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第584話

由佳は翔の表情をじっと見つめて、彼が言っていることが本当なのか嘘なのか、すぐには判断できなかった。

もし本当なら、あの女性とは一体どんな関係なのだろう?どうして美咲に話せないのか?

もし嘘なら、彼がこんなことを言う意味は何なのか?

まだ何か聞こうとしたその時、突然携帯のベルが鳴り響いた。

由佳は携帯を取り出して画面を確認すると、一隆からの電話だったのに気付いた。心臓が少し早く鼓動し、翔に軽く目で合図を送り、少し離れて電話に出た。

「優輝は捕まった?」電話に出るなり、由佳は急いで聞いた。

電話の向こうで一隆は申し訳なさそうに答えた。「すみません、捕まえられませんでした。優輝は他の誰かの手に落ちました」

由佳は一瞬固まり、心の中がざわめいた。「他の誰かの手に?」

それは優輝を救出するために、黒幕が送り込んだ者たちなのだろうか?

そうなると、もう優輝を捕らえるのは難しくなるかもしれない。

歩美は証言したがらないし。

どうすれば......父の仇を討てるのだろうか?

「そうなんです。優輝を追っている最中に、二つのグループに妨害されました。後からわかったことですが、その二つのグループは別々の目的で動いており、一方は優輝を救おうとしていたようですが、もう一方の目的は不明です。そして、優輝は後者の手に落ちました」

由佳は少しだけ安堵の息をついた。

優輝が救出されなかったのなら、まだわずかにチャンスが残されている。

「そのグループの正体と、優輝を捕らえた目的を突き止めてください。急いでくれたら、報酬を増やします」由佳はそう指示した。

陽翔が逃げたのは仕方がないことだった。だが颯太の情報によれば、海斗と優輝は知り合いである可能性が高かった。優輝を捕まえれば、海斗も特定できるだろう。

今はただ、優輝が早く捕まることを願っていた。時間が経てば経つほど、海斗が逃げる可能性が高くなる。

「わかりました」

電話を切った後、由佳が再び振り返って、翔の姿はすでになかった。

由佳は特に気にせず、再び客間に戻った。

その頃、翔は部屋の中で誰かに電話をかけ、「優輝は奴らの手には落ちていない。別のグループに捕らえられた。すぐに追跡して、必ず優輝を手に入れるんだ」と指示を出していた。

部下は、優輝が捕らえられたと報告した。翔はそれが由佳の手下によるものだと思ってい
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