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第172話

桜井雅子は心の中で不安を感じていた。彼女は藤沢修の隣に座りたかったが、彼がすでに指定した場所があったので、仕方なくそこに座り、不安そうに両手を握りしめた。「修、一体どういうことなの?」と問いかけた。

藤沢修は言った。「前回のリゾートの件、若子にちゃんと説明してくれ。あれは一体どういうことだったのか」

桜井雅子は驚いた表情で二人を見つめ、特に藤沢修を見るその目にはさらに驚愕が走った。「修、なんで急にそんなことを持ち出すの?」

修が松本若子をここに連れてきたのは、彼女にリゾートでの出来事を説明させるためだったのか?修がこんなことをするなんて、彼女の気持ちを考えてくれているのかしら。まるで松本若子に自分を辱める理由を与えているかのように感じられた。

松本若子もまた、これがまったく無意味だと感じた。「彼女に何を説明させるの?私にはあなたが何を考えているのか本当にわからない」

「俺の考えは単純だ」藤沢修は言った。「俺が何を言っても、お前は聞こうとしないし、聞いても信じない。だから、雅子から直接説明させるんだ。俺と彼女が一緒に、何が起きたのかちゃんと説明するよ」

「そんなことに付き合う時間はないわ」松本若子は立ち上がって、立ち去ろうとした。

だが、藤沢修は彼女を逃がすつもりはなく、さらに強く彼女の腕を掴んだ。「今日はこの話が終わるまで、誰もここを離れない」

彼は本気だった。

「言えよ」藤沢修は桜井雅子を見つめ、「お前が前回俺に話したことを、そのまま若子にも話せ。どういうことだったのかを」

藤沢修の声には明らかに苛立ちが込められていた。

桜井雅子はこんな展開になるとは夢にも思わなかった。彼女は緊張して震えた。

前回、修に話した内容をそのまま松本若子に伝えるしかなかった。もし別の言い方をすれば、修がその場で自分を否定するだろう。

桜井雅子は覚悟を決め、意を決して言った。「前回、修が私をリゾートに連れて行ったとき......」

彼女は藤沢修の威圧感に負け、仕方なく、すべてのことを正直に話し始めた。

彼女が藤沢修に説明した通りに、松本若子にも同じ内容を話した。

松本若子はその話を聞き終えた後、しばらく沈黙していた。

最初は信じられなかった。彼らが関係を持たなかったなんて、そんなはずがないと思った。

しかし、桜井雅子の瞳に浮かんでいた怒りと悔しさの表情
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