第12話

周りを見回すと、とても不思議な感じがした。

彼女はまた戻る道を忘れた。

スマホを取り出してナビゲーションしようと思ったが、住む場所を忘れた。やっとのことで思い出した。

辰夫はずっと彼女を尾行していた。啓司が離れた間もなく、紗枝が一人で立ち止まった。心配してたまらなかった。

「紗枝」

啓司が戻ったと思った。

少しは期待したが、振り返った瞬間、彼女はがっかりした。

辰夫は彼女に駆けついた。「僕の事を本当に覚えてないの?」

彼を見て、やはり思い出せなかった。

「辰夫、忘れたの?」 辰夫が提示してあった。

やっと思い出した。子供の頃、出雲おばさんと一緒に田舎に住んだ時の知り合いだった。

当時、辰夫は非常に太っていて、自分ほど背が高くなかった。今では190センチの背の高い男になり、顔も大人気になった。

「思い出した。すごく変わったよね。見て分からないよ」

久しぶりに親友と会えて嬉しかった。

無理に笑いを作った彼女の顔を見て、彼は悲しくなった。

「行こう、家まで送る」

送ったら、彼女がボロボロのホテルに住んでいることに気づいた。

黒木家のような裕福な家族は、たとえ離婚したとしても、彼女にこんなところまでさせないだろう。

紗枝は少し窮屈と思った。「まずいところを見せてごめん！

「ここに住むこと、おばさんに内緒でね。彼女が心配するから」

辰夫はうなずいたが、どうやって彼女を慰めるか分からなかった。

遅かった。

彼はここに長くいてはまずいと思った。

明日に会いに来ると伝えて帰った。

ホテルを出て、駐車所に黒い車が止まっていたことに気づかなかった。

紗枝にとっては、どこに住んでも同じだと思った。

辰夫が離れた。

お酒のせいで胃が痛み始めた。眩暈もした。

頭の中に啓司の言葉が浮かんできた。

「鬼みたいだ!

「この格好、どんな男に好かれると思うのか?」

彼女は力込めて顔の化粧と口紅を拭き始めた。荒い動作で青白い顔は赤く腫れた。

うつ病のことを知った後。

彼女は病気についての情報をググった。

うつ病の患者は脳に損傷を与える可能性があり、記憶喪失を引き起こすだけでなく、認知機能障害につながる可能性もあり、これにより人々は常に不幸なことについて考え、不幸なことを拡大してみる可能性がある…

「バン! バン!!」

ドアをノックする音がした。

辰夫が戻ったと思い、立ち上がってドアを開けた。

ドアが開くと同時に手首を啓司に掴まれちゃった。

力が込められたので、彼女は細い手首が折れるかと思った。

「紗枝!刮目するよ!」

啓司はドアを閉め、無造作に彼女をソファに連れ込んだ。

「なるほど、相手を見つけたのか。どうして手放せるかと不思議に思った!」彼は嘲笑した。

彼の言葉はナイフのように彼女の心を刺した!

辰夫を見て、彼は誤解した。

紗枝は理解できなかった。どうして彼が初恋を偲んでもいいが、自分は何をしてもダメなのか。

彼女は怒っている啓司をまっすぐに見て、目が赤くなった。「私たちはお互い様だ」

夏目家は結婚をだました。

啓司は3年間彼女を冷たく扱ったと同時に初恋と親しくしていた。

誰もが気高いとは言えない。

啓司も今日、お酒をたくさん飲んだので、酒臭かった。

紗枝のあごを掴み、目が赤くなり、低い声で聴いた。

「彼は誰だ?

「いつ知り合ったの?」

紗枝がこのような啓司を初めて見たので、不意に笑った。

「嫉妬しているのか?」

啓司が一瞬唖然としたが、すぐ嘲笑した。

突然紗枝を押し寄せて、耳元で続けて尋ねた。

「彼ととっくに寝たのか?」

結婚して3年間、黒木家のルールで、彼女は仕事を辞め、友達の誘いも断った。

しかし、啓司が彼女を疑ってきた…

この瞬間、彼女は突然気楽になった。

「どう思ったの?」彼女は聞き返した。

これで啓司を完全に激怒した。彼は大きな手を振ってきた。

全身の血液が止まったように、彼女は目の前で起こったことを信じられなかった。

断りたくて、抵抗したくて、全て無駄だった。

全てが終わり、啓司はやっと落ち着いた。

外は少し明るくなった。

痩せ細い紗枝を見て、またシーツにあるまばゆい赤色の所を見て、空しくなった。

「ポン!」

紗枝は手を挙げて、彼のハンサムな顔にパンチを食わせた。

このパンチは、彼女の愛への全ての幻を壊してしまった。

彼女の鼓膜は膨らみ、啓司からの話を聞こえなくなった。

「出て行け!」

どうやって出ていたか啓司はわからなかった。

頭に浮かぶのは昨夜の光景だけだった。

車に乗り込むと、彼は電話をかけ、助手の牧野に命令した。「調べてくれ、紗枝が知り合った男は誰？」

牧野は少し混乱していた。

紗枝が結婚した後、毎日啓司ばかり、どこのだれかと知り合えるのか?

…

ホテル内。

啓司が離れた後。

紗枝は何度も何度も体を洗った。

離婚寸前に、あんな事されて、あまりにもばかげて哀れだった。

朝9時、辰夫が朝食を持ってきた。紗枝の異常に気づかなかった。

「昨夜は急いで帰ったので、言い忘れたことがある。丁度空いてる部屋がある、君が住んでもいいと思った。

「女の子がホテルに住むのは危ない」

紗枝は首を振って拒否した。

借りを作りたくなかった。

辰夫は彼女が断ると思った。「どうせ空いてるし、家賃をもらうから」

「でも、せいぜい一ヶ月しか住まないよ」

「一か月でもいい、空くより増しだ」

辰夫は、どうして彼女が一ヶ月しか住まないのか知らないが、これからは時間があるからと思った。

車で紗枝を送った。

彼女はスーツケース一つで、他の荷物がなかった。

車に乗り込んだ。

辰夫は紗枝と子供時代の話をし始めて、それからここ数年何をしてきたかを率先して彼女に話した。

高校卒業後、彼は海外に出て、海外で働きながら勉強し、20歳で自分の会社を立ち上げ、今では金持ちとも言えた。

紗枝は彼の豊かな履歴を聞いて、再び自分自身のことを考えた。

卒業後、啓司と結婚し、主婦となった。

彼女は感心して辰夫を見た。「辰夫は凄いよ」

「君も悪くない。田舎を出た後、テレビで見たよ。ピアノコンクール受賞したし…また歌も。知ってるか、僕は君のファンなの…」

辰夫は紗枝に話さなかった。

一人身で外国で留学していた頃は、最初に順調ではなかった。彼は悪いことをたくさん学び、自暴自棄したこともあった。

紗枝がニュースになったことを見て感心した。聴覚障害があるにもかかわらず、音楽の才能を発揮できるなんて。