各所に散らばった、小型すぎて分かりづらいので大切にケースに入っている。結愛「ただ嫌な予感がする、これを掛けてくれ。」 結愛はどうやって持ち込んだのか懐や自分のロッカーから赤外線スコープを取り出した。守、圭、琢磨、橘、海斗、そして結愛がそれを掛け真っ暗な深夜の1階へと向かった。 階段を降りて真っ暗な1階に到着し、全員赤外線スコープを掛けた。どうやら結愛の嫌な予感は当たったらしい、赤外線がそこら中をうごめいていた。守はノートの切れ端を丸めそれをわざと赤外線にぶつけた。「ガチャン」 出入口の手前辺りにぽっかりと落とし穴が開いた。守「セーフ・・・。」 守は一息つき落とし穴
-⑩理事長室- パスワード解析装置のおかげで理事長室への侵入は容易であった。勿論、深夜の侵入である。結愛は装置を懐に入れて部屋に入って行った。義弘の理事長室は他の学校と同じくお洒落なお部屋が広がっていた。結愛と海斗は持ち込んだ赤外線スコープを掛け調査を始めた。本棚からデスクなど怪しそうな物が立ち並ぶ。指紋を付ける訳には行かないので手袋を付けての創作となった。中央のテーブルの裏などを隈なく調べていった。 海斗がデスク裏で引き出しを少し動かすと怪しげな赤っぽいボタンを発見した。恐る恐るボタンを押す。赤外線センサーが解除された後に物音がした。「ガコッ・・・!」 すると中央のテーブルが少し引っ込み2つに割れ、下に続く階段がお目見えした。2人はゆっくりと降りていく。しかし数段降りた後海斗が床のトリモチに気付いた。海斗「結愛、逃げるぞ!!」 2つに割れていたテーブルが段々と閉まろうとしていた所をギリギリで脱出した。結愛「取り敢えず、赤外線センサーの解除スイッチを見つけただけでもマシだな、少しずつ調べていくしかないようだな。」 その時、外がバタバタと騒ぎ出した。黒服だ。一斉に校舎内に散らばり理事長室に侵入した人間を探そうとしていた。両手にはピストルを持ち、銃撃する準備は万端だ。理事長室にはその内2人が残っている。 2人は一旦退陣する事にした。黒服が窓の外を見た瞬間に椅子やテーブルの陰に隠れながら理事長室の出口を目指す。思ったより簡単に二人は脱出に成功した。海斗「あいつら、馬鹿だな。」 結愛「どんくせぇ。」 二人は教室に走って行った。 一方、光明は各フロアの出入口のカメラからの映像をやや早送り気味でチェックしていった。でないと何個も何個も出入口があるこの学校の映像を全て見えない、ただ一人では不可能なので守と圭を誘うことにした。長時間見続けなければならなくなるが一瞬も見逃せない。守「でも何で俺達なんだよ、光明。」 光明「すぐ隣にいたから。」 守「某有名アルピニストか・・・、まあいいか。」 光明「座布団没収。」 守「やめんか、ケツが痛くなるだろうが。」 光明の笑えない冗談のお陰で少し場が和んだので守と圭は光明に感謝したその場に結愛と海斗がやって来た。結愛「ちょっといいか?」 守「ん?」 海斗「実は理事長室に隠しスイッチを見つけたんだ、ただ
-⑪謝罪と協力- 以前結愛が改造した校舎各所に元から設置された監視カメラのハッキングに光明が成功したとの連絡が入ったので海斗と結愛は深夜光明の元へ向かった、兄妹も光明も同様の可能性を示唆していたのだ。念のため、結愛が光明に持ち掛けていた。-数時間前-結愛「光明、ちょっといいか?」 光明「ん?」 結愛「俺も兄貴も考えてたんだけどな。」 光明「うん。」 結愛「理事長室や出入口付近以外から親父が出入りしている可能性ってないのかなってよ。」 海斗「壁に隠し扉・・・的な。」 光明「それは俺も考えてた。」 その時、用を済ませ化粧室から出てきた琢磨が教室に入ってきた。琢磨「何の話だよ。」 光明「ん?光明か・・・、実はな・・・。」 光明が琢磨に先程までの会話の内容を伝えた。琢磨「確か監視カメラって結愛が改造してたよな。」 光明「実はそのカメラの解析と改造に成功したんだよ、ちょっと見てくれるか?」 光明はパソコンに映っている監視カメラの映像を見せた。光明「これは以前結愛が以前改造した監視カメラの映像だ。念のため、監視側には以前と同様に同じ映像がずっと流れる様にいじくってある、証拠を見せないとな・・・。」 琢磨「なぁ、俺も協力できねぇか?」 光明「いいけど、お前がいいなら。」 琢磨「前に結愛の事を疑っちまったから、なんつぅか・・・、謝りたいというか・・・。」 結愛「それは仕方ねぇよ、必ずしも起こりうる事だと俺も海斗も思ってたからな。