食事を終えた後、佳世子は藤川別荘に向かった。ちょうど紀美子が子供たちを散歩に連れ出す準備をしていると、佳世子が車で庭に進入してきた。「おばちゃんが来たよ!」ゆみが佳世子の車の側へ走り、ドアが開くと元気な小さな手を上げて「おばちゃん抱っこ!」と言った。佳世子はゆみを抱き上げ、彼女の小さな鼻を軽くつつく。「お嬢ちゃん、お出かけするところなの?」ゆみは素直に頷いた。「ママが外に連れて行ってくれるんだ。おばちゃんも一緒に行く?」「もちろんだよ!」佳世子はゆみを抱いたまま紀美子のところへ歩み寄り、「一緒に行くけど、ちょっと頼みたいことがあってさ」紀美子は佳世子が何か頼み事があることに少し驚いた。「いいよ、行こう」散歩道を歩きながら、佳世子は子供たちと少し話した後、紀美子に切り出した。「紀美子、ジョーソンさんに連絡してもらえる?」紀美子は少し戸惑った。「あなたが師匠にデザインを依頼したいの?」佳世子はにっこりと笑った。「そうだよ!晴が私に服を作ってくれるって言ってたんだ」紀美子の目には楽しげな光が浮かんだ。「プロポーズや結婚式用のドレスかな?」佳世子は少し顔を赤らめ、「それは知らないけど、晴が気を遣ってくれてるだけでうれしいわ」「わかったよ!」紀美子は快く承諾し、「今すぐ連絡するわ」紀美子はスマートフォンを取り出し、ジョーソンにメッセージを送った。「師匠、今忙しい?」普段、紀美子は師匠を邪魔しないようにしている。師匠からは、特に何かなければ連絡する必要がないと言われていた。用事があるときはまずメッセージを送り、師匠が暇であれば返信してくれる。数分後、ジョーソンから電話がかかってきた。ジョーソンは電話越しに笑いながら言った。「G、何か用かな?あまり長話はできないよ、今S国でデート中なんだ」紀美子は内心苦笑いを浮かべた。「師匠はまた男の子と遊んでるんだね」紀美子は佳世子の願いを簡単に説明し、ジョーソンは笑いながら答えた。「そんな小さなこと、頼む必要ないけど、今はまだ行けないんだ」紀美子は佳世子に伝えた後、佳世子が電話を直接受け取るように指示した。紀美子はスマートフォンを佳世子に手渡した。佳世子はスピーカーモードに切り替え、「ジョーソンさん!
日曜日。紀美子は白芷と三人の子供たちに約束していた。今日は遊園地に連れて行くと。チケットを予約した後、紀美子は子供たちと白芷と一緒に出発した。遊園地に着いたのはちょうど十時だった。11月も近づき、気候はとても快適で、寒すぎず暑すぎず、すべての乗り物も稼働していた。白芷は遊園地の入口から、中央にある最も高い観覧車に目を奪われていた。紀美子は白芷の気持ちを察して、「白芷さん、観覧車に乗ってみたい?」と尋ねた。「そうね」白芷は観覧車を見つめながら、遠い目をして呟いた。「誰かと一緒に乗ったような気がするわ……」「私知ってる!」そばでゆみが笑いながら言った。「きっとおばあちゃんの彼氏よね!」紀美子は苦笑いを浮かべ、「勝手に言っちゃダメよ」ゆみは舌を出して、「ママ、おばあちゃんに冗談を言ったの」白芷は首を傾げ、「彼氏?」と聞き返した。紀美子は話を逸らし、「白芷さん、ゆみが勝手に言ってるだけです。観覧車に乗るなら、あとで行きましょうね」白芷は笑みを浮かべ、「そうね。まずは子供たちと一緒に他の乗り物に乗ろう」「おばあちゃん万歳!」ゆみが喜びの声を上げ、白芷の手を引いてバンパーカーのエリアへ駆け出した。紀美子は佑樹と念江も連れて歩いて行った。渡辺家のほうでは、静恵が寝ぼけている間に記者からの電話がかかってきた。静恵が電話に出、眠そうな声で「何?」と尋ねた。