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第398話 いつでも相談に乗ります
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森川晋太郎の頭に最初に浮かんだのは入江紀美子のことだった。彼は急いで携帯を取り出し、紀美子に電話をかけた。今、紀美子はきっとパニック状態になっているはず！彼女に連絡しなければ！しかし、いくら電話をかけても、電源が切れていた。晋太郎はイラついてネクタイを引っ張り、事務所に向かって早足で歩き出した。暫く考えた後、彼は渡辺裕也に電話をかけることにした。しかし、裕也も出なかった。「晋様、晴さんに電話してみたらいかがでしょうか？」杉本肇はその様子を見て、晋太郎に提案した。晋太郎はハッと我に返り、すぐ田中晴に電話をかけた。晴はすぐに電話に出た。「もしもし？」「今どこだ？」晴のだるそうな声を聞いて、晋太郎は厳しい口調で言った。「家にいるけど、両親のことを聞きたいの？帰ったらちょっとビビっちゃった」「そのことじゃない！」晋太郎は彼の言葉を打ち切った。「渡辺翔太の車が墨馬川に転落したんだ。なのに、紀美子に連絡がつかないんだ！」「はっ？」晴は急に目が覚めた。「翔太が墨馬川に転落した？！」「今すぐ現場に行け！紀美子は絶対そこにいるはずだ！紀美子に電話を替わって！」「彼女はそこにいないって！」晴は考えもせずに言ってしまった。「どういう意味だ？」晋太郎は眉を寄せた。晴は自分が失言したことに気づいた。「な、何でもないよ。今すぐ行ってみる」「晴！」晋太郎は怒鳴った。「何か隠してるんじゃないのか？」「そんなことないって……」晴は動揺して言った。「自分で調べさせる気か？」晋太郎は脅しのように言った。「うそをつかれるのが一番嫌なんだ！」晴は電話越しに晋太郎の怒りを感じ取り、もはや隠せないと悟り、ため息をついてから言った。「もう直接言うね。結婚式の夜、静恵が紀美子に向かって二発撃ったんだ。二発とも胸に当たって、今ICUにいる。危険な状態だよ」晴の言葉を聞いた瞬間、晋太郎の頭は真っ白になった。体は氷のように冷たくなり、胸に激しい痛みが走った。紀美子が連絡を返してこなかったのは撃たれたからだったのか……彼は何も知らずにただA国で問題処理に追われていた！！すぐ帰国しなければ……彼女のそばに行くんだ！冷たいICUで一人で待たせるわけに
会社を辞めてから始まる社長との恋 第910話
「お気になさらないでください。状態が良ければ、明日の夜にはICUを出られると思います」医者は言った。「はい、ありがとうございます！」裕也たちは頷き、返事をした。医者が去った後、ゆみは裕也を見つめ、両手を差し出して言った。「お願い、抱っこして。ゆみはママを見たいの！」裕也は笑いながら言った。「よしよし、抱っこしてママを見せてあげるよ」そう言いながら、彼は腰をかがめてゆみを抱こうとした。その瞬間、突然彼の携帯が鳴った。「ちょっと待ってね、ゆみ」裕也はゆみをあやしながら言った。ゆみはおとなしく頷いた。そして裕也は携帯を取り出し、電話を取った。「もしもし？どちら様ですか？」「こんにちは、こちらは警察署です。渡辺裕太さんでいらっしゃいますか？」「はい、私は渡辺裕太ですが、どうしましたか？」「渡辺さん、翔太さんはあなたの甥っ子ですか？」「はい、翔太はどうしたんですか？」裕太は少し驚いて言った。「渡辺さん、すぐに筑林橋まで来ていただけますか？翔太さんの車が20分前に墨馬川に転落しました」その言葉を聞いた瞬間、裕太は目の前が真っ暗になった。彼は足元がふらつき、壁にぶつかってようやく少し我に返った。真由は裕太の異常に気づき、眉をひそめて尋ねた。「あなた、何かあったの？」裕太は手が震え、携帯を床に落としてしまった。「翔太が……」彼は唇を震わせながら言った。「何があったの？」真由は瞬時に嫌な予感がし、尋ねた。「翔太の車が、墨馬川に転落したんだ」それを聞いた真由は、まるで雷に打たれたようにその場で立ち尽くした。三人の子供たちは驚き、目を大きく見開いて顔は真っ青になった。裕太は必死に冷静を保とうとして言った。「俺、現場に行ってくる！真由、君は子どもたちを見ていて！」そう言って、裕也は急いでエレベーターに向かって走った。真由は膝が抜けたようにその場に座り込んでしまった。子供たちは慌てて駆け寄り、彼女を支えた。「おばあちゃん！」真由は目を赤くして、涙が止めどなくこぼれた。彼女は顔を覆い、歯を食いしばりながら泣き叫んだ。「私は一体、何をしてしまったの……」その頃。裕也から知らせを受けた瑠美はすぐに現場に向かった。車から降り、