俺たちは嬉しくねぇが『貝塚』だからな。」 琢磨「お前ら『坊ちゃま』と『お嬢様』だもんな。」 結愛「やめろよ、そう呼ばれる度に吐き気がするんだ。」 海斗「俺も。」 守「演技が上手いんだな。」 圭「それ褒めてんの?」 守「少なくとも俺はそのつもりさ。それにこれは使えるかもしれないだろ。」 結愛「『演技』か・・・。」 海斗「確か『あいつら』って・・・、だよな?」 全員「確かに・・・。」 そこにいた全員が共感していた、ただ今は作戦会議が優先だ。琢磨「一先ず俺がどれかの監視カメラの前に行くわ、そこでだが無線機を通して誰か何かを俺に指示してくれるか?」 光明「あいよ。」 琢磨は光明からスコープや無線機を受け取ると一番近くの監視カメラへと向かった、最寄りのカメラまではさほど時間がかかることなく到着した。海
-⑫偽装作戦- 光明は疑問に抱いていた事を海斗にぶつけた、必ずと言っていいほど作戦実行に必要だからだ。光明「なぁ、理事長室に潜入したときに罠だったけどボタンを見つけたって言ってたよな。」 海斗「確か・・・、義弘が使ってるデスクの裏のやつだよな。」 光明「うん、そのボタンの周辺にスペースって無かったか?機械でボタンを押してわざと侵入者が出たようにしたいんだ。」 海斗「どれぐらいのスペースが必要なんだ?」 光明「2cm四方あれば大丈夫だ。」 海斗「よし、おれに任せてくれ。」 光明「いや、それには及ばない。今回の為に開発したんだ。」 すると光明はとても小さなドローンを取り出した、内視鏡カメラが付いている。そのカメラの先端にはスマートスイッチが付いていた、これを理事長室のボタンに取り付けて誰かが押したかのようにするのだという。いつの間にか開発していたので海斗は驚いていた。2人は作戦実行の日にちを決め、結愛や守、琢磨、圭、橘にも協力を要請して全校生徒に伝えた。その時、作戦時に使用するイヤホンを全校生徒に配っていた。作戦実行の瞬間に生徒が廊下に出ていたら速攻で疑われ、作戦が台無しになってしまう。教室にとどまるように連絡を行った。 次の日の深夜、全員が教室にとどまった事を確認すると、作戦実行の連絡をした海斗の案内で光明がドローンを飛ばし理事長室を目指した。因みにドローンには潜水艦のようなステルス機能があるので誰からも見えないし監視カメラにも映っていない。それが故に理事長室には簡単に到着した、超小型のパスワード解析装置も仕掛けられているので入り口はすぐに開く。ドローンから送られる映像が光明のパソコンに表示され海斗がそれを見ながらデスクへと導く。勿論赤外線スコープ機能もあるのでセンサーもするすると抜けていった。問題のボタンがある引出しを動かして両面テープでスマートスイッチをくっつけた、急ぎながらも冷静にゆっくりとドローンを教室まで飛ばして回収を行った。海斗が全校生徒に改めて確認の連絡をする。海斗「あー、あー、皆さんイヤホンから俺の声は聞こえていますか?改めまして貝塚海斗です。ただいまスマートスイッチの装着とドローンの回収に成功しました。これからわざと罠を起動させて黒服が何処から出てきているのかを監視カメラを通して見ていきたいと思いますのでご協力お
-⑬不審な点、重要な戦力- 光明は海斗が指したカメラの映像を見た。1番3番4番6番カメラだけ黒服が映っていない。同様に壁が開いているのだがその4か所だけ黒服が出てこなかったのだ。光明「ここって確か・・・。」 海斗「そうだよな、元々、食堂だったり家から遠い入口だったりする場所だよな。余りにも不自然すぎる。この前のドローンって何台か予備はないか?」 光明「大丈夫だ、任せろ。」 他のクラスの生徒からイヤホンを通して連絡がやって来た。生徒「もう大丈夫?そろそろトイレに行きたいんだけど。」 海斗「すまない。だいぶ黒服も退いて来たからそろそろ問題ないと思うぞ、ありがとう。」 生徒「了解、その言葉を待ってた。」 海斗「あと、お礼と言っては何だがある程度の食料を2年1組の教室に用意してあるから皆で食べてくれ。」 各クラスの代表者「分かった。」 結愛は光明の技術を以前から賞賛していたし光明の事を信頼していた、ただ結愛の場合は信頼以上の感情を抱いている可能性が高いのだが。どうしても協力したくなる感情を抱き始めている様な気もしていた、光明にとっては心強い味方となっていたので助かっていた。結愛「み、光明・・・、あのさ・・・、何か協力できないか?」 光明「そうだな・・・、今度結愛の家を案内してもらえるか?