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第285話

 二人の視線が空中で交わった。

「どうして答えないの? 愛してないのね? そうだろう、お前のような男なら、どんな女でも手に入るだろう? 一人の女にだけ夢中になるなんてありえない。お前が姉……いや、香織と一緒にいるのは、彼女がお前に子供を産んだからじゃない?」

香織はこの問題について考えたことがなかったが、翔太が言ったことを聞いて、確かに一理あるように感じた。

圭介が自分に優しくしてくれるのは、純粋に彼女が好きだから? それとも双の存在があるから、彼は自分に優しくしてくれるのだろうか?

翔太の言葉は、明らかに香織の心に影響を与えた。

翔太が気付いたことを、圭介のように賢い男が気付かないはずがない。

彼は香織に近づいた。

「近づかないで、私の体には爆弾がついてるわ、危ないから」香織は言った。

圭介は聞こえないかのように、彼女の前に立ち止まった。

香織は頭を上げ、目を見開いた。彼女のまつげはふわふわと揺れ、薄く涙で覆われていた。彼女は笑顔を浮かべて言った。「私は信じているわ、あなたは私が好きなんだって」

「香織、お前はバカか? 彼はまだ何も言ってないのに、信じるなんて、本当にバカだな!」翔太はまるで心配しているかのように、「彼が一緒に死ぬ覚悟を持っているなら、それが本当にお前を愛している証拠だろう?」

香織は翔太を見て言った。「何を企んでいるの?」

「お前にこの男を試させてやるよ」翔太は圭介を見て、「圭介、お前が本当に動かずにいるなら、俺は母さんを殺したのがお前じゃないって信じる。そして、姉さんを心から愛しているって信じる」

彼はそう言いながら、爆弾の起動ボタンを押した。

香織の体に付いているタイマーがカウントダウンを始めた。60、59、58、57……

あと1分しかない。

香織は圭介に向かって叫んだ。「早く逃げて!」

彼女は圭介に自分の気持ちを証明してもらう必要はない。

ただ、彼女は分かっていた。もし二人が死んでしまったら、彼らの子供は孤児になってしまう。圭介の敵は多いので、彼女の子供が生き残れるかどうかは不確かだ。

おそらくは非常に危険な状況になるだろう。

圭介が生きている限り、彼らの子供を守ってくれるだろう。

圭介は彼女に向かって微笑んだ。

「……」香織は言葉を失った。

この人、狂っているのか?

こんな時に笑うなんて?

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