「狛村さん、こちらでは記事を書きましたが、今公開するのが良いと思いますか?」静恵は時間を確認し、あくびをしながら「早いわね。書いたら公開して。電話をかけてくるのは暇なのかしら?」記者は笑いながら「了解しました。すぐ公開します」静恵は電話を切り、スマホの中で晋太郎の写真を探し出した。彼女の指先は晋太郎の美しい横顔に触れ、残念そうに——晋太郎,あなたをこんな目に遭わせるのは嫌だけど,あなたが私を突き離したからよ。あなたが恨むなら,恨むべきは紀美子だ。十分も経たないうちに,記者が公開した情報はすぐにトレンドのトップに躍り出ていた。この事態を知った杉本肇の顔色が変わった。彼はすぐに晋太郎に報告した。病室の中では、晋太郎はトレンドを見つめ、怒りで目を血走らせていた。彼の整った顔には恐ろしいまでの怒り
森川晋太郎は厳しい声で、「行け!」と命令した。遊園地にて。入江紀美子は子供達に引っ張られて結構な数のアトラクションを遊んでから、漸く観覧車の所に来た。森川念江は200メートル以上ある高さの観覧車を見上げ、小さな顔は真っ白になった。彼は高い所が苦手で、とてもそれに乗ることはできなかった。ただ見ているだけで息が苦しかった。入江佑樹は一目で彼が様子がおかしいと気づき、「念江くん、気分が悪いの?」と尋ねた。念江は強がって首を振り、「大丈夫……」と答えた。しかしそう答えた途端、彼は腹を抱えて吐いてしまった。その声を聞いた紀美子と白芷は振り返り、紀美子は慌てて彼を懐に抱き込んだ。「念江くん?」紀美子は慌てて心配そうに聞いた。「どうしたの?どこか具合が悪いの?」念江は目眩をしながら、力が抜けた声で答えた。「高い……」「高い?」入江ゆみは回転していた観覧車を見上げ、「あっ!分かった!お母さん、念江お兄ちゃんは高所恐怖症だ!」紀美子は念江に確認した。「念江くん、高い所が苦手なの?」念江は下を向いて答えた。「うん……」「何でさっき教えてくれなかったの?」紀美子は可哀想にと息子の背中を撫でた。念江はきつく口をすぼめ、小さな声で答えた。「皆が楽しそうだったし、それを壊したくなかったから」心が痛んだ紀美子は念江を抱き上げ、優しい声で慰めた。「大丈夫だよ、ただのアトラクションだし、他ので遊んでもいいの」念江は母を見上げ、清らかな目線で聞いた。「お母さんはがっかりしたりはしないの?」「ううん!」紀美子は、「ゆみちゃんはお婆ちゃんたちと観覧車に乗ればいいから、お母さんは下で念江くんと一緒にいるわ」と返事した。「念江お兄ちゃんが行かないなら私も行かない、お母さん!」ゆみは言った。「僕もあまり興味がないから、残って念江くんと一緒にいる」佑樹も口を合わせた。紀美子は困った、白芷を1人で乗らせるわけにも行かなかった。白芷は紀美子の裾を引っ張り、「あなたは子供達とここにいて、私1人で乗ってくるから」と言った。彼女は、その観覧車への特殊な感覚がどこから来たかを確かめたかった。そして、自分は当初誰と一緒に乗ったのかを思い出したかった。紀美子は断った。「ダメです、白芷さん、1人で乗るのは危ないです!ちょっと待
