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第 0305 話

「ありがとう」

話は一旦置いておいて、州平が彼女を助けたのは紛れもない事実だった。

州平はもともと怒り心頭で、酒を飲んでも気持ちは少しも和らがなかった。先ほどの男の言葉が、まさに追い打ちをかけるようなものだった。

今、海咲が「ありがとう」と言ったのか?

州平は冷たく唇をひとひねりして言った。「礼儀を重んじてるだけだ。『ありがとう』なんて言う必要はない」

海咲の喉が詰まった。

彼はただ恩を返しているだけだった。

それで良い。

これでお互いに借りはない。

海咲は唇をかみしめ、少しの沈黙の後にようやく州平の言葉を受け入れた。「これから帰りますか?」

「少し待ってくれ」

「うん」

海咲は深く考えず、州
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