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第8話

夜になり、私は一人で病院を訪れ、病室の前で待っていた警備部長が私を出迎えた。

「わざわざご自身で来られるなんて、そんなご心配には及びません。私がここで見守っていますから」と、彼は敬意を込めてドアを開けながら言った。

「いいのよ、やっぱり一度顔を見ておきたかったの。今回は本当に助かったわ」

この警備部長は私の信頼する部下で、彼が私たちの会社に来たのは、数年前、職を失って家族を養う手段がなく、警備員の仕事を求めてきたときだった。当時、ちょうど私が会社を引き継いだばかりで、どこか他人事と思えず、警備部に彼を迎え入れたのだ。

すると、彼はとてもよく働き、夜勤や残業もこなしては手を抜かず、盗難防止などでも活躍してくれた。人柄もよく、私は彼を次第に昇進させて、安保部の要となった。今では、彼がいるおかげで警備部の士気も高まり、若い社員たちも彼を尊敬している。

その日、私は出勤途中に彼に相談し、義姉の弟にひと芝居打つように頼んでいた。彼に力のある部下二人を配置し、義姉の弟を適度に刺激して手を出させる作戦だった。義姉の弟の性格上、警備員に止められたら必ず腹を立てるだろうと読んでいた。そして案の定、彼は手を出し、これで彼に「社員への暴行」という罪状を突きつけることができ、父も彼らの要求に応じることはなくなるだろう。

私が入ってくると、ベッドに横たわっていた警備員は急いで起き上がり、満面の笑みを浮かべて私を見た。

「いつになったら退院できるんですか?一日中寝ているのは慣れなくて」

「お前、シングルの高級病室にいて、給料も支払ってさらに手当ももらってるんだぞ。これ以上贅沢は言うな」と、警備部長が冗談交じりにからかう。

「大丈夫か?怪我してない?」私は少し心配だったが、映像では義姉の弟は体力もなく、喧嘩もお粗末な感じだったとはいえ、実際に大丈夫かと気になった。

「全然平気です。小さいころから武術をやってて、あの細腕細足じゃマッサージみたいなもんでしたよ」

彼の言葉に安心し、これで会社の中では少しは平穏な日々が続きそうだと、ほっと胸を撫で下ろした。
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