勿論、カメラの映像を通してだが。」 結愛「うん、任せろ。」 結愛はどこか嬉しそうにしていた。 しばらくの間、物事を起こさないようにしていた。義弘や黒服に感づかれないために。しかし何もしていなかった訳ではない、密かに集まって作戦を立てていたのだ。理事長室の罠をわざと起動させてからどうしようか、と。 一先ずは黒服が出てこなかった各箇所の隠し扉が何処に繋がっているのかを探ろうということで満場一致した。しかしそのためには前回の様な騒ぎをまた起こさなければならない、その上でカメラを数台用意するか騒ぎを数回起こすか選択することになる。皆は迷わず前者を選んだ。度々騒ぎを起こすと流石に義弘に怪しまれる。2回も起こしてしまっているのだ、流石に次は起こしづらい。そこで守が別案を出した。守「なぁ、黒服が出てこなかった4か所の隠し扉をこっそり開ける事って出来ないかな。誰からもバレずにというのが前提だが。」 光明「最初に壁を解析して場所を探らないとだな。しかし視覚では分からな
-⑭音で見る- 伊津見が合流して一緒に調査を始める事になり数日の間、一先ず怪しい出入口を見つけようとドローンで様子を伺う事にしていた。そしてついに伊津見の能力を利用しようとこっそりと行動を始めていく。ゆっくりと静かに飛んでいくドローン、通り過ぎる黒服や他の生徒は全く持ってドローンに気付かない。そんなこんなで以前、黒服が出てこなかった出入口付近の壁まではいつもの事なので容易に辿り着いたが何故か今日は黒服がずっと直立不動での監視を行っていた。ただ、光明の小型ドローンは全然見えてはいない、小さい上に深夜なので余計なのだ。蚊程の大きさしかないので全然気にならない、なので黒服に動きが見えるまで観察することにした。 数分後、罠を発動させてないのに壁がパカっと開いた。中から汗まみれの義弘が出てきた。光明「おい、見ろよ。あれ義弘だぞ。」 結愛「ここって俺らの家から一番遠い出入口だよな。」 海斗「『敢えて』って可能性もあ・・・。」 伊津見「シッ!お二人ともお静かに、親父さん何か話してます。」 結愛「兄貴にもタメ口でいいぞ。」 海斗「それに海斗って呼んでくれ。」 伊津見「分かった、取り敢えず親父さんが何言ってるか聞いてみるわ。」 海斗「意外とあっさ・・・。」 伊津見「待って。」 何か意味ありげな表情だなと光明はスピーカーの音量を上げた。黒服「ご主人様、ご足労お疲れ様でございます。」 義弘「いつもの事ながらだが、家からここまでハイハイで動かないといけないのは大変だな。それに苦手なジャージまで着て、毎度毎度ため息が出る。それと君、ここでは理事長と呼べと何度言ったら分かるのかね。」 黒服「はっ、理事長、大変失礼致しました。申し訳ございません。」 義弘「まぁいい、怪しまれないように敢えて一番遠い出入口にしたのは私自身だしな。さぁ、急いで閉めるんだ。」 黒服が別の壁を開けボタンを押すと、自動で隠し扉が閉まり壁と同化していった。隠し扉がロックされLEDが緑から赤へと変色した、そして義弘たちは理事長室へと向かった。結愛「どうやらここが家に繋がっているらしいな。」 海斗「でも完全に壁に同化して塞がっているぞ、ここは光明といっつんの出番だな。」 光明「任せろ。」 光明は伊津見にヘッドフォンを渡すとドローンを動かし始めた、先程黒服が扉を閉めた時に使ったスイッチ付
-⑮隠し扉- 早速2人は見つけたスイッチを使って隠し扉を開ける事にした。パスワード解析装置を使ってパスワードを解析し、テンキーを動かしていく。「ガチャッ・・・。」 隠し扉の鍵が開いたようだ、光明の操作でドローンを動かし扉の中へ入っていく。中は暗いので暗視カメラを使用しないと進んでいけなかった。ゆっくりと慎重に前へと進んでいく。光明の隣で画面を凝視する結愛。しばらくすると円状で広々とした空間に出た。光明「どうだ、見覚えあるか?」 結愛「全くだな。全体がコンクリの壁。こんな空間家では全く見たことねぇ。」 海斗「向こう側にも通路があるらしいな、ここが家に通じているのか?」 光明「とにかく行ってみよう。」 光明はドローンを慎重に進ませていった、念の為に赤外線スコープを常に作動させていた。奥に奥にどんどん進んでいく、すると一番奥に木製の扉を発見した。周囲には怪しいものは何もないようだった、慎重に扉を開けていく。そっと・・・、そっと・・・。 中に入ると全体的に洋風の壁の部屋があった。光明「もしかして・・・。」 