入江紀美子は慌てて白芷追い、従業員は彼女を止めて警告した。「お客様、危険です!無茶なことはお止めください!」 近づけなかった紀美子は、仕方なく白芷の方向へ叫んだ。「白芷さん、ちゃんと扉を閉めて、中でじっとして絶対に動かないでください!!」 白芷は頷き、分かったと紀美子に伝えた。 紀美子は乗り場で従業員に促されるまで、白芷が乗っていた観覧車のゴンドラを見つめていた。 「お母さん」森川念江は母を安心させる為、口を開いた。「お婆ちゃんがアイスクリームを食べたいって言ってたから、買いに行こうよ」 他に出来ることがなかったので、紀美子は子供達を連れてアイスクリームを買いに行った。 その間、紀美子はずっと観覧車の方を眺め続けていた。 数分後、白芷が乗っていたゴンドラが頂点に近づくにつれ、紀美子の心臓も引き締まってきた。 ゴンドラが風で揺れているのを見て、紀美子も両足の力が抜けそうになった。 白芷が1人で乗ることに対して怖がっているのか分からなかったが、とにかく今は彼女が何も触らないことを祈るしかなかった。 ゴンドラの中にて。 白芷はゴンドラの座席に座り、目の前に広がった帝都の絶景を心静かに眺めていた。 彼女は当時一緒に乗っていた男性のことをだんだんと思い出してきた。 彼の名前は石原隆久。 時間が随分と経っていたので、彼の容貌はもうあやふやになっていた。 白芷はゆっくりと目を閉じ、記憶の中の隆久の優しい振る舞いを振り返った。 彼女は隆久と恋愛していた頃、一緒に観覧車を乗っていたのを思い出した。 ゴンドラが頂点に達した時、隆久は彼女にプロポーズをした。 しかしそれは思い通りにならず、隆久と結婚する一ヶ月前、彼女は森川世典に気に入られた。 森川世典は強行で彼女を森川家に連れ戻し、隆久を人質に、白芷に結婚を強いた。 そのことを知った隆久は、狂ったかのように森川家に行っき、彼女を連れ戻そうとした。 世典を怒らせた結果、隆久は息が止まる寸前まで殴られ、以降音信不通になった。 「ドカーン」という音がした。 白芷は我に返り、頭上の様子を確認した。 ゴンドラは強烈に揺れ始め、白芷は動けなくなった。 そしてすぐ、ゴンドラが急に重々しく下に下がっていくのを感じた。 白芷は自分が落下していることに
遊園地の入り口にて。森川晋太郎は車から降りると、遊園地の中からの大きな音が聞こえた。彼は胸に強烈な痛みを感じて、手で心臓の位置を抑えてしゃがんだ。杉本肇とボディーガード達がそれを見て、慌てて彼を支えた。「若様?大丈夫ですか?」肇と小原が同時に尋ねた。晋太郎は心の底から何とも言えない恐怖を感じた。彼は周りの部下達を押しのけ、窒息感と眩暈に堪えながら立ち上がり、遊園地の方へ歩いた。その時の遊園地は大騒ぎになっており、たくさんの人が観覧車の方へ走り出していた。小原は従業員を捕まえ、何が起きたのかを尋ねた。取り乱した従業員は、「観覧車のゴンドラが落ちてきたようです!」と答えた。肇はゴンドラが1つ取れた観覧車を見上げた。200メートル以上の高さだ!!人が乗っていれば、恐らく命はない……それを聞いた晋太郎は、嫌な予感がした。先ほどのわけのわからない胸の痛みは……そう思うと、晋太郎の瞳孔は猛烈に収縮し、顔を真っ白にしながら叫んだ。「紀美子……」そして彼は長い脚を動かして観覧車の方へ走った。肇とボディーガード達はその行動を見て驚いた。若様は命を捨てるつもりか?!観覧車の近くに来ると、聞き慣れた声の悲鳴が彼の耳元に響いてきた。隣のボディーガードは晋太郎が入れるように素早く人混みを押しのけた。晋太郎は走って千切れたゴンドラの前に行くと、入江紀美子と子供達が呆然とした顔でそこに跪いていた。ゴンドラの中の人は誰なのか分からなかったが、床に広がっていた血の跡は確かなものだった。晋太郎は心臓が引き締まり、慌てて紀美子を引っ張り起こした。「紀美子?どうした?怪我は?!」紀美子の両目は光を失い、まるで魂が抜けたかのように、晋太郎に肩をきつく握られても反応がなかった。晋太郎は眉を寄せ、低い声で叫んだ「紀美子!答えろ!」男の冴え切った声で紀美子は我に返った。彼女は目元がぬるくなり、涙が静かにこぼれ落ちてきた。「晋太郎……」紀美子は彼の取り乱れた俊美な顔を見て、「ごめんなさい……」と呟いた。「何がだ?」晋太郎は心臓を震わせながら、「『ごめんなさい』って何のことだ……」彼が言い終えないうちに、彼の体はいきなり固まった。恐怖が彼の瞳に広がり、血の跡がついたゴンドラに目を落とした。
