第501話 急げ、手を離せ

次長は戸惑った。「田中社長、どうしてそんなことを……佳世子さんは最近……」

「会社で眠くなることが問題だと誰が決めた？」晴は次長に言葉を続ける機会を与えずに続けた。

「晋太郎か？なら、後で彼に確認しよう。この規則は彼が作ったのか、それともお前が勝手に作ったのかをな」

次長は恐れおののいた。「そ、それは……」

晴は鼻で笑い飛ばし、すぐに佳世子の方へ手を差し伸べて彼女の手首を掴んだ。「行くぞ」

佳世子は抵抗しようとしたが、晴に引き寄せられ、そのままエレベーターの中に連れ込まれた。エレベーターの扉が閉じると、佳世子は晴を押しやり、口を尖らせた。「あなたに助けられる必要なんてないわよ」

佳世子は強がりながらも、内心では少し嬉しかった。親や友人以外の人間がこんな風に彼女のために庇ってくれることはなかったからだ。この数日間、彼女の体はつかれたままで、誰かと喧嘩する元気さえなかった。だから晴が彼女を助けてくれたのは感謝すべきことだった。

「違うよ、ただ庇うだけさ」晴は微笑んで言った。

佳世子は小さく鼻を鳴らした。「草食系の男なんかと話したくないわ」

晴は急いで弁明した。「静恵や他の女性とは何もなかったし、変な考えも持たないよ！嘘をついたらこのエレベーターが故障するようにするから！」

「何言ってるの！」佳世子は慌てて彼を制止した。「あなたひとりで死にたいならそう言ってよね！」

晴は佳世子の手を取り、「佳世子、晋太郎に関することについては詳しく話せないんだけど、僕の気持ちだけは本物なんだよ。もし君が僕を許してくれるなら、すぐに君を両親に紹介したいんだ」と伝えた。

晴の真剣な顔を見て、佳世子の心は揺らぐ。「本当のこと言ってるの？」と佳世子は小さな唇を尖らせて尋ねた。

晴は頷いた。「本当だよ！君が落ち着いたら、僕たちだってちゃんと話をしよう」

佳世子は晴の足を蹴った。「落ち着いていないのは私だけじゃないわよ！」

晴は痛みを感じつつも佳世子の発散を受け止めた。「もし気持ち悪いならもっと蹴ってもいいよ」

佳世子はその提案に応じてさらに二度蹴った。

「うぐっ……」晴は痛みに耐えながらしゃがみ込み、足首を強く握った。

佳世子は驚き、すぐにしゃがみ込んで言った。「ねえ、晴君、あなたが蹴るように言ったんだから、本当に痛かったの？」

晴はそこで佳世子を再び自分の胸