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第4話

「何を言っているの?」

「その遺体のDNA報告書は大江詩奈だと示している!」

その遺体が私だと直接聞いたのだから、彼も信じるだろう?

私は彼の顔をじっと見つめ、少しでも動揺の表情を期待した。

しかし、彼はただ目を細め、いつもの冷淡な声で返答した。

「そんなはずはない。つい最近、別の男と一緒にいる彼女を見たし、その遺体は二ヶ月前に死んでいる」

「でも、報告が間違っているはずがない!」

「きっと何かの間違いだ、あるいは大江詩奈が何か策略を巡らせているだけだ。彼女はそういう手口に慣れている」

彼は自信満々で、私の苦肉の策だと決めつけていた。

しかし、彼はその矛盾に気づいていないのか?

私がすでに他の男と一緒にいるなら、なぜ苦肉の策で彼の同情を引こうとするのか。

しかも、宇都宮歌月が現れて以来、彼が私に対してもう無関心だった。

大学の卒業旅行で、私と宇都宮歌月が湖に落ちた瞬間、世界が静止した。

ただ湖面の波紋が広がる音と、遠くのかすかな叫び声だけが聞こえた。

その時、私は舟木律と兄がためらうことなく宇都宮歌月の方へ向かうのを見た。

私の心はどん底まで沈んでいった。

なぜだ?なぜこうなったのか?

陽光が水面を透過し、一つ一つの色彩が入り交じって美しい光の帯を作るが、私の心に芽生えた寒気を消すことはできなかった。

水温は思ったよりも冷たく、骨の髄までしみ込むようだった。

私は息を吸い込み、浮くように努力しながら周囲の状況を観察した。

遠くない所に、舟木律が必死に宇都宮歌月を岸に引き上げており、兄はその後ろで二人の安全を確保していた。

彼らが岸に上がったとき、ようやく私も湖の中にいたことを思い出したかのようだった。

しかし、私はすでに岸の別の側からゆっくりと這い上がってきた。

私は濡れた体を引きずりながら、ゆっくりと彼らの前に歩いて行った。

舟木律は申し訳なさそうに私に言った。

「詩奈、ごめん!君に気づかなかった!」

その時、私は彼の目を見つめ、そこに格別な誠実さを感じた。

だから恋愛に夢中だった私は、彼が本当に見ていなかっただけだと思った。

しかし今考えると、その目の中にどれほどの真心があったのだろうか。

「律、歌ちゃんは水が苦手。彼女はスイミングのチャンピオンなのだから、もしかしたら彼女が歌ちゃんを押したのかもしれない
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