第3話

私は有名な法律事務所に来て、いじめ問題のことについて弁護士に相談した。

健一は無駄に死にしてはいけないし、そんなクズたちはのうのうと暮らして他の子供に害を及ぼしてはならない。

出かける前に、突然誰かが私の名前を呼んでいるのを聞いた。

「鈴木さん？」

渡辺智也はニコニコしながら、私を見ている。

彼は記憶の中のまま、陽気で開放的、ハンサムな姿だった。

私は唇を引き結んで笑い、大学時代に追いかけてきたこの人に向かって、少し照れくさい気持ちになった。

「失礼ですが、どうして法律事務所に来たんですか？何か手伝えることがありますか？」

渡辺智也は私にコーヒーを渡した。

私の躊躇を察して、彼は笑って再び話した。

「私はこの事務所のパートナーです。何か困ったことがあれば話してください」

私は驚いて顔を上げると、彼は昔と変わらず温和で親切な笑顔で私を見ている。

2時間も話し、彼は事のいきさつをほとんど全て理解したが、同情や憐れみの態度を示さなかった。

これが私を少しリラックスさせてくれ、プロフェッショナルで真面目な弁護士と話している安心感をくれた。

その時、私の携帯が鳴った。

石川孝信からのメッセージだった。

「何時だと思ってるんだ！まだ家に帰らないのか？」

2秒見た後、初めて彼のメッセージに返信せずに携帯をオフにした。

渡辺智也はちらりと見ただけで、何も聞かなかった。

私たちはカフェを出た時、外は雨が降り始めていた。

渡辺智也は傘を差し、私を家まで送ると言った。

私が丁寧に断ろうとした瞬間、ある人影が急いで駆けてきた。

「石川綾子、まさか携帯をオフにして失踪ごっこをするなんて」

石川孝信は怒りで顔が青ざめ、見る間にハンサムな渡辺智也を見て冷笑した。

「ヒモ男とデートしてたのか！だから息子も放っておいて！」

「息子？あんた、息子のことを言う資格があるの？」

この言葉が私の痛みのスイッチを直撃し、健一が死ぬ前の絶望と無力感が再び脳裏に浮かび上がった。

「母親が深夜まで家に帰らないで、お前の息子も一日中うろついてる！山本さんのしつけをちゃんと学んでみろ！」

石川孝信は激しく私を責め立てた。

「そうだね。山本和美は子育てがうまいよ。そんなに彼女が好きなら彼女の夫になって、彼女の息子の父親にしなさい。ああ、もともとお前は彼の『パパ』だったんだ」

最後の言葉は、私が歯を食いしばって言った。

石川孝信は一瞬呆然とし、その後さらに激しく私を非難した。

「石川綾子、そんなに器が小さいな。彼は父親を失って、私を一番親しい家族と思って、それは当たり前だ」

私はフウッと息を吐いて、涙を押し殺して、もうこのクズと一言も無駄にしたくなかった。

「石川孝信、離婚届にサインしたか？

この渡辺先生は私の離婚訴訟と......健一のいじめ問題を完全に担当していた」

私は渡辺智也に向かって紹介した。

「何のつもりだ？息子を刑務所に入れるのか？」

石川孝信はまぶたがピクリと動いて言った。

渡辺智也は既に我慢できなくなっていた。

「石川さん、私が理解した限りでは、いじめられていたのはずっとご息子さんです。そして彼は3日前に亡くなりました」