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第6話

悠真の口元に青い痕が残っているのを見て、私はため息をつきながら薬箱を取り出した。

「今夜は本当にごめんなさい。まずは薬を塗らせてください」

彼は何か言いたそうな表情をしていたが、私はそれを察して一息ついた。

「心配しないで。あんたが考えている通りよ。彼は私の元カレで、六歳年下。分かれた理由も、さっきので全部だわ」

そう言って、私は続けた。

「もう夜も遅いし、今日はゆっくり休んで」

ベッドに横になっても、心の中が妙に空虚で、なんとも言えない気持ちが漂っていた。

ここ数年の思い出が、次々と頭をよぎる。

出会ったばかりの彼は、輝かしい未来を感じさせる学生で、明るく元気いっぱいだったのに。

いつからこんなふうに変わってしまったんだろう。

私はそっと目を閉じ、心を空っぽにして、この間違った恋愛を心の底から取り除くことにした。

もう二度と会うこともない。彼は私にとって、ただの他人だ。

その後、仕事の引き継ぎを無事に終え、いよいよ海外勤務に向かう準備が整った。

予想外だったのは、悠真も一緒に行くことを希望したことだ。彼はにこりと笑ってこう言った。

「僕も一緒に昇進したんですよ。これから副社長のアシスタントなんですから、昇進したも同然でしょ」

私は思わず笑ってしまった。

飛行機で地球の半分を越え、ようやく目的地に到着した。

新しい地位に伴う仕事のプレッシャーに追われる毎日だが、悠真がその分、しっかりと支えてくれたおかげで何とか乗り切れている。

私は新しい電話番号に切り替え、過去とのすべての繋がりを完全に断ち切った。

颯斗について再び耳にしたのは、それからひと月後のことだった。元の上司から一通の動画が送られてきたのだ。

そこに映っていたのは、顔色が悪く、涙目になって会社の入り口で私の名前を叫んでいる颯斗の姿だった。自尊心の強い彼が、大勢の通行人に見られながら地面にひざまずき、声を張り上げている。

「遥姉ちゃん、出てきてくれ!俺を見捨てないでくれ!」

そして、その隣には大きなお腹を抱えたあの女性がいた。よく見ると、それは颯斗の大学時代の後輩で、彼にずっと想いを寄せていた子だと気づく。

彼女はお腹を支えながら、颯斗を必死に立たせようとしたが、彼はその手を乱暴に振り払った。

幸い、彼女は近くの人に支えられて倒れずに済んだ。

「全部お前のせい
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