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第313話

 「自分の失態を言い訳にしないでください」面接官は彼女を一瞥し、言った。「もう帰ってください」

香織は諦めきれなかった。せっかく手に入れたチャンスを、彼女はしっかりと掴みたかったのだ。

「どうかチャンスをください。この面接のために、私はたくさん準備してきました……」

「それはあなたの事情です。遅刻して面接に遅れたのはあなたの責任です。本当にこの面接を大切に思っていたなら、遅刻しなかったはずです」

面接官は明らかに苛立っており、「これ以上しつこくすると、警備員を呼んであなたを追い出しますよ」

香織は立ち止まり、それ以上前に進むことができず、心の中に失望が広がった。

彼女はため息をついた。やっと得たチャンスが、またもや水の泡になってしまった。

彼女は病院を出て、階段に立ち、深く息を吸った。心の中には少しばかりの悔しさが残っていた。もし自分の条件が足りないために受け入れられなかったのなら仕方ないが、彼女には面接の機会すら与えられなかったのだ。

医者という職業をもうできなくなったら、夢ということをどう語ることができるだろうか?

これを考えると、彼女は自然と肩を落とした。

階段を下り、帰る決心をしたところで、彼女は背後で会話の声が聞こえた。振り返ると、さっき救ったあの老人が目に入った。

老人も明らかに彼女を見つけた。

香織は特に話しかけるつもりはなかった。結局、ただの些細な助けであり、医者としての義務でもあるのだ。

彼女は振り向いて最後の段を下りようとした。

「待ってください」老人が彼女を呼び止めた。

香織は振り返り、「私を呼んだのですか?」と尋ねた。

老人は歩み寄り、「ここに来たのは、病気だからですか?」と尋ねた。

「いいえ、私は医者としてここでの採用面接を受けに来ました。ですが、遅刻してしまい……」香織は無力感を伴いながら面接官を一瞥した。

その冷酷で辛辣な態度のせいで、自分はチャンスを逃してしまったのだ。

面接官は眉をひそめた。「院長、この人を知っているのですか?」

院長は頷いた。「私は突然心臓発作を起こした。たまたま持っていた薬も切れてしまい、彼女が助けてくれたんだ」

面接官は香織を見て、「それで遅刻したのですか?」と尋ねた。

香織は頷いた。「そうです」

彼女は心の中で非常に驚いていた。さっき助けた患者が、病院長だったなん
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