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第74話

時也が賀茂家の山腹別荘に到着したとき、哲郎はちょうど賀茂爺との会話を終えて書斎を出てきた。

彼はあまり元気がない様子で言った。「おじさん」

時也は軽く頷いた。「君のおじいさんが君を呼んでたみたいだけど、何の話だった?」

哲郎は不機嫌そうに答えた。「おじいさんは僕に南雲華恋の夫を探さないように言ったんだ」

時也は眉を上げたが、哲郎の次の言葉を聞いて驚いた。「だって、それが僕が華恋を追いかけるのを邪魔するからだって」

「......」

「時也様」執事が前に進み出て言った。「賀茂爺様は既に中でお待ちです」

賀茂時也はかすかに「うん」と返事をしたが、感情は読み取れなかった。

書斎に入ると、円椅に座っている賀茂爺に挨拶をした。

「おじさん」

賀茂爺は笑いながら言った。「来たか、さあ、座れ」

時也は表情を変えずに賀茂爺の前に座った。

「明後日には華恋の夫に会いに行くつもりだ」と賀茂爺は杖をついて立ち上がりながら言った。「君の方で彼の情報は得られたのか?」

賀茂時也は頷いた。

「はあ、君ですら調べられないとは、この人物は本当にただ者ではないな」と賀茂爺は賀茂時也に視線を向けた。「時也、明後日は時間があるか?」

賀茂時也は立ち上がり、堂々とした姿勢で立った。

「おじさんは私に一緒に行ってほしいのですか?」

賀茂爺は考え込むように言った。「そうだな、君ですら調べられないとなると、彼は日本人ではなく、外国人の可能性がある。君は海外で長い間活動していたから、もしかすると知っているかもしれない」

時也は唇の端に微笑みを浮かべた。「そうかもしれませんが、その日はどうしても時間が取れなくて、おじさんのお手伝いはできそうにありません」

賀茂爺も無理強いはしなかった。「そうか、それなら私がその人物に会った後で、また君と相談しよう」

「わかりました」

......

二日後。

余計なトラブルを避けるために、華恋は会う場所を隣町の青城にした。

車でわずか二時間だ。

だが、時也に無理をさせたくなかったので、華恋は早朝から代行運転手を予約しておいた。

車に乗る直前に、時也から電話がかかってきた。会社に急用ができたので、一度戻らなければならないと言われた。

華恋に先に行ってくれと言うのだ。

華恋は何か言おうとしたが、時也は急いで電話を切った。

仕方なく
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