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第61話

霜村涼平は、ベッドに横たわっているのが和泉夕子だと気づいたとき、思わず驚愕した。

林原辰也が倒れたばかりなのに、彼女はもう望月景真にすり寄っているとは、その速さに驚かされる。

彼は、かつて和泉が雨の中で傘を拒んだ姿に対して好感を持っていたが、今では彼女が非常に計算高い人物であると感じていた。

少し考えた後、彼はその写真を兄に送信することにした。

望月景真は彼の妹との婚約者であり、和泉夕子のような女性が彼に近づくことは決して許されない。

彼自身が直接干渉するのは適切ではないと判断し、この問題を兄に託すことにしたのだ。

別荘に戻っていた霜村冷司は、その写真を目にした瞬間、表情が一変した。彼はすぐに霜村涼平にメッセージを送った。

「これ、いつ撮った?」

霜村涼平はすぐに返答した。

「ついさっき。もう噂は広まってるよ」

霜村冷司はそれ以上メッセージを送らなかったが、スマートフォンを握りしめる手が震えていた。

和泉夕子は、富裕層の間で彼女と望月景真の噂が広まっていることをまったく知らなかった。本当は少し休んでめまいが治まったら帰るつもりだったが、気づかぬうちに深い眠りについていた。

望月景真は彼女が気を失ったのではないかと心配して軽く揺り動かしたが、ただ眠っているだけだと分かり、安堵した。彼は眉をひそめながらしばらく彼女を見つめ、毛布をかけて部屋を出た。

プレジデンシャルスイートの外に出た彼は、冷静な顔つきでドアの前に立っていた望月哲也に尋ねた。

「本当に彼女とは過去に何もなかったのか?」

望月哲也は平然と答えた。「そうです。数年前、孤児院に行って院長に確認されたじゃないですか?」

彼が病院から望月家に戻った直後、和泉夕子は何度も彼を訪ねてきた。彼は記憶を失っており、過去に触れることに対して強い不安を抱いていた。それにもかかわらず、和泉は毎日彼の前に現れ、どんなに拒んでも諦めなかった。

彼女が繰り返し説明していたのは、ただ一つ。「なぜ身を売ったのか」という理由だった。彼女の言葉は真実味があり、すべては彼を救うためだったと言う。

だが、望月景真はその言葉に納得できず、最終的に望月家の人々に頼んで、彼を孤児院に連れて行ってもらった。

孤児院の院長は、和泉夕子が昔から高い地位を狙っており、彼が望月家の一員になったことを利用して、自分が彼の恋人だ
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