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第633話

この展開、あまりにも急だった。

何だって?

月咲が底なしの浮気相手であったとは。品性が悪いだけではなく、かつて彼女にいじめられた人たちが次々と声を上げ始めた。

彼らの中には、重度の鬱病を患い、一生をかけて自分を癒さなければならない人もいた。

さらには、子どもが月咲に誹謗中傷され、自殺してしまったという両親が、白髪の姿で古びた写真を手に、彼女の行為を訴える様子が映し出された。

月咲の元教師、同級生、近所の人々までもが彼女の過去を語り始めた。

芸能界のメイクアップアーティストやスタイリスト、さらには下積みのスタッフたちがモザイク付きで月咲の日常の横柄な態度を告発した。

最も驚いたのは、複数の清掃員やサービス業の人々が、月咲に同じ手口で詐欺に遭ったと証言したことだった。

その日の月咲と優子の対立の詳細が明らかになり、優子が持っていた本物のドレスも世間に公開された。

硫酸をかけた犯人はカメラの前で号泣し、自分が誰かに雇われて故意に行動したと白状した。

誰が正しくて誰が間違っているのか、もはや誰の目にも明らかだった。

優子が硫酸をかけられ、暗殺されかけ、サトーグループが無実のまま他社に攻撃されて多大な損失を被った事実は浮かび上がった。

サトーグループは、この機会を利用して事を荒立てた者たちに厳しい制裁を課した。賠償が必要なものには賠償を、拘留が必要な者には拘留を。

必要なものをすべて明らかにし、起訴すべきものは起訴した。

一瞬で局勢が変わり、世間の人々は優子を罵ることから、優子を憐れむことに変った。

以前あれだけ激しく罵っていた人たちも、今では申し訳ない気持ちでいっぱいになり、サトーグループの全ての店舗で買い物をするなどの姿勢を示し始めた。

一夜にして風向きが変わり、サトーグループが失ったものは、これから数倍にもなって取り戻されるだろう。

だが、峻介はそれに気を留める余裕はなかった。

漆黒の夜、優子はすでに眠りについており、峻介は一人、ベランダでタバコを吸っていた。

白い煙に包まれた彼の表情は冷たく、優子の前で見せる優しさや気遣いはそこにはなかった。

昇と進が無事に彼のもとに戻ってきた。

ベランダの明かりは消えていて、薄暗い庭の灯りが彼らの背の高いシルエットを浮かび上がらせていた。

「佐藤総裁、遥輝は午後には国外に出ました」

峻介
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