入江紀美子は泣き崩れたゆみを抱き上げ、優しくその小さな背中を撫でた。ゆみは頭を母の首元に埋めて、しくしくと泣き続けた。「お母さん、ゆみ、お婆ちゃんに会いたい、会いたいよ……」紀美子は可哀想に娘の小さな体を抱きしめ、「ごめんなさい、お母さんがお婆ちゃんを守れなかった、お母さんが悪かった……」と泣きながら言った。入江佑樹と森川念江は真っ赤な目をしていて、どう声をかければいいか分からなかった。「何故だ?」ずっとそこに立っていた森川晋太郎は急にかすれた声で口を開き、死の静寂を帯びた声で聞いた。紀美子はそんな彼を見て、悔しさと呵責を同時に感じた。「ごめんなさい」晋太郎はきつく口をすぼめ、暴虐なオーラを帯びながら紀美子の前に来た。「紀美子、教えろ!何故を俺たちを滅ぼそうとしているのだ?何故俺の母を殺すんだ?!」滅ぼす?紀美子は眉を寄せ、「滅ぼすってどういう意味?」「今更知らんぷりをするのか?!」晋太郎はあざ笑い、刃のように鋭い視線で紀美子の顔を切りつけた。「紀美子、覚えておけ、このまま終わるわけがないから!母の身の後処理が済んだら、白黒つけようじゃないか」彼の冷たい声は深い恨みを帯びていた。晋太郎の冴え切った顔から、紀美子は明確な恨みを感じ取れた。紀美子は晋太郎がボディーガード達を連れて離れるまで、ずっと呆然としていた。……紀美子は家に戻って暫くした後、杉浦佳世子が来た。彼女は別荘に駆け込み、紀美子が1人でソファで体を丸めたのを見て、心が痛んだ。佳世子は紀美子の傍に座り、彼女の肩を抱きしめて、「紀美ちゃん……」紀美子は無力に佳世子の肩に寄りかかり、「うん」とかすれた声で返事した。「紀美ちゃん、自分を責めないで、今回のことはあなたのせいじゃないわ」紀美子は心配そうに慰めた。紀美子は苦笑いをして、「私のせいだわ、私が止められなかったから、私はこの目で白芷さんが落ちてくるのを見た。そして彼女が……私の目の前で体が千切れているのを見た……」佳世子はため息をついて、「紀美ちゃん、今回は不慮の事故であって、誰もこうなると予想できなかったんだから、無理に我慢しないで、泣きたいなら思い切り泣いて、いい?」誰だってそんなことが目の前に起きたらショックを受けるが、彼女は紀美子が我慢しすぎて体が
入江紀美子は、彼が幼い頃からどうやってこの全てを背負ってきたのか想像つかなかった。そのことは彼に一体どれほどのダメージを与えたのだろう。紀美子が全身震わせているのを見た杉浦佳世子は、「紀美ちゃん、だから今の問題は、一体誰がこのことをマスコミに漏らして白を黒に塗り替えようとしたのかだよ」紀美子は佳世子によって現実へ引き戻された。「私の推測が正しければ、森川次郎だったはずだけど、トレンドのタイトルは私が人を利用して拡散したと、それとなく示唆していた」紀美子は段々冷静になってきて、「これまでずっと白芷さんの傍にいたのは私だった」と分析した。「森川次郎?」佳世子は戸惑った。「彼が拡散したかったとしたら、とっくにそうしていたんじゃない?なぜ今日まで待っていたんだろう」紀美子もそれが分からない。でも彼じゃなかったとしても、彼が噂の源の可能性が高かった。如何せんそのことを知っている人は限られていた。