結愛「俺たちの家っぽいけどこんな部屋あったか?」 取り敢えず光明は部屋の天井にドローンをくっつけ隠しカメラの様に部屋を監視していく事にした、愛と海斗は何かを思い出したような表情をしていた。海斗「そう言えば俺らは立ち入り禁止の部屋がいくつかなかったか?」 結愛「確か1階と2階、4階に1部屋ずつあったな。」 琢磨「お前らん家何階建てだよ。」 海斗「地上5階建てに地下・・・。」 守「地下?!」 結愛「あったか?」 琢磨「知らねーのかよ!」 海斗「地下は無かった。」 橘「無いんかい!何で言ったんだ!」 海斗「いや、たまにはボケとかないと。」 守「空気読め!」 海斗はそこにいた全員にビンタされた。海斗「痛(いて)ぇよ、場を和ませてもいいだろ。」 結愛「はいはい、ありがとねー。(棒)」 全員、ため息をつき呆れ顔をしていた。 それを横目に光明はドローンを左右に動かしていく、しかし先程開けた木製の扉以外には出入口らしいものは見つからず、ほぼ一面壁のみの部屋となっていた。光明「しばらく様子を見て義弘が出入りするのを待つしかなさそうだな。」 結愛「娘の俺が言うのもなんだが、親父も手の込んだことするな。」 海斗「多分校舎と同じよ
-90 解体の最中- 牛筋煮込みご飯を振舞う御厨の横でネスタは内ヒラ肉の脂を丁寧に剥がし取り赤身肉をブロック状に切っていくと、手の空いたヤンチが特製のスパイスに漬け込み1面1面表面を数十秒ずつ焼いていった。 表面を焼き上げたブロック肉の粗熱を取り、林田警部拘りの冷蔵庫に入れる。ブロック肉を冷蔵している間に特製のソースを作る。フライパンに残った肉汁や脂をベースに赤ワインを加え煮詰めてアルコールを飛ばした後粗熱を取ってこれも冷蔵庫で冷やしていく。結愛「出来上がりが楽しみですね、赤ワインは・・・、あれ?」 結愛が持って来ていた赤ワインが全て無くなってしまっているので辺りを見回すと、先程の新郎新婦が何故か呑み比べを始めその中で結愛のワインまで呑んでしまっていた。結愛「うっ・・・、1本50万円したのに・・・。」光明「どんだけ高いワインだよ・・・、と言うよりどこにそんな金があったんだよ。」結愛「さてと・・・、少し席を外します・・・。」 嫌な予感がした結愛はそそくさに『瞬間移動』で何処かに逃げてしまった。光明「あっ・・・、最近家で安めの第3のビールばっかり吞んでると思ったらあんなに大きな買い物をしていたんだな。へそくりでもしてたのか?」 噂をしていると結愛が大きめの袋を持って戻って来た、袋の中身は全て赤ワイン。結愛「はぁ・・・、はぁ・・・、予約注文していて正解でしたよ。これなかなか手に入れるのが難しいワインなんです。」光明「そんなワインを何本も・・・、俺の嫁って一体・・・。」 頭を抱える光明を横目に冷蔵庫からネスタが出来立てのローストビーフを運んできて特製のソースと共に振舞った。ワインを全員に配ると皆噛みしめる様にゆっくり呑んでいった、勿論ローストビーフにぴったりだ。 御厨が先程のお釜からご飯を丼によそい、ちぎったレタスをふんわりと散らしてその上に薄切りにした肉を薔薇の花の形にすると上に刻み海苔を飾り見事な丼へと変身させた。 横には小皿に入った温泉卵が添えられている。それを見た林田警部と光が駆け寄って丼を掴み一気にかき込んだ。口いっぱいに入った料理を味わいながら2人は感動の涙を流している。林田・光「美味すぎる・・・、こんな贅沢な丼初めて。あ、ハモりましたね。」 まさか「あ、ハモりましたね。」まで被るまでとはと全員唖然としている、御厨は2人に温泉
-89 宴はまだ続くが- 裏庭にLEDによる照明を備えている林田家ではまだまだ解体しながらのBBQが続いている、全員飽きないのか箸が止まらない。御厨「先程結愛さんが取り出したサーロインのステーキが焼きあがりました。」 御厨が網の上で1口サイズに切っていくと全員が舌鼓を打ち、先程結婚したばかりの利通とドーラには厚めに切った1枚肉が渡された。利通「飲み込むのが勿体無い位に・・・。」ドーラ「咀嚼するのが嬉しくなる位に・・・。」2人「美味しすぎる!!」 ただ全員脂がくどくなってき来たのか、気分を変える為にネスタが解体したての牛肉を片手に提案した。ネスタ「赤身の美味しいもも肉にしましょうかね、脂が少ないから食べやすいはずだよ。」結愛「じゃあ私の方から、ランイチ(ラム)です。ランプとイチボに分けてお召し上がり頂きます。」 