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第52話

時也は喉を小さく動かした。「ほう?」

哲郎は頭を掻きながら、何か見覚えがあると感じたが、しばらく考えても思い出せず、結局隣に腰を下ろし、「他の誰かが結んだのかもしれませんな」と言った。

時也は緊張していた肩がやや崩れ、気のない返事をした。「うん」

哲郎はビールを飲んで、少し落ち着いた。

「ところで、おじさん、外に出かけるんですか?」

時也はスクリーンに映る華恋を見て、眉間を押さえた。「いや、隠れてみる方が面白いから」

哲郎は同意して強くうなずいた。「じゃあ、俺は先に出かけますよ」

華恋と同じテーブルで食事をすることを思うと、彼のこめかみがずきずきと疼いた。

......

宴会場では、華恋が賀茂爺と話をしていた。

二人が笑顔で話し合う姿は、まるで本当の親子のようで、他の賀茂家の人々もすぐにおべっかを使った。「華恋さんは本当に賀茂爺を喜ばせるのが上手ですね。普段、賀茂爺は私たちの前ではいつも厳しい顔をしているんですが、華恋さんの前ではこんなに楽しそうに笑っています」

おべっかとはいえ、それも事実だった。

華恋はただ笑うだけで、それ以上言葉を返さなかった。

哲郎が出てくると、その会話を耳にし、おじさんと華恋が数回しか会ったことがないのに、彼も華恋を守っていることを思い出し、探るような視線を華恋に向けた。

「哲郎、来たのか」

拓海は息子が来たのを見ると、「華恋の隣に座りなさい」と呼びかけた。

言い終わってから、拓海は哲郎がいつも華恋に対して示す態度を思い出し、言い直そうとしたが、哲郎はすでに華恋の隣に座っていた。

拓海と賀茂爺は目を合わせ、期待の表情を見せた。

最近、哲郎は華恋に対して以前ほど拒絶する様子がなくなってきている。

これは良い兆しで、幸せが近づいている予感だ。

他の人々もそのことを暗黙の了解として受け入れていた。

しかし、哲郎だけは座った瞬間、突然後頭部に冷たい風が吹き込むのを感じた。

振り返ると、そこには何もなかった。

「おじいさん」華恋は隣に座る哲郎を無視し、「おじさんはいつ着きましたか?」

宴会が始まるのももうすぐなのに、おじさんの姿が見えず、華恋は今夜も彼に会えないのではと心配していた。

隣から、哲郎の冷たい笑い声が聞こえてきた。「おじさんはとっくに着いているよ」

華恋はそこで初めて哲郎の方に顔を向けた
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