第280話

　「それで、圭介は私のことが好きになるはずがないんだよね？」

その時、誠は心の中で嘲笑った。「君みたいな人？何もなかったとしても、水原様が君が好きになるはずがないよ。

「それでもまだ諦めきれないの？」

しかし、彼はそれを口に出すことはできなかった。

「そうだ。響子が君を害したから、チャンスがなくなったんだ」

誠がさらに明日香の恨みを響子に向けようとしなくても、明日香はすでに響子を恨んでいた。

「私は彼女が憎い」

誠は録音を止めて言った。「私が明日香を観察したところ、彼女は本当に響子を憎んでいます。その憎しみは作り物ではないようです」

香織は急いで口を開いた。「それで、今は一体どういうことだったのか教えてもらえる？」

誠は圭介を一瞥し、彼の許可を得てから話し始めた。「実はこういうことだったんです……」

彼は事の経緯を話し、最後に「明日香はまだ病院にいます」と言った。

話を聞いた香織は、ほっとした。よかった、圭介とは関係がなかったんだ。

明日香があんな風になったのは、響子の言葉を信じてしまい、利用されたからだ。響子が簡単に一人の女性の純潔を壊すことができると気づき、彼女に注意を促した。

響子という人物には警戒しなければならない。

なにしろ、彼女と圭介は水と油の関係であり、今の自分は圭介の人間だ。

きっと一緒に憎まれるに違いない！

彼女が安心した様子を誠が見て、彼の心の中での推測が確信し、わざと笑って言った。「あなた、水原様が明日香をそうしたんだと思ったんじゃないでしょうね？」

香織は黙っていた。彼女は確かに疑っていた。

今の沈黙は、否定できないことを表していた。

誠は瞬時に好奇心を抑えきれない表情を浮かべた。

それで圭介が香織を連れてきたのか。

彼女に説明するために？

ああ、圭介もこんな日が来るね。

なんでこんなに笑いたくなるんだろう？

圭介が冷たい視線を投げかけると、誠はすぐにしおれて、「私、ちょっと用事が……」と口実を作った。

「待て」圭介が彼を呼び止めた。「デスクの上のあの書類を明日香に渡して、彼女に響子に渡すように言え。どう教えるか分かってるな？」

「水原様、ご心配なく。分かってます」誠は言った。

「うん、行け」

誠は書類を持ってオフィスを出て行った。

香織が尋ねた。「あの書類は何なの？」

圭介は彼女の