結愛が牛筋を境にイチボとランプに分けると受け取ったヤンチがイチボは焼き肉に、またランプはステーキにしていった。 今更だが、サラダとかは挟む必要は無いのだろうかという疑問を抱いてしまったガイ含む数名が気を遣い水洗いしたレタスや胡瓜、そしてトマトを使ったサラダを用意した。さっぱりと楽しめる様にドレッシングは青紫蘇の物を選んでいる。 光は口の中が脂で一杯になっていたので一応ビールで流し込んでいたのだが、気分的にさっぱりとした物を挟みたかったのでサラダを1皿受け取ると一気にかきこんだ。 ネスタ「続いては内ヒラ(内もも)だよ、これは少し時間が掛かるけどローストビーフにしようかね。今から作るからその間結愛さんお願いね。」結愛「分かりました、師匠!!」 いつの間にか大企業の社長である結愛に「師匠」と呼ばせているネスタ、この事には林田が少し焦りを見せたが結愛は当たり前の様に呼んでいる。どうやら牛の解体技術はネスタから学んでいる様だ。 そんな中、大量の牛筋が解体や整形の間に出てきたので御厨がこっそり仕掛けていた出汁に醤油等と一緒に入れて特製の牛筋煮込みに仕上げていくと瞬く間に殆どが無くなってしまった。それと同時進行でビールも無くなってきたので光が『瞬間移動』で自分の家の地下にある大型冷蔵庫からありったけの缶ビールを持参し、皆で呑み始めた。 林田は牛筋煮込みを食べながら涙ぐんでいた。林田「この優しい味付けがビールに合うな・・・、米にも合いそ
-88 宴の中で- 顔を少し赤らめ酒の力を借り深呼吸した利通は父親である林田警部にも見せた事の無い程の真剣な表情をしていた。 全員察したのか歓談をやめ利通の行動に注目して温かな表情で見守る、利通が進む先に佇むドーラが微笑んでその時を待っていた。 ドーラの前にしゃがみ込み、いつの間にか用意していた指輪を懐から出すともう一度深呼吸をしてキリっとした表情で切り出した。利通「ドーラ・・・、いや、ノーム・クランデルさん。ご存知の通り自分は普段からとても不器用なので非常に短いですが率直に言わせて下さい。貴女が部下として私の下に来て下さった時から決心していました、一生懸けて幸せにします。貴女の隣で朝を迎えたい、僕と結婚して下さい。」 全員の視線がドーラに集中する。ドーラ「一緒に働いたり遊んだりしている内に自分の人生で堂々と「一番楽しい」と思えるのが貴方といる時でした。貴方が思うような女になれるかどうかは分かりません、でも2人で幸せな時間や瞬間を増やしていきたいです。私みたいなエルフで宜しければ、喜んで御受け致します。」 利通がドーラの左手の薬指に指輪をはめると、そこら中から拍手喝采が起こり皆が涙を流しながら歓喜の声を上げた。 すると、赤ワインでほろ酔いになっているメイスが観衆の中から出てきた。メイス「林田利通さん、貴方はこちらの女性を妻として迎え、病める時も健やかなる時も愛し続ける事を誓いますか?」 皆がまさかと思っていたのだが、結婚の儀を始めたのだ。利通「誓います。」メイス「ノーム・マーガレット・クランデルさん、貴女はこちらの男性を夫として迎え、病める時も健やかなる時も愛し続ける事を誓いますか?」ドーラ「誓います。」メイス「Then, you kiss to the bride.」 2人は静かに近づきお互いへの優しさと愛情あふれる表情と共に口づけをした。メイス「アーク・ビショップの名の下に宣言します。今よりこの2人を夫婦とします!」 全員が魔力で紙吹雪やライスシャワーを行い、拍手で新たな夫婦の誕生を喜んだ。 そんな中で新郎本人は一人裏庭の出入口へと走り、出た途端に叫んだ。利通「よっしゃー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」 林田は人生の大きな節目を迎えた息子の片腕を掴み高らかに上げさせた、堂々とした表情の利