会社を辞めてから始まる社長との恋 第909話
「友達？」朔也は嘲笑しながら言った。「それをお前が口にする資格なんてあるのか？」翔太が朔也を一瞥し、何か言おうとしたその時、携帯が鳴り響いた。彼は携帯を取り出し、画面に表示された真由の名前を見てすぐに出た。「翔太！」真由の興奮した声が電話越しに聞こえてきた。「紀美子が目を覚ましたわ！！」翔太の手が震え、喉が詰まった。「目を覚ました？！本当に目を覚ましたのか？」「え？！」朔也も驚き、声を上げた。「目を覚ましたのか？！危篤を脱したのか？」「そうよ、早く朔也と一緒に戻ってきて！」真由は電話越しに泣きながら言った。「分かった！」翔太は急いで個室を出て行った。「今すぐ戻るよ」二人が去っていく背中を見送りながら、悟は再びソファに座り直した。彼は淡然とした表情で携帯を取り出し、電話をかけた。相手が電話に出ると、悟は静かな声で言った。「準備はできたか？」「はい、影山さん！」……病院に向かう車の中で、翔太はスピードを上げた。朔也はまだ車内で音楽をかけていた。橋を渡る頃、朔也は車の窓を開け、外の空気を深く吸い込んだ。「翔太君、紀美子が目を覚ましたんだ。空気さえも清々しく感じる！」「そうだな、紀美子は本当に強い。これで四日目だろう？」翔太は微笑んで言った。「正確には三日半だよ。医者は五日必要だって言ってたよな？」朔也が尋ねた。「確かに」翔太は頷いた。「いやあ、本当に嬉しい！」朔也は両手を合わせて空を見上げた。「きっと神様が俺の祈りを聞き届けて、紀美子を目覚めさせてくれたんだ！」「祈り？」翔太は朔也を怪訝そうに見た。「何を祈ったんだ？」「俺の命と引き換えに、紀美子が目を覚ますようにって！」朔也は真剣な顔で言った。翔太は呆然とした。「そんなこと、簡単に口にするもんじゃない！」「ああ、祈りだからさ、そんなことが本当に叶うわけないだろ……」朔也は手を振りながら言った。「バン——」言葉が終わらないうちに、大型トラックが翔太の車の後部に激突した。突然の衝撃に、翔太はすぐにブレーキを踏んだ。だが、トラックは速度を緩めることなく、そのまま車を橋の欄干に押し付けた。重力を失う感覚が二人を襲い、意識は朦朧とした
会社を辞めてから始まる社長との恋 第908話
翔太の目には失望の色が浮かんだ。「まだ本当のことを言おうとしないのか？」悟の表情は変わらなかった。「俺が紀美子を見舞いに行かなかったからって、それだけで俺が悪者だと言うなら、朔也にでも聞いてみたらどうだ。なぜ俺が行かせてもらえなかったのか」「それは……」「朔也から理由は聞いた。でも、俺がお前を疑ってるのは、別の理由だ」翔太にまた言葉を遮られ、朔也は内心で舌打ちした。彼には翔太が悟とこんなに冷静に話せていることが理解できなかった。この状況なら、普通は直接殴りかかるべきじゃないのか？！悟はずっと彼らを欺いてきたんだぞ！紀美子も命を落としかけたのに！「いいだろう」悟は静かに言った。「じゃあ、もし俺がその影山さんだと考えているなら、証拠はあるのか？」翔太は突然冷笑を漏らした。彼は携帯を取り出し、瑠美の録音を開いて、悟の前に置き、再生ボタンを押した。二人の会話が、クリアに悟の耳に届いた。彼の茶色の瞳に、一瞬だけ意味深な感情がよぎった。なるほど、あの日の鉄の塊は確かに誰かが置いたものだったのか。悟は黙ってそれを聞き終え、笑いながら言った。「これがいわゆる証拠か？」翔太はテーブルの下で握りしめていた手をさらに強く握りしめた。悟の精神力を見くびっていた。これほど明らかな証拠を突きつけてもなお、認めないつもりなのか？朔也はついに堪えきれなくなった。「悟、はっきり答えろよ！いつまでもはぐらかしてんじゃねえ！」悟は軽くため息をつき、冷静に言った。「朔也、言うべきことは前にもちゃんと言ったはずだ。今日君たちが突然こうやって俺を責め立てに来るってことは、俺たちの間に本当の友情なんて最初からなかったってことだよな。俺は君たちと出会えたことを本当に嬉しく思ってる。でも、どうしていつも俺を疑うんだ？紀美子が好きだというだけで、晋太郎が紀美子を奪ったからって、俺が愛憎に駆られたと考えたのか？」朔也は怒りに任せてテーブルを拳で叩きつけた。「悟、そんな感傷的な話で俺を丸め込もうとするな！もうその手は通じねえ！」「事実を述べているだけだ」悟は言った。「事実だろうがなんだろうが、今や紀美子を除いて、みんなお前の企みを知っているんだ！そんな風に隠し通そうとして、晋太郎が戻ってきたらお