それに、その情報を得た人は、彼女とは対立する関係のはずだった。その人は故意に森川晋太郎に彼女への憎悪を煽てるほか、晋太郎を滅ぼすこともできた。もし彼女だけに対する恨みなら、狛村静恵の可能性が大きかった。静恵以外、彼女には思い当たる人はいなかった!しかし分からないのは、彼女は晋太郎のことが好きじゃなかったのだろうか。そして彼女はなぜ晋太郎にそんなことをしたのだろうかと言うことだ。彼を得られない逆恨みだろうか?「紀美ちゃん、静恵である可能性は?」佳世子は同じことを聞いてきた。紀美子は身体をまっすぐに座り直し、「その可能性がないことはない!」と言った。そう言いながら、紀美子は携帯を出して渡辺翔太に電話を賭けた。しばらくしたら電話が繋がり、翔太は優しい声で「紀美ちゃん」と呼んだ。紀美子「翔太さん、静恵が最近誰と接触していたか、分かる?」「それはちょっと分からないな」「どうしたんだ?」と翔太は聞き返した。紀美子は簡潔に出来事を翔太に説明した。翔太は随分と沈黙してから、「分かった、彼女の一挙一動を監視させておく。君も気を付けるんだぞ、自分の潔白を証明できる証拠を掴むまでは、晋太郎の性格からすれば、君にちょっかいを出す可能性が高い」と紀美子に注意した。紀美子は目を垂らして、「うん、分かったわ、何か問題が
森川貞則は目を細くしてトピックのコメントを読んだ――「なんて出鱈目なニュースなんだ?明らかに公衆の目をMK社の社長とあの有名な女性実業家に向けさせてるじゃないか?」「上の言う通りだ、このメディアは俺達をバカにしている、明らかに俺達のような関係の無い人たちを、理由もなく巻き込もうとしてるし、俺に言わせれば、今回の事件の張本人は森川家のあの人だろ!」「50代のおっさんが無理やり20代の嫁を貰うなんて、気持ち悪っ!」「MKを仕切っているのが晋太郎社長でなければ、俺はいずれあのクソじじいとの信頼関係を壊すだけだった!」「MKの社長、スターウェーブ遊園地をまるごと潰すなんて、かっこ良すぎる。あんな遊園地はいっそのこと潰れてしまえばいい、危険性が高すぎて人を死なせたんだからな!」「みんな、森川家のあのクソじじいを罵倒しにいくぞ。あいつは権力を握ってるからといって女性に無理強いして嫁にもらった!」「白芷さんさようなら、来世はどうか森川家のような野獣の縄張りに関わりませんように」それらのコメントを読むと、貞則は顔が真っ暗になって携帯を地面に叩きつけた。「クソ喰らえってんだ!クソが!」貞則は怒りで体が震え、「あいつ、俺の息子を誘惑した挙句、俺達を悪者にしたのか?!」執事は慌てて貞則の怒りを鎮めようとした。「ご主人様、どうか落ち着きを!私には、このご主人様の悪口を言っている人たちは、今回の事件を漏らした人の仕業だと思います!」貞則は暫く黙り込んで、「お前は、つまりそいつがわざとメディアにそう書かせて、そしてステマ工作員を雇って世論をこちらに向かわせたと言うのか?」「その通りで御座います。表向けきは次郎様の肩を持つように見せかけていますが、実際は大衆を利用してこの事件の事実を深掘りさせようとしているのです。その人達は真実を知ったあと、誰を守ることになると思います?」「晋太郎の出来損ない以外誰がいる?!」貞則は怒鳴って答えた。「そうでございますよ、晋太郎様は大衆の同情を得て、その時ご主人様が次郎様をMK社に入れたら、会社の株は暴落に違いありません!ご主人様、彼達はきっと結託して、あなたに次郎様をMKにいれさせないようにしているのです」貞則の眼底に鋭い眼差しが浮かび、「そうだとすると、次に奴らは真実を大衆に暴くに決まってい