-87 宴は続き- ネスタと結愛による黒毛和牛の解体は続いた、2人も調子が出て来たのかありとあらゆる部位がお目見えしていく。結愛「先程の肩ロースに続きましてリブロースのお出ましですよ、美味しく食べて下さいね。」 結愛が出てきたばかりのリブロースを受け取ったヤンチが目にも止まらぬ早業で焼き肉用のお肉に仕上げる。ヤンチ「実は今日の為に家で育てた果実を使ったタレを持参して来ました、タレ漬け焼肉にしますので板長お願いします。」 御厨板長はヤンチに今日は仕事を忘れさせる様に伝えるべくあるルールを作っていた。御厨「ヤンチ・・・、今日の俺達は休みだ。という事は分かってるよな?」ヤンチ「わ、分かったよ親父。」 ヤンチは御厨の事を仕事の時以外は昔の様に『親父』と呼んでいた。両親の顔を知らない孤独なウェアタイガーだったヤンチは、美味い食事を与えた御厨を本物の父親の様に慕い、自分も美味い料理を作りたいと御厨の下で言葉と料理を勉強し続けている。今となっては立派な板前、いや花板と言っても過言ではない位の実力を持っているが決して驕らず一途に料理を探求し続けていた。 そのヤンチが自ら持参したタレで肉に味付けをする、それには師匠であり育ての父の御厨も興味津々だ。御厨「ヤンチ・・・、俺も食って良いか?」ヤンチ「良いけど・・・、不安だな。」御厨「自分の料理に自信を持て、お前は仕事の時も自分が納得していない味の料理をお客様に出しているのか?」ヤンチ「それは・・・、ないけど・・・。」御厨「本当か?迷いがある言葉だな。」ヤンチ「自分ではまだ発展途上だと思っているからかな、でもこのタレは素材から全部作って味見をしながら作った。」御厨「汗と涙の結晶か。それじゃ何故不安になるんだ、是非俺にも味わわせてくれ。」ヤンチ「いや・・・、あの・・・。」 御厨がタレ漬けにしたリブロースを自ら焼き1口食べる。御厨「ぐっ・・・、かっ・・・。」ヤンチ「だから不安だったんだよ、親父唐辛子苦手だろ。」御厨「ぎゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」 辛い物が大好きなヤンチはビールや白飯に合う様に自宅で育てた果実と一緒にハバネロやブート・ジョロキア、そしてトリニダード・スコーピオンと言った様々な唐辛子を加えていた。 御厨は白米とビールの両方を一気に煽り、何
-86 超新鮮で大胆なBBQ- ガイの軽トラで1頭買いした黒毛和牛を林田家の裏庭へと運ぶと、今か今かと待つ人々が歓声を上げていた。その中には光が招待した結愛社長もいる、現場には大きなまな板と綺麗な包丁などが並べられ解体の準備がされていた。 丁度その頃、焼き肉屋の御厨板長と板前をしているウェアタイガーのヤンチが到着した。御厨「今夜はご招待頂きありがとうございます、ただ私達も召し上がって宜しいのでしょうか。」光「勿論です、お2人も楽しんで行って下さいね。」ヤンチ「さてと・・・、早速解体していきますか。」女性達「私達も是非手伝わせて貰おうかね。」 声の方向に振り向くとエプロン姿をしたネスタ林田、そしてまさかの貝塚結愛がいた。ヤンチ「お2人さん・・・、本気ですか?」ネスタ「あら、私はドワーフだよ。舐めて貰っては困るね。」 昔からドワーフの一族は身のために色々な技術を何でも習得するという伝統があった、牛肉の解体技術もその1つだ。ヤンチ「でも何で社長さんまで?」結愛「実は私も見分を広げる為にドワーフの方々から勉強させて頂いているんです、牛肉の解体もその1つです。」ネスタ「では早速やりますかね。」 鮮やかな手つきで3人が解体を進めていく。骨と骨の間に包丁を入れていき、スルッと肉が剥がされていった。結愛「さてと・・・、最初から贅沢に行きましょうか。鞍下、肩ロースです。丸々1本だからとても大きいでしょう。」光「涎が出てきちゃってるよ、早く食べたいな。」御厨「さぁ、焼肉にしていきましょうか。」 結愛から受け取った大きな塊を御厨が丁寧に肉磨きと整形をして焼肉の形へと切っていく。20kgもの塊が沢山の焼肉へと変身した。御厨「では、焼いていきましょう。ヤンチ、すまんが整形を頼む。」ヤンチ「あいよ、プロが2人もいるから解体は大丈夫そうですもん。」 御厨が炭火の網の上に肉を乗せ焼いていった、そこら中にいい香りが広がる。光「この匂いだけでビールが行けちゃいそう。」御厨「さぁ、焼けましたよ。塩と山葵でお召し上がり下さい。購入されたご本人からどうぞ。」光「塩と山葵がお肉の甘みを引き立てて美味しい!!」 光がビールを一気に煽る、何とも幸せそうだ。作業中の結愛やネスタ、そして焼き肉屋の2人にも振舞う。結愛「たまりませんね、ビールが美味しい。」光「今日
