第5話

家に帰った時、もう深夜だった。

リビングルームに電気ががついている。私は健一の遺影の前に立っている人影を見るのも嫌だ。直接寝室へ向かった。

「綾子ちゃん……」

足が止まり、心の中で驚きと悲哀が交錯した。

石川孝信がこんな呼び方をしたのはもう何年もありませんでした。

山本和美が現れてから、彼が私を呼んだのは「石川先生」や「おい」などになった。

前者は仕事中の敬称で、後者は家での蔑称だ。

私は彼を無視し、寝室のドアを開けて入ろうとした。

急いで足音が鳴り、石川孝信が私の腕を掴んだ。

私が憤慨して振り返った時、彼の姿を見て少し呆然とした。

わずか数時間見なかった間に、彼は目に疲労が見え、顎には青いヒゲが生え、顔には私が先ほど殴った跡が残っていた。

彼がかなり落ちぶれたように見えたが、私が見れば見るほど滑稽だった。

「綾子ちゃん、私……私は健一に何が起こったか知らなくてごめんなさい。許してくれるかい？」

「許す？」

私は冷笑して、健一の遺影を指して問った。

「健一君を生き返らせることができるか？これらすべてが起こらなかったかのようにできるか？それができれば、私はあなたを許すことができる」

石川孝信は口を開いて、不安げに謝罪した。

「その時は健一がどこにいるか知らなかった。靖君が健一が彼を殴った後に逃げたと言ったから。

健一が誤って傷つけられたこと、しかもそんなに重い傷を負ったことなんて思わなかった……」

でも靖君は決して故意じゃない。何年もの間、健一がずっと彼をいじめてきたから、彼が反撃しようとしただけ……」

バチン！

我慢ができず、私はもう一回石川孝信に平手打ちをした。

「やめろ。君の口の中にはその恥知らずな母子だけだ。

石川孝信、私の息子こそが被害者だった。今までこれを信じていないか？」

石川孝信は疑いに満ちた目で、信じられないほどつぶやいた。

「嘘、嘘をつくな……靖君がどうして……和美さんがはっきり言ったのに……」

私は笑いたかった。

なんて皮肉なんだろう。息子が死んでも、彼はまだその母子を信じている。

健一が初めて山本靖にいじめられたと言った時、石川孝信は何も言わずに健一を平手打ちした。

「でたらめを言うな！靖君は従順で賢い、どうしてあなたをいじめることができるか？きっとあなたが何か悪いことをしたんだ」

健