第2話

健一の葬式が終わった後、私は直接病院に行った。

高級病室の中で、山本和美の息子は腕に包帯を巻いて、楽しそうに何かを話していた。

私が現れると、石川孝信の表情が一変し、急いで出てきた。

「よくもぬけぬけ私たちの前で現れたな。靖君の状態がやっと安定したばかりなんだから、邪魔しないでくれ」

「石川さん、あなたの息子が死んだのに、まだ他人の息子を気にするの？」

私はヒステリックに叫んだ。病室の中の母子が私に驚いた目を向けた。

石川孝信の表情はさらに険しくなり、私を遠くに押しやりながら警告した。

「石川綾子、いい加減にしろ。山本さんが一人で子供を育てるのは大変だから、校長の私が彼女を助けるのも普通だ。

それに、これまでずっと健一君が靖君をいじめていたんだ。今回も靖君の腕を骨折してしまった。君、病院で騒ぐ権利なんかないぞ」

こんな馬鹿げた言葉、もう何度も聞かされている。

山本和美の夫は彼女と離婚したが、石川孝信は彼女を長年にわたり面倒を見ている。

私の夫は離婚していないのに、他人の妻に殷勤を尽くしている。

山本靖の父親は彼を見捨てたが、彼は石川孝信の愛情を受けている。

私の息子の父親は生きているのに、いないも同然だ。

家の窓が壊れて、寒い冬の日に冷たい風が入ってくるのに、石川孝信は山本和美に新しい料理を作っていた。彼は私に修理工を呼べといい、自分は窓の修理人ではない、あれこれ頼るなと言った。

病気を押して授業を続けていた私に対し、彼は山本和美と一緒に東京へ職員会議に行き、公費で旅行し、嫉妬するなと言った。

研修も、山本和美は常に私の後ろで、石川孝信は校長として公正にしなければならないから、私には特別な配慮をしないと言った。

彼が出張から帰ると、しばしば山本靖におもちゃやプレゼントを持ってきた。その子は健一の前でそれを自慢し、怒った健一が自分の唯一の誕生日プレゼントを壊し、それで石川孝信がさらに殴られた。

山本和美の息子はまったく羊の皮をかぶった狼だ。

数えきれないほどいじめの中で、彼は陰で糸を引く人だ。

でも石川孝信は信じず、彼らによって洗脳され、健一がいじめっ子だと思っていた。

彼らが告げ口するたびに、健一は鞭で全身を打たれた……

そんなことは無数にあります、本当に数えきれない……

私は石川孝信の怒りに満ちた顔を見て、馬鹿馬鹿しいと思った。

「いいよ。じゃ、離婚届にサインして、離婚しよう」

私は離婚届を彼に渡した。来る前にすでにサインしていた。

「石川綾子、いい加減にしろ。離婚で脅すな！」

石川孝信はそれを受け取らず、手を振って書類を飛ばし、怒って言った。

彼は私が彼を引き戻そうとしていると思ったのだろうが、今、私は二度と彼に会いたくない。

「サインしないなら、弁護士を探して……」

病室から山本靖の声が聞こえてきた。

「パパ、腕が痛いよ……」

石川孝信は早々に病室へ戻り、中から彼の愛情に満ちた優しい声が聞こえた。

「靖君、大丈夫だよ。君のそばにいるよ。心配しないで」

私は病室にいるまるで三人家族のような彼らを見て、声を上げて笑いたくなった。

石川孝信がこんな風に健一に話してくれたなら、健一は死ぬ前にそんなに失望しなかっただろう。

これが私が選んだ夫だ。これが私の息子の父親だ。何たる皮肉な世の中だ。

健一君、ごめんなさいね。こんな父親を与えるべきではなかった……

私は離婚届を拾い上げて、病室に投げ捨て、振り返ることなく病院を後にした。