-85 大金の使い道-光は林田警部と今夜の打ち合わせを進めて行った。林田(電話)「どうしましょう、私が何処かお店を予約しておきましょうか。」光「いや、食材や料理を持ち寄りどこかで集まりませんか?一先ずメイン食材は私にお任せ下さい。」林田(電話)「分かりました、では私の家の裏庭に集まりますか。」光「あの・・・、今から食材を注文しますので「あの2人」に連絡をお願い出来ますか?」林田(電話)「ああ・・・、「あの2人」ですね。お任せ下さい。」 光には幼少の頃から夢があった、それには大金が必要だった。レースの払い戻しにより自他共に認める大金持ちになったのでその夢を叶えてやろうとした、元々この異世界に来た時に神様に大金を渡されていたが隠していたがこれで堂々とこの大きな買い物が出来る。 ただ自分の愛車は今回使用するのに2台とも厳しかった上にレース中にビールをがぶ飲みしていたのでガイにお願いして軽トラを出して貰うにした。勿論お礼としてこの後の呑み会に招待している。(※飲酒運転、ダメ、絶対!!)一応、この為に『作成』した『強化』でこっそり車をカスタマイズしてはあるのだが・・・。光「乗るかな・・・。」ガイ「そんなに大きい買い物をするのかい?」光「そうですね・・・、値段的にも大きさ的にも・・・。」 少し不安になりながらとある場所へと向かった。 街から出て20分程、目的地へと着くとガイの顔が蒼ざめた。ガイ「光ちゃん、冗談だろ・・・?あれ・・・、買うのか?」光「買いますよ、子供の頃からの夢ですから。ああ・・・、興奮してきました。」ガイ「それにしても乗る・・・、かな・・・。」光「大丈夫ですって、私にお任せ下さい。」 店に入ると店主が笑顔で2人を出迎える、店の名前が刺繍された茶色いエプロンには所々シミが付いている。何故かプニに似て少しチャラい。店主「いらっしゃいませ、何に致しやしょう。」光「あの、予約していた吉村ですけど。」店主「これは失礼、吉村様ですね。お待ちしておりました。」 店主は光の名を聞くと何故か襟を正し2人にキャップを渡した。店主「こちらを被ったら奥へどうぞ。ただ吉村さん・・・、本気ですか?」光「勿論、夢が叶う瞬間です。駄目ですか?」店主「いえいえ、私はとても嬉しいのですが何せ初めてなものでして。」光「私もです、ドキドキして来ま
-84 大イベントと大事件の後- 確定放送が終わった瞬間光は飛び上がり持っていたビールの殆どをこぼしてしまったが全くもって気にしていなかった、確定オッズを確認していなかったが今までに無い位の快感を得ている様だ。こぼしたビールで衣服がぐっしょぐしょになってしまったがそんなの全く関係ない、早く払い戻しに行きたい気持ちで一杯で仕方なかった。 そんな中、会場で払戻金額等についての放送がされる。ただ魔力オーロラビジョンがずっと真っ暗なままだ。カバーサ「えー・・・、映像が出てきて・・・、ませんね。なので私の方から改めて着順確定と払い戻し金額を・・・、あ。出せますか?では皆さん、ご一緒に見て行きましょう。 改めまして今年のレースですが、1着⑨番、2着⑮番、そして3着⑥番となりました。2連単⑨-⑮の組み合わせ58790円、また3連単⑨-⑮-⑥の組み合わせ892万4360円となっております。尚、毎年の事ですがレース開始までにこちらの車券をご購入された方は払い戻し金額が倍となりますのでよろしくお願い致します。 えー、解説兼主催の・・・、今年はバルファイ国王様ですかね?今年のレースはいかがでしたでしょうか?」パルライ「・・・。」 画面に映ったパルライは事件解決の疲れからかおしゃべりなカバーサの横で静かに眠っている。カバーサ「あのー、起きてますか?」パルライ「・・・。」カバーサ「スタッフさんすみませーん、強めのスタンガ・・・。」パルライ「起きてます、起きてますから!!」慌てて起きたパルライ、電撃が苦手なのか、それともカバーサが苦手なのか慌てて起きている。カバーサ「では気を取り直しまして、今年のレースいかがでしたでしょうか。」パルライ「そうですね、色んな方々の人情味が出ていた一面に溢れたものだったと思いますね。やはりドライバーさん達の生の御言葉を聞けたのが大きかったかと、ただスタート時のトラップはダンラルタ王国のデカルト国王のアイデアで行った事なのですが検討しなおさなければならない様ですね。しかし、1人でずっと1着を守り逃げ切った⑨番車のドライバーさんには賞賛の拍手をさせて頂きましょう。」 すると会場中から賞賛の拍手の嵐が起こった、そこでカバーサが気を利かせ⑨番車の監督に連絡を入れある提案をした。カバーサ「⑨番車の監督さん、聞こえますか?宜しければドライバー
