第1話

警察はスーツケースを開け、強烈な悪臭が襲いかかってきた。

周りの人々は全員うなだれて、傍らに吐き始めた。

彼らが悪いと思えなかった。私も自分の遺体が格別に気持ち悪いと感じていた。

月明かりが血肉にまみれた遺体に当たり、四肢がねじれた奇妙な形に折りたたまれているのが見えた。

無数の傷口から腐肉が外にめくれ上がり、ひどくただれていた。

遺体は警察署に運ばれ、解剖台に置かれた。

私はぼんやりとそれを見つめていて、いつ誰かが入ってきたのかも気づかなかった。

「死者は男性か？女性か？」

その声を聞いた瞬間、私は我に返った。

しかし体は固まったままで、動けなかった。

この声が私の婚約者、舟木律のものだとわからないわけがなかった。

彼は雲城で最も優秀な監察医だった。

ただ、私を解剖するのが彼自身だとは思わなかった。

彼は私の体を通り抜け、解剖台の前に立った。

その瞬間、彼がその遺体が私だと知ったときの反応を少し期待してしまった。

少しでも悲しんでくれるだろうか？

しかし、私は忘れていた。

宇都宮歌月が私を苦しめるために、無理やり私の頭を硫酸が満たされた盆に押し込んだ。

「この魔性の女の顔、やっぱり気に入らないね。残さない方がいい！」

肌が腐食され、焦げたような悪臭が今でも私の周りに漂っていた。

だから舟木律が私を認識することは不可能だった。

私の予想通りに、彼はほんの少しだけ目を向け、眉をひそめ、嫌そうに鼻を押さえた。

気持ち悪いと思ったのか？それとも、醜いと思ったのか？

しかし彼の強い職業倫理は、すぐに彼を通常の解剖プロセスに戻させた。

「遺体の四肢は強制的に折られ、塊状になっている。狭い空間に無理やり押し込まれたようだ」

さすが最も優れた監察医だった。彼の言うことはすべて正しかった。

宇都宮歌月は確かに私を無理やりスーツケースに押し込んだ。ただ私を絶望させ、彼女に命乞いするために。

しかしその時、私はすでに力を失い、痛みすら声に出せなかった。

「彼女の体には各所に刃物の傷があり、頭部は焦げた状態だ。この状態は硫酸に浸されたものだ！」

その言葉が終わると、彼の目には一瞬、かすかな不憫の色が浮かんだ。

それはこの遺体が受けた苦痛を思ってのことだろうか？

しかし、彼が見た痛みは、私が実際に受けたものの半分にも及ばなかった。

宇都宮歌月は鉗子で私の爪を引き抜き、一刀ずつ全身を切り刻んでいった。

だが、彼女は満足しないかのように、傷口に唐辛子油を塗りつけた。

部屋中には、私の苦痛の悲鳴と彼女の狂った笑い声が混ざり合っていた。

やがて、悲鳴は次第に笑い声に飲み込まれていった。

舟木律は注意深く体の各所を調べていたが、ちょうど遺体をひっくり返そうとしたとき、兄が突然入ってきた。

「律、歌ちゃんが体調不良で病院に行ったのに、どうして彼女に付き添ってあげないの？」

宇都宮歌月の名前を聞いた途端、さっきまで冷静だった舟木律は急に緊張して尋ねた。

「歌月は私に言ってなかった。彼女は大丈夫なのか？」

「胃が少し調子悪いから検査をするって言ってた」

兄がそう言うと、突然鼻を押さえ、微かに眉をひそめて私の遺体を見つめながら尋ねた。

「また新しい被害者か？」

「うん、死亡日は約二ヶ月前だ」

その言葉に、兄は少し言葉を詰まらせ、不意に呟いた。

「なんか、二ヶ月も彼女に会っていないが、まさか......」

もしかしたら、私は喜ぶべきなのかもしれなかった。自分の兄が私という妹をまだ覚えているなんて。

しかし彼の言葉は最後まで言い終えることなく、舟木律の嫌悪感漂う声に遮られた。

「彼女ではない！彼女はとっくにあの野郎と遊び回ってるだろう！」

彼の言葉を聞いた私は、彼の目を見上げた。

予想通り、そこには憎しみが満ちていた。

この光景を見て、私は苦い笑みを浮かべた。

彼は私が死ぬことを望んでいるのに、私はまだ彼に期待を抱いていた。

もし彼がこれが私の遺体だと知ったら、喜んで花火を上げて祝うだろう。

実際、なぜ私はそんな非現実的な幻想を抱いているのか理解できなかった。

宇都宮歌月が私の髪をつかんで地面に叩きつけながら罵倒していた時と全く同じだった。

本当に、情けなかった。

兄も彼に同意し、冷たい顔で答えた。

「そうだな。詩奈のような残酷な悪女は、死んでも自業自得だ！」

「浮気だけならまだしも、歌ちゃんを傷つけ、父さんを死なせたなんて、本当に人でない！」

......

兄の言葉を聞いた私は、血縁で結ばれた信頼がどうしてこれほど脆いのか理解できなかった。

私が愛する人と実の兄が、世の中で最も耳障りな言葉で私を侮辱していた。

再び耳にすることで、すでに麻痺した心でも、ナイフで切られるような鈍痛を感じた。