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第3話

佑斗は複雑な表情を浮かべた後、冷たく言い放った。

「逃がすもんか。あの女はずる賢い。徹底的に調べろ!」

「沿道の監視カメラも漏れなく確認しろ!」

柚月は緊張した様子を見せた。

私は柚月を見つめ、この女がどうも怪しいと感じた。

そういえば、誘拐される二日前佑斗に会いに会社へ行った時、彼のアシスタントに「不在だ」と言われ、オフィスで待ってい他ところ、柚月が内側から出てくるところに遭遇した。

彼女は私を見て明らかに慌てていた。

今考えると、彼女の手には銀色のキーホルダーがあった。

精巧なデザインで、とても印象的だった。

今またこうして緊張している彼女を見ると、怪しさが増すばかりだった。

柚月は「気分が悪い」と言い訳して部屋に戻り、私はすぐに後を追った。

すると、彼女は急いで携帯を取り出し、通話を始めた。

「話が違うじゃない!あんた、絶対安全だって言ってたでしょ?今、佑斗が沿道の監視カメラまで調べ始めてるのよ。もしバレたらどうするつもり?」

「ちっ、あんな女、替え玉でしかないのに!彼がそこまで気にかけないといけないなんて!」

「それで、あの女は確実に死んだんでしょうね?」

柚月は顔を歪め、電話の声を聞きながら冷笑した。

「分かってるわ、仕事が片付けば、佑斗は私のもの。他のことは、あんたの好きにすればいい!」

電話を切った後、彼女は興奮してその場で飛び跳ねた。

「全部、私のものよ!あんたたちに何ができるっていうの!」

私は呆然とした。

本当に彼女だったのか!

この女は完全に狂っている!

「佑斗、早く気付いて!彼女が犯人よ!」

「私を誘拐したのは、彼女とつながっている人物なんだから!」

その頃真雪は、パソコンの前で電話をかけ続けていた。

彼女の目は赤く充血し、疲労に染まっていたが、最終的には笑みがこぼれた。

「晴子、待ってて!」

あの黒服の男が、もうすぐ見つかりそうだった!

真雪は業界の大物に協力を依頼し、ようやく手がかりをつかんだ。

彼女が車で目的地に向かっていると、その大物が派遣した助手も現場に到着した。

「石川さん、佐藤社長からの伝言です。これで借りは返したと」

「感謝します!」

真雪は助手とともにその場へ急行した。

道中、彼女の携帯に誠智から電話がかかってきた。

「真雪、今どこにいるんだ?まさかまた晴子を探しているのか?」

「晴子が機密を漏らしたんだ、放っておけ!」

「黙って!」

真雪は怒りを込めて言い放った。

「晴子はそんなことしてない!警察でもないくせに、偉そうにするな!」

「それに、私がどこに行こうとあなたには関係ない!」

誠智は苛立ちを隠せずに言った。

「俺が前に買った蘭のブローチ、柚月が気に入ったんだ。お前、あれどこに置いた?」

真雪は言葉を詰まらせ、心を落ち着けるように深呼吸した。

「誠智、私のものに他人が触れるのは許さない」

「それをあげるつもりなら、私たち終わりにしましょう」

電話を切り、真雪は大きく息を吸い込んだ。

その瞬間、彼女の携帯に写真が届いた。

送信者は柚月だった。

「ごめんね、真雪お姉さん。誠智さんが蘭のブローチが私に似合うって。気にしないでね?」

写真の中のブローチを見つめ、真雪の胸には失望が込み上げたが、冷静を装いこう返信した。

「気にするよ。蘭は高潔だから茶髪女には似合わない」

送信した後、彼女は柚月をブロックし、さらに誠智もブロックリストに加えた。

現地に到着すると、目の前には廃れた工場があった。

「ここで間違いない?」

「ええ。追跡した結果、彼がここから出てきた形跡がありました。タイヤの跡と血痕も一致しています。行ってみましょう!」

工場に近づくにつれ、真雪の心には不安が募っていった。

胸騒ぎがする。

何か良くないことが起こりそうな気がして、彼女の足は震え始めた。

周囲には雑草が生い茂り、彼女が門に辿り着いたときには恐怖が頂点に達していた。

だが、助手は勇敢に中へ入っていった。

約二十分が経った頃、突然中から悲鳴が響き、助手が転げるように外へ飛び出してきた。

「死体が!死体がある!警察を呼べ!」

真雪は震えながらも、何故か急に勇気が湧いてきて、大股で中へ進んでいった。

暗い角に吊り下げられた女性の遺体を目にした瞬間、真雪の胸は鋭い痛みに襲われた。

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