-83 身に覚えのある件- バルファイ王国魔学校にて女性の声を聴いた瞬間義弘の体が硬直していた、同時に何故か林田警部がブルブルと震えている。結愛は身に覚えのある場面だなと思っていたが今は考えない事にした、ただ義弘が狼狽えている事は間違いがない。ただどうして林田も震えているのだろうか。 しかし義弘と林田警部を同時に震わせる程の言葉を言える者がこの世界にいるのだろうかと振り向くとそこには林田警部の妻、ネスタ林田がいた。ネスタ「希さん、実は『連絡』が使えるのは転生者のあんただけじゃないのさ。ただのドワーフの私にだって余裕で出来るんだよ、私を舐めないで頂戴。」林田「そうか・・・、でもあっちの世界にお前の知り合いがいるのかい?」ネスタ「何を言ってるさね、あっちの世界の事を全く知らないフリをしてたけど実は知り合いが沢山いるのさ。それに私ゃこの世界におけるこの会社の筆頭株主だよ、嫌な予感がしてあっちの世界の株主である宝田さんに聞いたらこんな事になっている訳さね。さて、本題に戻ろうか。義弘、あんたの勝手な行動を決して許す訳には行かないよ。3国における平和協定まで破ってこの会社を奪い返してどうするつもりだったんだい?」義弘「愚かな馬鹿娘が下らん教育機関などに使い込んだ私の金を取り戻そうかと。」ネスタ「何が下らないって?あんたの言う「愚かな馬鹿娘」が教育機関を支持することによって貝塚財閥はお金以上に大切な物を得たんだよ、あんたによってこの会社が失った「信頼」だ。私が何も知らないとでも思ったかい?この世界でのクァーデンとの贈収賄の事も、そしてあっちの世界の貝塚学園での独裁政治っぷりもね。今あんたがしている行動も含めたらもうあんたは重罪人さ、どっちがお馬鹿さんなんだか誰だって分かるよ!!私の旦那の仲間は私の仲間だ。だから私は筆頭株主として結愛社長に味方する、決してあんたを認めないからね!!」義弘「言ってくれるじゃねぇか・・・、でもこうしてしまえば済む話だ!!」 義弘が結愛に向けて大きな火の玉を飛ばしたが、別のより強力な魔力によって弾かれた。義弘「何が起こった!!私は大賢者だぞ!!」リンガルス「義弘、黙って様子を見ておけば・・・、いい加減にしろ!!俺はお前に罪を犯させる為に魔術や催眠術を教えたつもりはないぞ!!」義弘「り、リンガルス・・・、貴様・・・、上司たる私を裏
-82 脅迫と協定- 実況を務めるネクロマンサーのカバーサ含む全員が目を疑った。カバーサ「どういう事でしょうか、私にもどういう事か分かりません!!」 その瞬間、パルライに念話が飛んで来た。師匠のゲオルだ。ゲオル(念話)「パルライ、今の見たか。」パルライ(念話)「はい、何者かの魔術でしょうか。」ゲオル(念話)「お前の障壁には反応があったのか?」パルライ(念話)「悔しいですが・・・、全く。」 突然消えた車両を見た全ての者が驚愕しているなか、3国中のオーロラビジョンいっぱいに見覚えのあるあの忌々しい男の顔が映った。正直光にはどうなっているか分からない。義弘(映像)「結愛・・・、たった数年で私が人生かけて創り上げた貝塚財閥を手に入れたと勘違いしている愚かで憎たらしい馬鹿娘よ。ネフェテルサ王国にある貝塚学園小分校、バルファイ王国の貝塚学園高等魔学校、そしてそこにある貝塚財閥支社は全て私が乗っ取った。降参するなら今の内だ、すぐさまここに来て土下座しろ!!ここにいる人質がどうなっても良いのか?」 結愛は映像を見て驚いた、先程まで自分達と一緒にネフェテルサ王国警察にいたアーク・エルフのマイヤとネフェテルサ王国王宮横の教会兼孤児院にいるはずの神教のアーク・ビショップであるメイスが映っている。2人とも相当な魔力の持ち主のはずなのにあっさりと人質にされてしまい、強力な魔力で拘束されている。義弘(映像)「この2人を解放して欲しければ今年の首席入学者が「梶岡浩章」ではなく「リラン・クァーデン」である事を認め、私に財閥の全権を戻した上で私の目の前で死んで消え失せろ!!さもなくばリンガルスの手で手に入れたこの強大な魔力で全ての建物を破壊し、全面戦争を仕掛けてやる!!」林田「何て奴だ・・・、実の娘にあんな言い方しやがって・・・。」結愛「いえ・・・、アイツだったら十分あり得ます。」 そこにいた数名は義弘の発言にあった別の言葉に引っかかっていた、言葉だけではなく行動にも。林田「強大な魔力であの2人を締め上げ脅迫して、この時点で奴は有罪ですよ。」デカルト「それ所ではありません、全面戦争まで起こそうとしています。これは「3国平和協定」に違反します。」 結愛は両手で拳を握り、震わせていた。 すると、映像の中の2人が結愛に声を掛けた。メイス(映像)「理事長、こんな男の言