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第723話

翔太は二人の間に割って入り、毅然とした態度で言った。「もういい、兄弟で争うことはないだろう。今後、遥輝はすべての相続権を放棄するから、彼を連れて行かせてくれ。もう一度と君の前には現れない」

それでも翔太の言い方は高圧的で、まるで自分が何も間違っていないかのようだった。

幼い頃の峻介なら、きっと傷ついていただろうが、今の峻介はただ血走った目をゆっくりと翔太に向け、口元に冷たい笑みを浮かべながら、まるで悪魔のように言葉を発した。「元々僕のものだ。遥輝がそれを放棄する資格があるか?佐藤翔太、僕なら今すぐここを去るね。目障りだ」

「僕を何と呼んだ?」と翔太が問い返した。

かつて峻介は「佐藤さん」という敬称を使っていたが、今や名前をそのまま呼び捨てにしていた。峻介はそれ以上話す気もない様子だった。

峻介は遥輝を冷たく見下ろしながら言った。「話さないのか?方法はいくらでもある」

そう言って峻介は遥輝の腕を掴んで、地面を引きずり始めた。遥輝はすでに血を流していたため、その光景はまるで遺体を運んでいるようだった。

遥輝の人生は峻介に比べて順風満帆だった。両親の愛情に包まれて育った彼は、こんな屈辱を味わったことは一度もなかった。

今になってようやく彼は本当の恐怖を感じた。峻介は昔の彼とはまるで別人だった。

「父さん、助けてくれ!」と遥輝は助けを求め始めた。

峻介が彼をこのように扱っていることからすれば、見えない場所ではもっと残忍なことをしてくるかもしれない。

事態は翔太の手に負えなくなっていた。翔太は仕方なく携帯電話を取り出した。

今はもう何もかも構っていられなかった。ただ遥輝が峻介の手から生き延びてくれることを願っていた。

「離せ、さもないとすぐに警察に通報するぞ」

峻介は足を止め、冷たく翔太を一瞥し、「警察?お前にその機会があるとでも思うか?」と言った。

その瞬間、峻介は顎をわずかに上げた。昇がすぐに翔太の携帯を取り上げた。

「峻介!お前は一体何をするつもりだ?」と翔太が叫んだ。

峻介はまるで人間の外皮をかぶった悪魔のように冷たい目で彼らを見つめ、「佐藤翔太、僕はお前に出ていく機会を与えた。これはお前が選んだ道だ。お前たちが客としてここに留まりたいなら、僕は東道主としてしっかりもてなしてやるよ。鳴海執事、この二人を母さんがいた内庭に連れて行け」

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