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第80話

江本辰也は軽く気を失った後、ようやく反応した。

「僕が到着したときには、君はすでに意識を失っていた。それで、すぐに警察に通報して、あの人事マネージャは逮捕されたんだ」

江本辰也は唐沢桜子が心理的な影響を受けることを心配し、淡々と説明しながら、彼女をしきりに慰めた。

唐沢桜子も安堵した。

普段から本を多く読んで、いくつかの知識を身につけておいたおかげで、事前に気づくことができた。さもなければ、後のことを想像するのも恐ろしい。

「さあ、外に出て食事に行こう」江本辰也は唐沢桜子を引っ張って言った。

唐沢桜子は鳥が餌をついばむように頷いた。

江本辰也は唐沢桜子が寝ている間に食事を準備していた。

食事の時間になると、外出していた唐家の人々も帰ってきた。

彼らはスーパーに行っていたが、家に帰ると演習の話題で盛り上がっていた。

「いやー、あの規模はすごかった。何十台もの車が並んで、本当に圧巻だったわ」唐沢梅が家に入ると、以前見た光景を思い出して心がざわついた。

江本辰也は小さな声で言った。「桜子、さっきのことは両親に話さないで。彼らが心配するかもしれないから」

「うん」

唐沢桜子は頷き、今回は無事で良かったと心から思った。もし両親に話してしまったら、きっと心配させてしまうだろう。

「お母さん、何を笑っているの?演習って?」唐沢桜子は立ち上がり、唐沢梅が提げていた袋を受け取りながら訊ねた。

「午後、エラ会社の外で軍隊と警察の合同演習があったのよ。たくさんの人が動員されて、なんでも西明王まで現れたらしいわ。ただ、私が行ったときにはちょうど彼らが帰るところで、実際の大規模な場面は見られなかったけど」

「え?」

唐沢桜子は驚きの表情を浮かべた。エラ会社の外で演習?

彼女は無意識に江本辰也を見た。

江本辰也は両手を広げて言った。「それについては僕も知らないよ。君を連れて帰るときには、軍隊と警察の合同演習なんて見なかったけど」

唐沢桜子はそれ以上考えなかった。

江本辰也は言った。「お父さん、お母さん、お食事の準備ができたから、帰ってきたら食べよう」

一家は家に入った。

江本辰也が皿と箸を取りに行った。

食事中、「うぇ……」と、唐沢美羽は口にしたものをテーブル
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