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第2話

近くで待ち伏せしていた正義の味方と自称する人たちが一気に家に入ってきて、無数のカメラをこっちに向かせた。

「お前が泥棒猫なんだ?いい度胸してるじゃん、よくもここに来れたな。けどよ、もう帰られないまで俺たちがボコボコにしてやる」

「今日俺らがお前に人間らしく生きる方を教えてやんから」

彼女たちが喋る時に吐き出す唾が全部私の顔に飛びかかった。私は人群れの中に立っている文美を見やった。彼女は母親の肩に寄りかかって悲しそうに泣いていた。とても嘘をついているようには見えなかった。もしかしたら、今日は本当にただの誤解かも知れない。文美と弟もうすぐで婚約する予定だった。私は彼女と不快な関係になりたくなかった。

私は顔に飛びかかってきた唾液を拭き取り、深呼吸して怒りを抑えた。「人間違いです。私は泥棒猫ではありません」

そう言った途端、なぜか彼女がさらに大きな声で泣き出した。彼女の父親が娘の鬱憤を晴らすために、アザができるほど強く私の腕をつねった。

「ここまで来ておいていて、認めないというのか?認められなかったら、認めるまで叩いてやる」

私は顔を背け、歯を食いしばった。

「これは私の家です。なぜ私が帰っちゃダメですか?」

ずっと啜り泣いていた文美が大声で喚き叫んだ。まるでとんでもない話を聞いたかのように。

「これは私の彼氏の家だ。彼のものは私のものだ。あんたは前に、何回も私の彼氏に鍵を強要したことがあったよね、いつからあんたの家になったわけ?」

私は確かに弟に鍵を頼んだことがあった。留学する前に、私は彼に鍵を預けた。だから元々私のものだった鍵を取り戻しただけなのに、何の問題があるというんだ。

それに、この家はずっと私の名義だった。弟はただ鍵を保管してくれているだけだった。

私はここにいる人たちにリビングルームのすべての物の由来を話した。

「君たちが踏んでいるカーペットとソファは、私のおじいちゃんが特別にイタリアのデザイナーさんに頼んで手縫いで作ってもらったもの。テーブルの上に置かれた茶具は、私が18歳の時にフランスで落札したもので……」

「えっ、この家にあるものなんでも言えるじゃん、嘘をついているようには見えない。本当なのかな?」

誰かが意味ありげに文美を一瞥した。彼女は怒りに満ちていた。

「よく言えるわ!あんた人の彼氏を誘惑するために、部屋まで監視してただろう。そもそもあんた他人の彼氏を狙うのって、金のためでしょ?どのヅラ下げて家主って、笑えるわ。言っとくけど私が正真正銘のこの家の持ち主だから」

文美は鍵を取り出し、横にいる彼女の仲間も彼女に味方した。

私はまた話そうとしたが、彼女の兄は手を上げて私の頬をひっぱたいた。私の顔が熱く痛んだ。

文美の母は私の耳につけている真珠のイヤリングを指差して、軽蔑のこもった声で言った。「その真珠のイヤリングをつける資格があんたにある?もしかしてあたしの婿に買ってもらったもの?」

「ビッチめ、お前みたいな奴はネットに晒されて、一生外に出れない恥をかかせるべき」

「視聴者の皆さん、いいねをお願いします。今日はただの泥棒猫を制裁するだけじゃなく、淫乱女を捕まえたんだよ」

「淫乱女は金を払えば何でもやれそうだね。もしかしたら、おじさん相手でもできるんじゃない?」

他の配信者が意味ありげに言って、嫌悪そうな顔で私を睨んできた。

配信ライブの人気がますます高まり、私を指さして暴言を吐く人も増えつつある。私にだけではなく、私の家族まで酷く言われた。私はコメントを見たくなかったのに、文美の父親が私の頭をしっかりと押さえつけ、強引に見せてきた。

みんなを味方にした文美はもう後ろに隠れて泣くのをやめた。彼女はついに仮面を取り、私の真珠のイヤリングを無理やり引き裂いて奪った、血が耳全体に流し出した。

強烈な痛みに襲われ、私は声を出さずにいられなかった。周囲から喝采の声が聞こえた。

「よくやった、最高!」

「泥棒猫にはこうしなくっちゃ、やっと制裁の始まりだ」

鼓舞されて、文美は頭を上げ、イヤリングを私の顔に投げつけた。それから手を振りながら皮肉を言った。「こいつおじさん臭がするから、私は自分の手を汚したくないわ」

彼女の兄は片手で私の足を押さえ、もう片手で私の太ももを撫で回した。私は気持ち悪さを耐え、一生懸命に逃げようと足掻いた。そのうち足が兄の顔に蹴り付けたおかげで、やっと逃げられた。

文美の母は叫んだ「恥知らずめ、あたしの息子まで狙う気?」

「あんな人が?忠告しておきます、猥褻は犯罪です!」

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